著者
菊池 弘恵 長谷川 悠子 三宅 裕子 大野 典子 山根 正也 細井 慶太 閔 庚燁
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.176-181, 2013-08-31 (Released:2016-01-26)
参考文献数
12

フィルム材の鼻根部への貼付,熱吸収シートの鼻根部への貼付と白色ワセリンの非侵襲的陽圧換気療法(Noninvasive Positive Pressure Ventilation: NPPV)マスク面への塗布の3つの方法によるNPPVマスク接触部の皮膚の発赤発生率の低減効果を41例の患者を対象として一部前向き介入研究を含む観察研究で比較検討した.鼻根部の発赤発生はフィルムを貼付した20例では11例(55%),熱吸収シートを貼付した7例では4例(57%),白色ワセリンを塗布した例14例では1例(8%)であり,白色ワセリンが他の2法より有意に少なかった(p<0.05).また白色ワセリンのもつ,ずれ応力の低減性や保湿性は褥瘡予防ケアに基づいており,皮膚の脆弱な高齢者でも安全に使用できるだけでなく管理が簡便で経済的な方法であることが示された.白色ワセリンをマスクの皮膚接触面に塗布する方法はNPPVマスクによる皮膚障害を予防する方法として広く利用されることを推奨したい.
著者
三宅 裕子 田中 友二
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-9, 1992 (Released:2006-06-23)
参考文献数
21
被引用文献数
5 4

左側頭頭頂葉皮質下出血により読字・書字障害のみを呈し,読字では仮名が,書字では漢字が選択的に障害された1例を報告した。本例は読字・書字における漢字処理と仮名処理過程の神経心理機構について示唆を与える症例である。    症例は74歳の右利き男性。仮名に選択的な失読と漢字に選択的な失書を認めた。漢字の読みと仮名書字は正常に保たれていた。発症初期には喚語困難と聴覚的理解の障害を認めたがこれらの失語症状は速やかに消退した。本例はX線CT上,左側頭頭頂葉移行部の皮質下に病巣があり,この部位の損傷により後頭葉から角回に至る仮名読みを担う経路と側頭葉から後頭葉を経て運動野に至る漢字書字の経路が同時に損傷されて仮名の失読と漢字の失書を呈したと推察した。日本語の読み書きには神経心理学的に異なる4つの処理過程—漢字の読みと書字,仮名の読みと書字—が存在するが,本例の症状はこの4つの過程が選択的に障害されうる場合があることを示している。
著者
岡辺 有紀 關 明日香 三宅 裕子 熊谷 修
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.347-355, 2018-07-15 (Released:2018-07-31)
参考文献数
30

目的 高齢者において食品摂取の多様性を促進することがたんぱく質栄養の改善に有効なことは確認されている。一方,高次生活機能との関連については複数報告があるが,食品摂取の多様性を向上させる介入施策が高次生活機能の変化に及ぼす影響を長期に渡って検討した例は未だない。本研究の目的は地域在宅高齢者を対象とした食品摂取の多様性を改善するプログラムの継続が高次生活機能の変化に及ぼす影響を評価することにある。方法 対象は東京都北区在住の自立高齢者,男性44人女性112人,計156人である。12食品群の摂取の有無をチェックするシート「しっかり食べチェックシート12」(以下,チェックシート)を用いた食品摂取の多様性を促進する介入活動は,2013年から2015年の2年間行い,その1年後である2016年に継続実施の有無を追跡調査した。高次生活機能の自立度の変化は老研式活動能力指標にて測定した。食品摂取の多様性は食品摂取多様性得点で評価した。チェックシートの継続有無による老研式活動能力指標と食品摂取多様性得点の変化とその差は,反復測定による一般線形モデルで解析した。食品摂取の多様性を改善するプログラム継続の影響における独立性の検証は,3年後の老研式活動能力指標総合得点が10点以下か否かを目的変数とした,多重ロジスティック回帰分析によった。結果 活動開始時の対象者の平均年齢は71.76±5.78歳,老研式活動能力指標総合得点は12.48±0.82点,食品摂取多様性得点は4.10±2.36点であった。2016年にチェックシート継続実施が確認できた者は67人(継続群),中断した者は78人(中断群)であった。食品摂取の多様性得点は両群で有意な増加が認められた。一般線形モデルでの解析の結果,継続群では老研式活動能力指標総合得点の有意な低下はみられなかったのに対し中断群では有意に低下し,両群間の変化が異なる傾向が認められた(P=0.087)。さらに,多重ロジスティック回帰の結果,チェックシートの継続は,老研式活動能力指標総合得点が10点以下になることに対して,抑制的に影響する傾向が確認された。(P=0.064,95%CI=0.04-1.09)。結論 高齢者を対象とした栄養改善のためのチェックシートの継続実施は食品摂取の多様性の改善することに加え高次生活機能の自立度の低下を予防する効果もあるのかもしれない。