著者
菊地 基雄 脇田 充史 坂野 章吾 小川 久美子 金井 美晴 上田 龍三
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.687-693, 2000-08-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
23

症例は男性, 69歳 (1985年) 時にインスリン非依存型糖尿病と診断され, 74歳時からインスリン治療を続けていた. 72歳時にC型慢性肝炎を指摘された. 1993年12月肝機能の悪化を認め入院し, 80mgのグリチルリチン (GR) の連日投与を開始した. 投与後30日目から偽性アルドステロン症と低血糖発作を発症し, インスリンとGRの減量により血圧と血糖値は正常化した. インスリンを減量しGRを再投与したところ, 再び低血糖を来した. GRの減量後には低血糖発作はなかったが, 1994年8月に急性心不全により死亡した. 病理解剖で活動性慢性C型肝炎と糖尿病性腎症を認めた. GRには糖代謝に影響する多くの薬理学的作用があるが多臓器の機能低下を伴つた高齢者の糖尿病患者にGRとインスリンを投与する場合には, 血糖値の変動に注意する必要があると考えられた.
著者
宮脇 修一 恵美 宣彦 三谷 絹子 大屋敷 一馬 北村 邦朗 森下 剛久 小川 啓恭 小松 則夫 相馬 俊裕 玉置 俊治 小杉 浩史 大西 一功 溝口 秀昭 平岡 諦 小寺 良尚 上田 龍三 森島 泰雄 中川 雅史 飛田 規 杉本 耕一 千葉 滋 井上 信正 濱口 元洋 古賀 大輔 玉置 広哉 直江 知樹 杉山 治夫 高久 史麿
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1279-1287, 2005 (Released:2009-07-28)
参考文献数
12

急性骨髄性白血病(Acute myeloid leukemia: AML) 191症例の末梢血のWT1 mRNA発現(Wilms tumor gene 1: WT1)量を定期的に測定し臨床経過との関連を検討した。初発未治療のAML症例におけるWT1の陽性率は93.9% (107/114)であった。寛解が得られ寛解を継続した症例66例の全例でWT1量は寛解に伴い低下し50 copies/μgRNA未満(陰性)となり,84.8% (56/66)の症例が1年後の経過観察終了時陰性であった。非寛解症例54例のうち87.0% (47/54)の症例のWT1量は,経過観察期間中50 copies/μgRNA以上(陽性)であった。寛解後再発した29例の全例において,寛解に伴い低下したWT1量は再発に伴って上昇に転じた。寛解後再発症例の79.3% (23/29)の症例のWT1の値は再発の43日(中央値)前に200 copies/μgRNAを超えて上昇していた。再発診断率,寛解継続診断率および診断効率を考慮するとAMLの早期再発診断のための基準値としては200 copies/μgRNAが妥当と考えられた。WT1量は,微小残存病変(Minimal residual disease: MRD)を反映しAMLの臨床状態に対応して変動していた。今回,WT1測定に使用したキットでは末梢血を用いたことからこのキット検査は患者への負担が少なく,定期的検査に適していると考えられた。
著者
鈴木 伸 佐藤 孝一 谷口 正仁 宮川 浩一 小嶋 正義 土肥 靖明 上田 龍三
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.444-450, 1998
被引用文献数
1

リウマチ性弁膜症が減少してきているなか, 動脈硬化との関連が示唆される老人性変性大動脈弁に遭遇する機会が増加してきている. 近年, 心血管系の独立した危険因子とされ, 動脈硬化性病変との関連について注目されているリポプロテイン(a)[Lp(a)]と大動脈弁硬化との関係について, 特に65歳以上の老年者を対象とし検討した. 1995年10月から1996年12月に当院で心臓超音波検査を施行した65歳以上の症例は265例であった. リウマチ性弁膜症や大動脈二尖弁などの9例を除いた256例のうち, Lp(a)を含む血清脂質, 血糖, 血圧などを測定した97例 (65~106歳, 平均77±7歳, 男性48例, 女性49例) を本研究の対象とした. 断層心エコー法において, 大動脈弁に硬化が認められた群 (硬化群) は63例 (平均78歳, 男性24例, 女性39例), 硬化を認めなかった群 (非硬化群) は34例 (平均74歳, 男性24例, 女性10例) に分けられた.単変量解析で硬化群と非硬化群に差が認められたのは, 年齢 (p=0.0090), 性差 (女性) (p=0.0023), Lp(a)(p=0.0124)であった. Lp(a)が60mg/dl以上であった9例全例に大動脈弁硬化が認められた. 血圧, 総コレステロール, HDL-コレステロール, LDL-コレステロール, 中性脂肪, 空腹時血糖には両群間で差は認められなかった. 大動脈弁硬化の有無について多変量解析である判別分析を行ったところ, 女性 (λ=0.9038, =0.0020), Lp(a)(λ=0.8316, p=0.0053) と関連が認められた. 以上の結果から, 老人性変性大動脈弁では血清Lp(a)が高い傾向を認めた.