著者
木部 暢子 中島 祥子 太田 一郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

鹿児島地域における「地域共通語」の実態を明らかにするために、在来の方言形で現在でも若年層に使用される語、在来の方言形とも共通語形とも異なる語、鹿児島特有の文法現象、言語意識、社会意識を調査した。調査地点は鹿児島市、枕崎市、都城市である。鹿児島市調査(平成6年度実施)では以下のことが明らかになった。(1)ケ-(質問)、ガ(伝達の文末詞)は在来の方言形であるにもかかわらず、若年層で使用率が伸びている。また同じく方言形のワッゼ(大変)、ナオス(片付ける)、ハワク(掃く)は全ての層で高い使用率を保っている。(2)高年層・中年層ではこれらの語を方言と意識せずに(共通語と思って)使用しているケースが多いが、若年層では方言と意識して使用するケースが多い。(3)若年層に広まりつつある新語形にはナカッタデシタ(なかったです)、デスヨ・ダヨ-(相槌)、ヤスクデ(安価で)などがある。(4)〜ガナラン(不可能)、カセタ(貸した)、ネッタ(寝た)などの鹿児島特有の文法現象は若年層で使用率が急に下がり、特に若年女性では共通語化が著しい。これを枕崎市調査・都城市調査(平成7年度実施)と比較すると、以下のようなことが明らかになる。(5)枕崎市・都城市では、上記(3)の語の使用率が鹿児島市に比べて低い。しかし世代ごとに見ると若年層では使用率が急に伸びており、鹿児島市で生まれた「地域共通語」が枕崎市や都城市の若年層にいち早く受け入れられている。(6)枕崎市では上記(4)の方言形を若年層でもまだ使用している。(7)都城市は枕崎市に比べると鹿児島市の影響を受ける度合いが小さい。しかし(5)で述べたように、若年層には鹿児島市のことばが確実に定着しており、いまだに鹿児島市の影響下にある。(8)これに関連して、都城市では予想した程には宮崎市のことばの影響を受けていない。
著者
木部 暢子
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー (ISSN:21850119)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.23-35, 2010-07

日本語の方言アクセントはバリエーションが豊富である。なぜ,このような豊富なバリエーションが生まれたかについて,従来は大きく,2つの説があった。1つは,諸方言アクセントは,平安時代京都アクセントのような体系を祖としている。これが各地に伝播し,各地でそれぞれ変化したために,現在のようなバリエーションが生まれた,という説。もう1つは,日本語は,もともと,アクセントの区別のない言語だった。そこへ平安京都式のような複雑な体系をもつアクセントが京都に生まれ,その影響で,アクセントの区別がなかった地域にもアクセントの区別が生まれた,という説。しかし,いずれの説も,表面的な現象だけを捉えた説であって,アクセントの弁別特徴に対する考慮が欠けている。そこで,本稿では,アクセントの弁別特徴を考慮して,方言アクセントが如何にして誕生したかについて考察し,試論を提案した。
著者
木部 暢子 橋本 優美
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.92-100, 2003-12-30 (Released:2017-08-31)

This paper is concerned with the tone of loanwords in Kagoshima dialect. Kagoshima dialect has a two-pattern tone system. Type-A is a falling type tone, and Type-B is a rising type tone. Most of loanwords are pronounced Type-A in Kagoshima, but for the young people, the number of Type-B loanwords has been increasing. This suggests that the young people in Kagoshima are affected by the Tokyo accent which contains many level tone loanwords.
著者
前川 喜久雄 浅原 正幸 小木曽 智信 小磯 花絵 木部 暢子 迫田 久美子 Kikuo MAEKAWA Masayuki ASAHARA Toshinobu OGISO Hanae KOISO Nobuko KIBE Kumiko SAKODA
出版者
国立国語研究所
雑誌
言語資源活用ワークショップ発表論文集 = Proceedings of Language Resources Workshop
巻号頁・発行日
no.1, pp.170-179, 2017

会議名: 言語資源活用ワークショップ2016, 開催地: 国立国語研究所, 会期: 2017年3月7日-8日, 主催: 国立国語研究所 コーパス開発センター国立国語研究所コーパス開発センターでは,従来個別に開発・提供されてきた各種日本語コーパスの検索環境を統合し,複数のコーパスを横断的に検索可能な包括的検索環境を整備する計画を進めている。既に公開済みのコーパス群だけでなく,第3期中期計画期間に種々の研究プロジェクトで開発ないし拡張を予定しているコーパス群の一部も検索対象に含める。本発表では,検索対象となる予定のコーパスを紹介した後に包括的検索環境の実現に向けてどのような問題があるかを検討し,解決の方向性を探る。
著者
木部 暢子
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.42-48, 2001-12-31 (Released:2017-08-31)

In this paper I report two kinds of sound changes in Kagoshima dialect. First, I report close vowel's changes, such as [a?] (<aki, 'autumn'), [a?] (<aʒi, 'taste'), [a?] (<abu, 'horsefly'), [a?] (<aku, 'harshness'). These changes, commonly called 'nisshoka', are caused by devoicing final [i] or [u]. Second, I report alveolar's changes in Segami dialect, spoken in Kami-Koshiki island, Kagoshima prefecture, such as [arama] (<atama, 'head'), [abuja] (<abura, 'oil'), [neːzii] (neːzu, 'temperature'), [kuːnu] (<kudzu, 'trash'). In this dialect, these changes occurred very systematically, and so the distinction between /t/, /r/, /c/ and /d/ was not lost after the changes.
著者
狩俣 繁久 田窪 行則 金田 章宏 木部 暢子 西岡 敏 下地賀代子 仲原 穣 又吉 里美 下地 理則 荻野 千砂子 元木 環
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

消滅の危機に瀕した琉球諸語の奄美語の七つの下位方言、沖縄語の十の下位方言、宮古語の四つの下位方言、八重山語の五つの下位方言、与那国語の計27の下位方言、および八丈語を加えた計28の方言についての文法記述を行った。記述に際しては、統一的な目次を作成して行った。琉球諸語についての知識のない研究者にも利用可能なものを目指して、グロスを付した記述を行った。最終年度までに研究成果として『琉球諸語 記述文法』Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの3冊を刊行した。
著者
木部 暢子
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.80-92, 2012-04-30
被引用文献数
1

Two-pattern accent systems of Southwest Kyushu district can be classified into two large groups. One is "Kagoshima type" and the other is "Nagasaki type". "Kagoshima type" has a characteristic that falling tone appears at the end of an accent unit. On the other hand, "Nagasaki type" has a characteristic that falling tone appears on the first part of an accent unit. In this paper, I clarify the features of accent systems of the Kagoshima-shi dialect, Tanegashima dialect (these two dialects belong to "Kagoshima type"), Amakusa Hondo dialect and Yakushima Miyanoura dialect (these two dialects belong to "Nagasaki type") according to the general characteristics of N-pattern accent systems proposed by Uwano (1984, 2011), and I reveal the commonalities and differences between the accent systems of these four dialects. In addition, I present lists of the accents of particles/auxiliary verbs of the Nagasaki-shi dialect, Hondo dialect, Kagoshima-shi dialect and Tanegashima dialect, and I check the correspondences between four dialects.
著者
木部 暢子 松永 修一 岸江 信介
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1、従来、言語地図は手作業により記号を一つ一つ押していく方法で作成されていたが、この研究ではパソコンのデータベースソフトを利用して、正確かつ効率的に言語地図を作成する方法を開発し、さらに、記号から音声の出てくる「声の言語地図」の作成を試みた。2、研究の遂行のために、次のような作業を行った。まず、南九州37地点(熊本県2地点、鹿児島県19地点、宮崎県16地点)の音声の特徴について調査し、基本単語約150語の発話をDAT(デジタルオーディオテープ)に収録した。収録した音声データは1単語ごとに編集しなおし、5,550(150単語×37地点)の音声ファイルからなる音声データベースを作成した。次に、この音声データベースを基にして「南九州言語地図」(記号言語地図)を作成した。この作業には岸江信介他(2000)「エクセルとファイルメーカープロを利用した言語地図の作成」の方法を用いた。最後に「南九州言語地図」の記号と音声データベースをリンクさせて、声の出てくる「南九州声の言語地図」を完成させた。なお、ファイルメーカープロが一般にはあまり普及していないソフトであることを考慮し、これをPDFファイル形式に置き換えることにした。3、その成果をまとめて以下の2種類の報告書を作成した。(1)『南九州声の言語地図』 (冊子版)(2)『南九州声の言語地図』 (CD-ROM版)4、研究の遂行にあたり、広く専門家の意見を乞うため、研究期間中に以下の発表を行なった。(1)「南九州地方における音声言語地図の開発と作成の試み」日本方言研究会第74回研究発表会(東京都立大学) 2002年5月(2)「声の言語地図」ネットワーク構想国語学会デモンストレーション(徳島大学) 2002年11月
著者
木部 暢子 岸江 信介 松永 修一 福島 真司 中井 精一
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、音声を聞くことのできる言語地図『西日本声の言語地図』を作成した。これは164枚の地図よりなり、1枚のDVDに164個のPDFファイルとして収録されている。内容は「枝」「鉛筆」などの単語項目151項目、「おはようございます」などの挨拶ことば13項目の計164項目、地点は富山県から鹿児島県種子島に至る65地点。44KHzサンプリング周波数で音声処理を行なったので、音声データベースとしての価値も高い。『西日本声の言語地図』は『南九州声の言語地図』(試作版)に続いて、岸江のHP(http://www.ias.tokushima-u.ac.jp/kokugo/_private/kishie.htm)で公開し、中井のHPと声の言語地図のネットワークを結ぶ。地図作成の過程の中で、以下のことが明らかとなった。1.変化の途中の形が各地の方言音声に現れている。「声の言語地図」では、地理的分布と音声を同時に確認することにより、変化のプロセスを地理的関係で捉えることができる。2.二通りの聞き取り:「地点ごと(横)の聞き取り」と「項目ごと(縦)の聞き取り」の間に微妙な差がある。従来の研究ではこの違いが見過ごされていた。3.方言音声を公開することの重要性について主張し、その方法を提示した。これらについては、Twelfth International Conference on Methods in Dialectology(2005.8.2、カナダ モンクトン)、日本方言研究会第81回研究発表会(2005.11.10、東北大学)、変異理論研究会(2005.11.11、東北大学)等で発表した。
著者
工藤 眞由美 金田 章宏 狩俣 繁久 木部 暢子 佐藤 里美 山東 功 林 明子 吉村 裕美 吉村 裕美 三ツ井 崇
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、国際的にも大いに多様化の進んでいる日本語のバリエーションの問題について、言語類型論(Language Typology)、言語接触論(Contact linguistics)の立場から包括的に考察を試みた。具体的には、格やとりたて構造に関する言語項目調査について、諸方言に適用できる「統一した調査票」の改善についての検討を行った。また、ボリビア共和国サンタクルス県オキナワ移住地を対象とする言語的日常実践を描くエスノグラフィー的研究や、ドイツをフィールドワークとする、言語接触論的観点からの在外駐在日本人の言語生活調査を実施した。