著者
木部 暢子
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.4_20-4_24, 2021-04-01 (Released:2021-08-27)

日本語学は、日本語の文字資料や会話資料を研究データとしている。そのため、日本語学の研究論文はこれまで、日本語が理解できる人を読者に想定して書かれてきた。このことが原因して日本語学の国際化が遅れたということは否定できない。 日本語学は長い研究の歴史と研究成果の蓄積を持っている。日本語の国際化のためには、学協会がこれらの国際発信を組織的に進める必要がある。同時に、研究の元となる多様な日本語のデータを世界へ発信することが重要である。
著者
木部 暢子
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー (ISSN:21850119)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.23-35, 2010-07

日本語の方言アクセントはバリエーションが豊富である。なぜ,このような豊富なバリエーションが生まれたかについて,従来は大きく,2つの説があった。1つは,諸方言アクセントは,平安時代京都アクセントのような体系を祖としている。これが各地に伝播し,各地でそれぞれ変化したために,現在のようなバリエーションが生まれた,という説。もう1つは,日本語は,もともと,アクセントの区別のない言語だった。そこへ平安京都式のような複雑な体系をもつアクセントが京都に生まれ,その影響で,アクセントの区別がなかった地域にもアクセントの区別が生まれた,という説。しかし,いずれの説も,表面的な現象だけを捉えた説であって,アクセントの弁別特徴に対する考慮が欠けている。そこで,本稿では,アクセントの弁別特徴を考慮して,方言アクセントが如何にして誕生したかについて考察し,試論を提案した。
著者
木部 暢子
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.42-48, 2001-12-31 (Released:2017-08-31)

In this paper I report two kinds of sound changes in Kagoshima dialect. First, I report close vowel's changes, such as [a?] (<aki, 'autumn'), [a?] (<aʒi, 'taste'), [a?] (<abu, 'horsefly'), [a?] (<aku, 'harshness'). These changes, commonly called 'nisshoka', are caused by devoicing final [i] or [u]. Second, I report alveolar's changes in Segami dialect, spoken in Kami-Koshiki island, Kagoshima prefecture, such as [arama] (<atama, 'head'), [abuja] (<abura, 'oil'), [neːzii] (neːzu, 'temperature'), [kuːnu] (<kudzu, 'trash'). In this dialect, these changes occurred very systematically, and so the distinction between /t/, /r/, /c/ and /d/ was not lost after the changes.
著者
木部 暢子 中島 祥子 太田 一郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

鹿児島地域における「地域共通語」の実態を明らかにするために、在来の方言形で現在でも若年層に使用される語、在来の方言形とも共通語形とも異なる語、鹿児島特有の文法現象、言語意識、社会意識を調査した。調査地点は鹿児島市、枕崎市、都城市である。鹿児島市調査(平成6年度実施)では以下のことが明らかになった。(1)ケ-(質問)、ガ(伝達の文末詞)は在来の方言形であるにもかかわらず、若年層で使用率が伸びている。また同じく方言形のワッゼ(大変)、ナオス(片付ける)、ハワク(掃く)は全ての層で高い使用率を保っている。(2)高年層・中年層ではこれらの語を方言と意識せずに(共通語と思って)使用しているケースが多いが、若年層では方言と意識して使用するケースが多い。(3)若年層に広まりつつある新語形にはナカッタデシタ(なかったです)、デスヨ・ダヨ-(相槌)、ヤスクデ(安価で)などがある。(4)〜ガナラン(不可能)、カセタ(貸した)、ネッタ(寝た)などの鹿児島特有の文法現象は若年層で使用率が急に下がり、特に若年女性では共通語化が著しい。これを枕崎市調査・都城市調査(平成7年度実施)と比較すると、以下のようなことが明らかになる。(5)枕崎市・都城市では、上記(3)の語の使用率が鹿児島市に比べて低い。しかし世代ごとに見ると若年層では使用率が急に伸びており、鹿児島市で生まれた「地域共通語」が枕崎市や都城市の若年層にいち早く受け入れられている。(6)枕崎市では上記(4)の方言形を若年層でもまだ使用している。(7)都城市は枕崎市に比べると鹿児島市の影響を受ける度合いが小さい。しかし(5)で述べたように、若年層には鹿児島市のことばが確実に定着しており、いまだに鹿児島市の影響下にある。(8)これに関連して、都城市では予想した程には宮崎市のことばの影響を受けていない。
著者
木部 暢子 新田 哲夫 日高 水穂 五十嵐 陽介 三井 はるみ 椎名 渉子 田附 敏尚 井上 文子 熊谷 康雄
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では以下の2点を実施した。(1) 日本各地の方言の談話音声データを整備し、諸方言を横断的に検索することが可能な「日本語諸方言コーパス(COJADS)」を作成・公開した。COJADSは、文化庁が1977年から1985年にかけて行った「各地方言収集緊急調査」の談話データをソースとし、国語研が開発した検索アプリケーション「中納言」で検索するように設計されている。(2) (1)で構築したCOJADSを使って、「日本語諸方言における主語、目的語の標示形式の地域差に関する研究」や「丁寧形式「デス」の用法の地域差に関する研究」等を行い、データに基づく方言研究の例を提示した。
著者
木部 暢子
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.80-92, 2012-04-30 (Released:2017-08-31)

Two-pattern accent systems of Southwest Kyushu district can be classified into two large groups. One is "Kagoshima type" and the other is "Nagasaki type". "Kagoshima type" has a characteristic that falling tone appears at the end of an accent unit. On the other hand, "Nagasaki type" has a characteristic that falling tone appears on the first part of an accent unit. In this paper, I clarify the features of accent systems of the Kagoshima-shi dialect, Tanegashima dialect (these two dialects belong to "Kagoshima type"), Amakusa Hondo dialect and Yakushima Miyanoura dialect (these two dialects belong to "Nagasaki type") according to the general characteristics of N-pattern accent systems proposed by Uwano (1984, 2011), and I reveal the commonalities and differences between the accent systems of these four dialects. In addition, I present lists of the accents of particles/auxiliary verbs of the Nagasaki-shi dialect, Hondo dialect, Kagoshima-shi dialect and Tanegashima dialect, and I check the correspondences between four dialects.
著者
斎藤 成也 藤尾 慎一郎 木部 暢子 篠田 謙一 遠藤 光暁 鈴木 仁 長田 直樹
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29

リースしているサーバー(すさのを)および国立遺伝学研究所のスーパーコンピュータを用いて、現代人ゲノムの解析環境をととのえた。2018年度に購入したサーバー2台(うみさちとやまさち)を用いて、古代人や公開されている現代人ゲノムや動植物ゲノムデータの格納をおこない、それらデータの解析環境を整えた。季刊誌Yaponesianの2020年はる号、なつ号、あき号、2021年ふゆ号を編集刊行した。新学術領域研究ヤポネシアゲノムのウェブサイトを運営した。特に今年度は英語版を充実させた。2020年6月27-28日に、立川市の国立国語研究所にて総括班会議と全体会議をハイブリッド方式で開催した。2021年2月15-17日に、国立遺伝学研究所と共催で「ゲノム概念誕生百周年記念シンポジウム」をオンラインで開催した。2021年3月2-3日に、 「第2回くにうみミーティング」(若手研究者育成の一環)を開催し、公開講演会もオンラインで実施した。2021年3月19-21日に、佐倉市の国立歴史民俗博物館にて全体会議と総括班会議をハイブリッド方式で開催した。
著者
木部 暢子
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.42-48, 2001

In this paper I report two kinds of sound changes in Kagoshima dialect. First, I report close vowel's changes, such as [a?] (<aki, 'autumn'), [a?] (<aʒi, 'taste'), [a?] (<abu, 'horsefly'), [a?] (<aku, 'harshness'). These changes, commonly called 'nisshoka', are caused by devoicing final [i] or [u]. Second, I report alveolar's changes in Segami dialect, spoken in Kami-Koshiki island, Kagoshima prefecture, such as [arama] (<atama, 'head'), [abuja] (<abura, 'oil'), [neːzii] (neːzu, 'temperature'), [kuːnu] (<kudzu, 'trash'). In this dialect, these changes occurred very systematically, and so the distinction between /t/, /r/, /c/ and /d/ was not lost after the changes.
著者
新田 哲夫 木部 暢子 久保 智之
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究期間を通じて、福岡県宗像市鐘崎から移住し、閉鎖的な社会を保ってきた輪島市海士町の「言語の島」の様子について、海士町のルーツ問題、アスペクト形式「ヨル」、語末母音と助詞の母音融合、アクセント体系、人称詞等について、考察を行った。移住と言語の関係について、ルーツの側の言語がどんどん変化していく一方で、移住先の言語がむしろ古形を保存する興味深い現象が見られた。その一方で能登方言の特徴を取り込みながら、閉鎖的な社会の中で独自の変化を遂げた特徴の存在も明らかになった。
著者
木部 暢子 橋本 優美
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.92-100, 2003-12-30 (Released:2017-08-31)

This paper is concerned with the tone of loanwords in Kagoshima dialect. Kagoshima dialect has a two-pattern tone system. Type-A is a falling type tone, and Type-B is a rising type tone. Most of loanwords are pronounced Type-A in Kagoshima, but for the young people, the number of Type-B loanwords has been increasing. This suggests that the young people in Kagoshima are affected by the Tokyo accent which contains many level tone loanwords.
著者
前川 喜久雄 浅原 正幸 小木曽 智信 小磯 花絵 木部 暢子 迫田 久美子 Kikuo MAEKAWA Masayuki ASAHARA Toshinobu OGISO Hanae KOISO Nobuko KIBE Kumiko SAKODA
出版者
国立国語研究所
雑誌
言語資源活用ワークショップ発表論文集 = Proceedings of Language Resources Workshop
巻号頁・発行日
no.1, pp.170-179, 2017

会議名: 言語資源活用ワークショップ2016, 開催地: 国立国語研究所, 会期: 2017年3月7日-8日, 主催: 国立国語研究所 コーパス開発センター国立国語研究所コーパス開発センターでは,従来個別に開発・提供されてきた各種日本語コーパスの検索環境を統合し,複数のコーパスを横断的に検索可能な包括的検索環境を整備する計画を進めている。既に公開済みのコーパス群だけでなく,第3期中期計画期間に種々の研究プロジェクトで開発ないし拡張を予定しているコーパス群の一部も検索対象に含める。本発表では,検索対象となる予定のコーパスを紹介した後に包括的検索環境の実現に向けてどのような問題があるかを検討し,解決の方向性を探る。
著者
狩俣 繁久 田窪 行則 金田 章宏 木部 暢子 西岡 敏 下地賀代子 仲原 穣 又吉 里美 下地 理則 荻野 千砂子 元木 環
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

消滅の危機に瀕した琉球諸語の奄美語の七つの下位方言、沖縄語の十の下位方言、宮古語の四つの下位方言、八重山語の五つの下位方言、与那国語の計27の下位方言、および八丈語を加えた計28の方言についての文法記述を行った。記述に際しては、統一的な目次を作成して行った。琉球諸語についての知識のない研究者にも利用可能なものを目指して、グロスを付した記述を行った。最終年度までに研究成果として『琉球諸語 記述文法』Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの3冊を刊行した。
著者
木部 暢子
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.80-92, 2012-04-30
被引用文献数
1

Two-pattern accent systems of Southwest Kyushu district can be classified into two large groups. One is "Kagoshima type" and the other is "Nagasaki type". "Kagoshima type" has a characteristic that falling tone appears at the end of an accent unit. On the other hand, "Nagasaki type" has a characteristic that falling tone appears on the first part of an accent unit. In this paper, I clarify the features of accent systems of the Kagoshima-shi dialect, Tanegashima dialect (these two dialects belong to "Kagoshima type"), Amakusa Hondo dialect and Yakushima Miyanoura dialect (these two dialects belong to "Nagasaki type") according to the general characteristics of N-pattern accent systems proposed by Uwano (1984, 2011), and I reveal the commonalities and differences between the accent systems of these four dialects. In addition, I present lists of the accents of particles/auxiliary verbs of the Nagasaki-shi dialect, Hondo dialect, Kagoshima-shi dialect and Tanegashima dialect, and I check the correspondences between four dialects.