著者
元村 愛美 中村 裕美 池松 香 五十嵐 悠紀 加藤 邦拓
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2022-UBI-76, no.21, pp.1-6, 2022-11-01

本稿では,食品表面に食用の金箔の導線や電極を形成し,回路の一部として機能させることで食体験を拡張する手法を提案する.また提案手法の応用例の一つとして,電気刺激により味覚の提示や抑制・増強(電気味覚)を実現する回路を試作したので報告する.従来の電気味覚の提示手法では,食品自体が電気回路の一部となるため,水分含有量が少なく電気を通さない食品への適用は困難であった.提案手法では,食品の表面に金箔で作成した電極を貼り付け,電源装置を接続した手袋型デバイスを通じて電流を印加した食品をユーザが口にすることで,電極から直接,口内に電気刺激を与える.これにより,クッキーやチョコレートなどの水分含有量の少ない食品を用いた電気味覚が提示可能となる.
著者
笹谷 拓也 川原 圭博
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2019-UBI-62, no.8, pp.1-8, 2019-05-30

広い空間全域における無線での電力のやり取りが可能になると,IoT 技術は電源の制約から解放され,半永久的に電池が切れないセンサネットワークや,部屋にいるだけで勝手に充電されるウェアラブル / モバイル / インプラント機器などが実現すると考えられる.一方,従来の無線電力伝送は充電パッドなどの二次元状の給電領域を構成するものが主であり,ユーザが意識的に領域内に機器を置くことを前提とする.これに対し,準静空洞共振器 (QSCR : Quasistatic Cavity Resonator) という構造は空間内に三次元状に分布する磁界を生成できることからユビキタスな無線電力伝送への応用が期待されている.しかし従来の QSCR は部屋の中央に導体棒を要することや,部屋の中央から離れるにつれて給電効率が著しく低下するといった課題が存在する.これらの課題を解決するために,我々は複数のモードを持つのマルチモード準静空洞共振器 (Multimode QSCR) 構造を提案し,導体棒無しでの運用や,部屋内のあらゆる位置における高効率な給電が可能であることをシミュレーションにより示した.本稿では部屋スケール (3 m×3 m×2 m) のMultimode QSCR を実装した後,部屋全域において小型の受電器に対し高効率で給電できることを実測により示し,IoT システムへの応用について議論した.
著者
日隈 壮一郎 西山 勇毅 瀬崎 薫
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2020-UBI-66, no.5, pp.1-7, 2020-05-18

近年の都市構造の変容と急激なライフスタイルの変化に伴い,人間が屋内で過ごす時間は長時間化し,逆に屋外で直射日光を浴びる時間は年々短くなっている.過度な紫外線の被曝は皮膚癌やシワ,シミの発生可能性を高めるが,一方で適度な紫外線被曝は体内でのビタミン D の生成に必要不可欠である.また,基本的に野菜に含まれていないビタミン D の不足は,カルシウム不足や低カルシウム血症,骨の軟化やうつ病などに繋がる危険性があり,長期的な健康管理において,紫外線被曝量の管理は重要である.しかしながら,紫外線センサを常に携帯することはユーザの負担が大きく,長期的な利用には日常的に計測または推定可能な手法が必要である.そこで本研究では,スマートフォンに搭載された GPS モジュールを用いて,GPS 信号の受信状態から紫外線量を推定する手法の検討を行う.
著者
玉城 絵美 本山 理梨子 西村 昭治
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2017-UBI-56, no.4, pp.1-4, 2017-10-25

ヒトは嗅覚疲労のため,自分自身が体臭を発していても気づかなくなってしまう.そのため,周りの人に体臭で迷惑をかけたり,恥ずかしい思いをしたりする人もいる.本来ならば,いつどのタイミングで体臭が発生するかを個々人に応じて教育しなければならない.既に体臭をチェックする装置が提案されているが,ユーザはいつどのタイミングで体臭が発生しているかわからない.そこで本研究では,ユーザが体臭を出したタイミングを知らせてくれるウェアラブルデバイスを提案する.提案デバイスは,臭いセンサと LED ディスプレイと加速度ジャイロセンサで構成される.臭いセンサで体臭を計測し,LED ディスプレイによりリアルタイムにユーザに体臭の強さを教示する.また,加速度ジャイロセンサから推定されるユーザの行動と体臭の平均値から,どのタイミングで体臭が発生しているかを推定し,PC 上からユーザにいつどのタイミングで体臭が発生しているかを教える.
著者
岩科 智彩 吉田 光男 伊藤 貴之
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2018-UBI-60, no.24, pp.1-7, 2018-11-27

情報発信ツールとして利用されている SNS (Social Networking Service) は,現在でも団体や個人による情報拡散を目的とした利用例が増加している.SNS の中でも特に Twitter は気軽に拡散 (リツイート) できることで知られ,その日本国内での利用は著しい.本研究では,Twitter 上で影響力のあるユーザ (キーパーソン) のリツイートユーザ (リツイーター) に焦点を絞り,時間データを使用して情報拡散におけるリツイーターの行動パターンを可視化する.また,その可視化画像から観察されるキーパーソンごとの情報拡散の性質について,ツイート内容とリツイーターの側面から考察する.
著者
栄元 優作 江頭 和輝 河野 慎 西山 勇毅 大越 匡 米澤 拓郎 高汐 一紀 中澤 仁
雑誌
研究報告高齢社会デザイン(ASD) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2017-ASD-9, no.16, pp.1-7, 2017-08-17

近年,食習慣の悪化による肥満が社会問題となり,継続的な食習慣の改善手法が求められている.継続して日々の習慣を変えるには動機の維持向上が重要であり,ユーザの同期を持続させる手法として,ゲームのメカニズムを用いたゲーミフィケーション手法が提案されている.ゲーミフィケーション手法の 1 つである 「競争手法」 は,歩数などのユーザの行動量を可視化し,他者との優劣を意識させることで,動機の維持向上を促す.しかし食事分野では,食事指標として知られるカロリー値の正確な算出が難しく,計算には労力がかかるため,競争の適用が困難である.本研究では本問題を解決するために,ユーザ間で食事の健康度合いを競わせるシステム 「HealthFight」 を構築し有効性を評価する.本システムは食事画像を共有するソーシャルメディアであり,投稿した食事画像の 「ヘルシーさ」 をユーザ間で競わせる.競争相手は食事ごとに更新されるため,ユーザは食事ごとに違った楽しさを感じられ,継続した利用が見込める.本システムによる食習慣の変化を評価するため,7 人の被験者に対して 20 日間の実験を行った.その結果,他者の評価を気にしやすい被験者の食生活は,健康的になる傾向が見られた.
著者
皆川 優喜 森 信一郎
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2023-UBI-79, no.49, pp.1-8, 2023-09-18

昨今,新型コロナウイルスの影響で年々と猫の飼育頭数が増加してきている.その一方で,「2022 年(令和 4 年)全国犬猫飼育実態調査結果」[1] によると飼育者が増加しているが,高齢な飼育者はほかに比べ減少している.また,ヒアリングによる調査を行ったところ飼育者はトイレ周りの事象に関心を示していることが分かった.特に飼育者は掃除にかかる手間や排泄物の匂いといった衛生面において課題がある.このような課題に対してベントナイト系の猫砂は,匂いを抑え込む力が高い.加えて,吸水性が高いため他素材の製品と比較してもより少ない量の猫砂で猫の尿を固めることができる.その為,飼育者の抱える課題に有効である.しかしベントナイト系の猫砂を運用していく上でさまざまな課題があり,その中に重量に課題がある.ベントナイト系の猫砂は鉱物系の為,重量が重い.その為この猫砂を利用場合,飼育者にとって日々の購入行動や猫砂の補充・廃棄が負担となる.そして高齢な飼育者や多頭飼いの飼育者にとって,このベントナイト系猫砂による重量負担はさらに大きくなる.そこで私はこの課題に対して家庭毎の猫砂の消費量を予測し,その結果から飼育環境ごとに最適な量・スケジュールで配送を行うシステムの提案を行う.
著者
西山 勇毅 加藤 貴昭 瀬崎 薫
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2023-UBI-78, no.10, pp.1-8, 2023-05-17

学生アスリートにとって心身のストレスとその回復状態を手軽に認識できることは,競技と学業生活を健康に過ごす上で非常に重要である.既存研究では,アンケート調査や血液検査,高性能な生体センサを用いて心身のストレス状態の計測が行われているが,計測負荷が大きく継続利用は難しい.そこで本研究では,市販のスマートフォン・ウェアラブルデバイスに搭載されたセンサを活用し,低負荷にアスリートのコンディションを検出するシステムを開発する.特に本稿では,アスリートのコンディション検知に向けて,データ収集基盤の設計と実装する.さらにデータ収集実験を実施し,収集データからコンディション検知に機構に向けた基礎的な調査を行う.
著者
鈴木 翔大 齋藤 圭汰 志築 文太郎
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2019-UBI-64, no.28, pp.1-8, 2019-12-03

我々は,VR 空間において 3 次元同期動作を用いた物体選択手法を提案する.同期動作とは,周期的に移動するターゲットに合わせて,ユーザが視線,手または物を動かすことを指す.提案手法では,VR 空間に選択対象となる物体,およびその周りに同期動作の対象となるターゲットを配置する.ユーザは,各ターゲットに対して,手を用いて同期動作を行い,同期動作が識別されるとターゲットに対応した物体が選択できる.ターゲットは,8 分割された初期位相(最小位相差:π/4),2 方向の回転方向(順方向および逆方向)および 3 軸の回転軸(x,y および z 軸)のうち,それぞれ 1 つずつを,パラメータとして持つ.したがって,ユーザは 8 位相× 2 方向× 3 軸= 48 個まで物体の選択が可能である.提案手法において,ユーザは,物体の大きさまたは配置密度の影響を受けない物体選択ができる.我々は,提案手法および既存手法を用いた物体選択の実験を行い,選択性能を評価した.
著者
後藤 健斗 水丸 和樹 坂本 大介 小野 哲雄
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2022-UBI-76, no.28, pp.1-8, 2022-11-01

“天使と悪魔” は道徳的ジレンマを表現する方法として用いられる.本研究では,天使と悪魔の関係をロボットで再現し,ジレンマ状況の中で人間の自制心,意思決定や行動がどのように変化するかを調査する.ロボットの条件を Neutral,Angel,Devil とし,実験参加者を Neutral-Neutral 群と Angel-Devil 群に分け,紙にアルファベットを書き続けるというタスクを行ってもらうことで,タスクの継続時間から 2 つの群の自制心を比較した.その結果,Angel-Devil 群のほうが有意にタスクの継続時間が長くなった.また,Godspeed によるロボットの印象評価を行ったところ,擬人化や好ましさの項目においてロボットの条件間で有意差が確認された.実験後アンケートでは,ロボットが Angel と Devil の役割を果たすことができたと考えられる回答がみられた.
著者
三木 隆裕 寺田 努 前田 俊幸 唐澤 鵬翔 安達 淳 塚本 昌彦
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2018-UBI-57, no.3, pp.1-8, 2018-02-19

オフィスワーカにとって,適切なタイミングで効果的な休憩をとることは作業効率上望ましい.しかし,個人差や作業環境により個人ごとの適切な休憩時間の過ごし方は異なる.ここで,休憩状態を定量的に評価できれば,個人ごとの適切な休憩時間の過ごし方を知ることができると考えられる.また,作業中の些細な行動によって効果的な休憩ができていることを認識できると考えられる.その結果,オフィスワーカは正しい休憩をとることができ,高いパフォーマンスを維持しながら作業を行い,より質の高い結果を出すことに繋がる.そこで本研究では,休憩状態を定量的に評価する手法を検討するために,休憩時間の過ごし方の違いが作業パフォーマンスに与える影響についてストレス状態の指標である LF / HF 値と瞬きの回数に着目して調査した.その結果,LF / HF 値により推定されたストレス状態である時,作業パフォーマンスが高いことがわかった.また,「寝る」,「スマートフォンを見る」,「タバコを吸う」 の 3 種類の休憩時間の過ごし方で作業パフォーマンスの向上がみられた.
著者
Haoyu Zhuang Liqiang Xu Yuuki Nishiyama Kaoru Sezaki
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2022-UBI-75, no.27, pp.1-7, 2022-08-29

Under the epidemic of COVID-19, it is important to automatically detect epidemic protective behaviors without a user's intention. Existing studies utilized only sensor data from IMU for detecting epidemic protection behaviors. However, the performance of the classification for similar behaviors could be unsatisfactory due to the single data dimension. It is well known that washing hands and hand sterilization are essential personal hygiene behaviors. In this paper, we use multiple sensor data from an off-the-shelf smartwatch and smartphone for detecting these three behaviors. Our performance evaluation indicated that our proposed method has improved accuracy for classifying the target epidemic protective behaviors over previous methods. Furthermore, for applying our method in reality, we developed a prototype for detecting these behaviors on a wearable device, which allows us to utilize our method widely in health habits monitoring.
著者
浅井 悠佑 青木 俊介 米澤 拓郎 河口 信夫
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2022-UBI-75, no.21, pp.1-8, 2022-08-29

コンピューティング技術や深層学習技術の発達に伴い,自走式配送ロボット (AMR) の利用が進んでいる.産業面での利用も加速しており,物流倉庫においては配送ロボットがピッキング作業の一部を担うなど,オートメーション化の流れは必至であると言える.しかし,物流倉庫には棚や商品が所狭しと置かれており,ナビゲーションをする際には多くの死角が存在する.従来の AMR は搭載センサのみを用いてナビゲーションするため,死角の多い環境においては,衝突の危険性がある.死角となりうる箇所を対象に見えない障害物の動きを対象とした手法が提案されているが,死角の場所が建物に依存している場合や実験室環境もしくは簡易なシミュレーションによる検証のみにとどまっている場合が多い.そこで本研究では,これらの問題を解決するために実環境でのセンシングを行い,センシング情報を配送ロボットナビゲーションに利用する仕組みを提案する.死角の位置の変化を念頭に,時間変化を考慮したコストマップ構築手法を提案し,実際の物流倉庫を模したシミュレーション環境において実験,評価を行う.
著者
葛西 和真 阿部 昭博 市川 尚 富澤 浩樹
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2022-UBI-75, no.14, pp.1-7, 2022-08-29

高齢者の健康維持のためには日常的に身体活動を行うことが効果的とされているが,現状においては高齢者のおよそ半数は厚生労働省の身体活動量基準を達成できていないとの指摘もある.また,高齢者に焦点を当てて身体活動促進の介入を行う研究は様々あるが,デジタル技術の介入を伴う研究はこれまであまり議論が進んでいなかった.本研究では,高齢者に対する意向調査を踏まえ,ウェアラブルデバイス及びモバイル端末を活用し,デジタル技術の介入を伴う高齢者身体活動支援システムの提案を行う.
著者
田中 敦綺 リム 勇仁 丹 康雄
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2022-UBI-73, no.24, pp.1-6, 2022-02-28

IoT (Internet of Things) 分野における多種多様なセンサデバイスの普及に伴い,室内環境における.これらの技術を用いて,室内環境における被験者のヘルスケアを目的とした識別に関する研究が盛んに行われている.時系列に被験者識別のためには,位置推定手法の高度が不可欠である.本研究では,介護やヘルスケアへの応用を目的として,センサ群を用いた複数の被験者の位置を推定し,個別に識別するための識別検出システムを提案する.シミュレーションと実験の結果から,個人検出と識別の精度を向上させることができた.また,2人の被験者のインタラクションシナリオに対する提案システムの実装も評価によって,有効性を確認した.
著者
中島 祥行 小林 稔
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2018-UBI-60, no.23, pp.1-6, 2018-11-27

レポートや論文執筆などの作業を行う際,私たちは作業に集中できていない非集中状態と作業に集中している集中状態の間の遷移を繰り返している.このような遷移のうち,非集中状態から集中状態への遷移は円滑に行うことが難しく,時間を消費してしまうことがある.この原因の一つとして作業者の作業に取り組むべき状態にいるという認識が弱いことがあると考える.本研究は,作業中に作業以外のことに消費している時間を可視化することで,作業に取り組むべき状態にいることを作業者に強く認識させ,非集中状態から集中状態への円滑な遷移を支援するシステムを提案する.
著者
陳 美怡 幡井 皓介 西山 勇毅 瀬崎 薫
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2021-UBI-71, no.3, pp.1-7, 2021-08-26

現在,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が拡大しており,人々の生命と健康を大きく脅かしている.政府は地方自治体,保健機関は,「手洗い」や「マスクの着用」「行動記録」「外出自粛」などの感染症予防策を人々に積極的に取り続けることを推奨している.本研究では,ユーザの感染症予防行動の促進を日標とし,既存の行動記録アプリ(SelfGuard)を拡張し,感染症予防行動に対する最適なインセンティブモデルの導入を検討する.具体的には,スマートフォンとウェアラブルデバイスに搭載されたセンサを利用してユーザの感染症予防行動を認識し,行動に応じてインセンティブとして換金可能なポイントを付与する.固定・加算・減算モデルという三種類のインセンティブモデルにおいて人の行動に与える影響の違いを調査する.
著者
長谷川 達人 近藤 和真
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2021-UBI-71, no.25, pp.1-9, 2021-08-26

センサを用いた人間行動認識において深層学習を用いた手法が数多く提案されている.中でも,深層学習とアンサンブル学習を併用する手法は強力な成果を発揮している.一方,アンサンブル学習を行うにはデータの分割や複数モデルを学習するなどの様々な手続きを要し,手間と計算コストがかかる.本研究では,行動認識を対象に深層学習のアンサンブル手法を解析することを通じて,単一モデルを End-to-End で訓練するだけでアンサンブルモデルと同等の推定精度を実現する手法の実現可能性を考察する.
著者
沖原 周佑 本木 悠介 中澤 仁 大越 匡 陳 寅
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2021-UBI-70, no.3, pp.1-8, 2021-05-27

気象情報は多くの人々の生活に影響を与えるもので,人間社会の経済活動や,個人の生活に欠かせない一種のインフラとしての側面を持つ.既存の降雨情報の取得において,情報の粒度,リアルタイム性,測定機器の構造に課題がある.本研究ではスマートウォッチを用いた参加型降水センシングシステムを提案する.このシステムにより,これらの課題を解決し,信頼性と精度のある気象情報を共有することを目的とする.このシステムは設備の整備コストなしに,人が傘をさすという行為のなかに極めて自然に埋め込むことができる.本論文ではこのシステムの実現に向けて,傘への降水の衝撃をスマートウォッチで計測し,降水の程度を分類することは可能なのかを検証した.検証の結果,適切なデータの処理を施すことで,より正確に分類可能であることが明らかとなった.
著者
水草 創斗 梶 克彦
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2021-UBI-69, no.29, pp.1-7, 2021-02-22

本研究では,スマートフォンと密封袋のみで心臓マッサージの練習が可能な心臓マッサージ練習アプリケーションを制作した.住宅や街中などの医療体制が整っていない場所での突然の心停止の際,その場に居合わせた人による一次救命処置が非常に重要であるとされている.しかし,日本における一次救命処置実施率は約半数に留まっており,実施率の低さが指摘されている.その主な原因として,一次救命処置への知識・経験の不足からなる心理的ハードルの高さが挙げられる.これまで,一次救命処置の実施を促進するため多くの研究が行われてきたが,未だ一般的には一次救命処置を練習する際は,どうしても CPR 練習用マネキンが必要になってしまい,練習コストが高くなってしまうという問題がある.そこで本研究では,世の中に広く普及している気圧センサを搭載したスマートフォンと身近にある密封袋のみを使って練習を可能にし,これまでよりも手軽な心臓マッサージ練習法を提案する.本研究では,スマートフォンの気圧センサから得た情報を基に,心臓マッサージの押し込み強さ推定処理・押し込み判定処理・押し込み間隔推定処理を行い,リアルタイムにスマートフォン画面へフィードバックを行うシステムや自身の心臓マッサージのスキルをテストするシステムの開発を行った.開発したアプリケーションの画面デザインや実用性を評価するため実施した評価実験では,心臓マッサージの押し込む間隔については,練習になるとの評価を受けたが,押し込む強さについては,要領を掴む程度との評価を受けた.また,練習コストに関しては CPR 練習用マネキンを使った練習法より手軽に練習可能なシステムとして評価を受けた.