- 著者
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三木 隆久
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
- 雑誌
- 日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.4, pp.230-233, 2014 (Released:2014-08-09)
- 参考文献数
- 8
- 被引用文献数
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重症胸部外傷に対する止血術では,左右いずれかの開胸では十分な視野が得られないことも多く,また両側の胸腔内損傷の修復や心停止回避のための大動脈遮断が必要となる場合もある.このような状況では,Clamshell thoracotomyを選択しなければならないこともしばしば経験する.症例1は41歳男性.バイク運転中にトラックと衝突し受傷した.ショック状態で救急搬送された.FAST(focused assessment with sonography for trauma)にて脾周囲に液体貯留所見を認め,緊急開腹術を施行した.脾摘出とガーゼパッキングによるDamage Control Surgery(DCS)を行ったが,右大量血胸によりショック状態が遷延するため右前側方開胸となった.右縦隔胸膜からの出血と切迫する心停止状態となったため,Clamshell thoracotomyを決断した.右心耳に4 cmの裂傷と右肺上葉に2カ所の裂傷を認めたため,それぞれ縫合修復を行った.術後経過良好で,受傷57日目に転院となった.症例2は75歳女性.バイク運転中に縁石と接触後に転倒し受傷した.ショック状態で救急搬送された.右大量血胸によるショック状態であり,右前側方開胸となった.右縦隔胸膜からの出血と切迫する心停止状態となったため,Clamshell thoracotomyを決断した.左心耳に2 cmの裂傷を認め,縫合修復を行った.術後経過良好で,受傷37日目に転院となった.Clamshell thoracotomyは,重症胸部外傷の出血制御には有効なアプローチ法であり,その適応,手術手技,タイミングを熟知しておかねばならない.