著者
畑山 未央 上野 行一
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1-6, 2020-03-21 (Released:2020-03-18)
参考文献数
9

近年, 国内外で注目を集めているSTEAM教育であるが, STEM教育に加えるAの捉え方がArt(芸術)であったり, Art+Designであったり, Arts(リベラル・アーツ)であったりと様々である.そのためSTEAM教育におけるAの役割や位置づけが多様となり, Aの役割や位置づけが不明確なままで行われがちな実践を多く見かける.本研究は, 美術教育の視点から様々なSTEAM教育における異領域の統合原理を整理し,教育課程上の違いや特色を指摘すると共に,STEAMのAの位置づけに焦点化して我が国の初等中等教育における学校現場への普及を目指すものである.
著者
上野 行一
出版者
日本・美術による学び学会
雑誌
美術による学び (ISSN:24356573)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.1-20, 2022-12-03 (Released:2022-12-04)

中教審答申(2021)を受け、STEAM教育の政策立案や教育課程の策定、そして試行的な実践が各地で始まっている。しかし我が国においては、STEAM教育はもとよりその前身であるSTEM教育に関しても、国の教育政策上は十分に触れられてこなかったという経緯があり、STEAM教育の実施については混乱や理解の偏りが見られる。とりわけSTEAMのAの捉え方とSTEAM教育の教育課程上の位置付けについては様々な考え方があり、議論を呼んでいる。 本研究では、STEM及びSTEAM教育の発祥国である米国の教育省や全米教育委員会、全米教育庁芸術教育担当理事会等の公的機関におけるSTEAM教育の解釈を分析した。その結果、STEAMのAは芸術教科であり、教育課程上は芸術教科とSTEM教科が共通のテーマに沿い、教科のスタンダードに基づいた学習であることを明らかにした。その上で、今後の我が国におけるSTEAM教育の在り方について言及した。
著者
上野 行一
出版者
日本・美術による学び学会
雑誌
美術による学び (ISSN:24356573)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.1-15, 2023-09-25 (Released:2023-09-27)

2021年、中教審は「令和の日本型学校教育」の構築に関する答申において、STEAMのAを広い範囲(Liberal Arts)と定義した。筆者は「芸術統合学習としてのSTEAM教育の考察(1)」*において、この定義はSTEAMのAをArts(芸術)と捉え、芸術の創造性や身体性、楽しさ等を重視した欧米を中心とする21世紀型教育の新しい枠組み、芸術統合学習としての性格を併せ持つSTEAM教育の動向とは異なるものであること、およびその問題点を指摘した。 このような重大な決定はどのような議論を通してなされたのだろうか。本稿では答申までの中教審議事録におけるSTEAMのAに関する議論を精査し、その定義の成立過程を明らかにした。本稿はSTEAM教育の教育課程の編成に示唆を与えるものであり、「芸術統合学習としてのSTEAM教育の考察(1)」を補完する資料として位置付けられる。 *上野行一「芸術統合学習としてのSTEAM教育の考察(1)―米国におけるSTEAM教育政策の見地から―」、日本・美術による学び学会『美術による学び』3巻4号、2022
著者
一條 彰子 奥村 高明 岡田 京子 寺島 洋子 藤田 千織 上野 行一 藤吉 祐子 室屋 泰三 今井 陽子 細谷 美宇
出版者
独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

国内外の主要美術館で行われている鑑賞教育のスクールプログラムについて調査し、米国と豪州から教育責任者を招聘してシンポジウムやワークショップを4回開催、海外の先進的事例を日本に紹介した。また、国立美術館と博物館の所蔵作品49点から、小・中学生の発達段階にあわせて作品を選べるウェブプログラム「鑑賞教育キーワードmap」を開設して、学習指導要領に準じた鑑賞授業をどこでも行うことのできる環境を整えた。これらの成果は、美術科教育学会等で発表した。
著者
上野 行一
出版者
帝京科学大学
雑誌
帝京科学大学紀要 (ISSN:18800580)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.79-86, 2012-03-31
被引用文献数
1

This study is a part of the fundamental researches of art appreciation education through meaningful dialogue in Japan. In late years appreciation education comes into the limelight. The class of art appreciation through meaningful dialogue in particular came to be carried out in each place of the whole country. However, understanding about an idea and the learning theory in the base of art appreciation through meaningful dialogue, and the reception process are not enough. I thought that it was tied to understanding and the spread more than a thing of art appreciation through meaningful dialogue to clarify Base of the idea and a reception process. In this report, I clarified the art appreciation education through meaningful dialogue in Japan is not a method brought about with" IKIRUTIKARA:Power to live" and Revision of the course of study, and not being a theory based on VTS and VTC, from a reception process in Japan of a text theory and the reception aesthetics, and from a reception process of learning theory of the constructivism, besides, from existence of the class practice that it can retroact to in the 1970s,
著者
上野 行一 奥村 高明 岡田 京子 三澤 一実 一條 彰子
出版者
帝京科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究を通して、対話による意味生成的な美術鑑賞教育の地域カリキュラムおよび指導法を構築し、その成果を『北九州市美術鑑賞教育カリキュラム』ならびに『東京都府中市美術鑑賞教育カリキュラム』にまとめた。学校と美術館、地域が一体となって進める鑑賞教育の授業研究を、北九州市で31回、東京都府中市で17回それぞれ実施した。また美術鑑賞教育フォーラムを3回開催し、これらの成果を大学美術教育学会等で発表した。
著者
刈谷 三郎 上野 行一 小島 郷子 笹野 恵理子
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、「遊び」の活動に着目して、日本と韓国の子どもの日常生活や「遊び」の現状を調査し、子どもの置かれている実態を把握する。そして、いわゆる「実技教科」と呼ばれる、音楽科、図画工作科、体育科、家庭の学校での教科カリキュラムと子どもの日常生活における「遊び」の経験がどのように関連しているかを分析し、「遊び」と実技教科カリキュラムとの関係を考察することを目的とした。これまで私たちが行ってきた「教科教育における授業評価システムに関する教科横断的研究」(平成13-15年科学研究費助成)及び、戦後の教育課程比較や学習指導方法の比較をまとめた「日韓教科教育入門」(平成17年)の研究において比較的似通った教育課程を持つ両国で、子どもたちの「遊び」と実技系教科がどのように関わり、結びついているかの比較を行った。これまでの研究成果を元に、まず、子どもの「遊び」の日韓比較を、合計約2000名の児童を対象として都市部と地方に分け調査を行い、当該調査の分析と考察を行った。これについては「日本・韓国の子どもの遊び比較研究」と題し、刈谷三郎が2007年12月2007International Leisure Recreation Seminar(ソウル)において、その成果を発表した。韓国における高学歴志向、少子化、受験といった社会的背景が、子どもの「遊び」に深く投影されていることを指摘した。質疑の中で東北アジアでの研究への発展が示唆された。引き続き、子どもの「遊び」の実態把握からよみとれる日常生活経験を軸に、実技教科カリキュラムとの関連において考察を行い、遊びを自発的な自己完結的な子どもの日常生活文化として考えると、日本の子どもは実技教科が形成する学校教科文化と子どもの日常生活文化の乖離を強く意識し、韓国の子どもの方が、日常生活文化と学校の実技教科文化との接続を認識し、融合的に把握していること論証した。これらの研究成果は韓国・日本教育学会誌(韓国・日本教育学研究)において「実技系教科と遊びの日韓比較研究」として掲載予定(2008年8月)である。しかしながら、現時点では当初の目的の一つであった、新たな実技教科カリキュラムモデルの提案には至らなかったことが課題として残された。
著者
上野 行一 坪能 由紀子
出版者
高知大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

平成16年度は、研究課題の第一に関して、平成15年度に引き続き実地調査(東京都現代美術館、ポーラ美術館、宇都宮美術館等予定)を行い完了させた。英国における創造的な芸術教育プログラムの調査結果を考察した結果、1989年に学校教育に導入されたナショナル・カリキュラムの目的・内容を忠実に採り入れたものであることが明確となった。これまで英国の社会教育は、インフォーマルな教育の場として学校教育とは峻別してとらえられがちであった。そのことが英国の教育の特質という見方が濃厚でもあったが、ナショナル・カリキュラムの導入による学校教育の基準化は、意外にも社会教育の場にまで浸透しているということである。研究課題の第二(プログラムの構築と検証)に関して、平成16年度は、研究成果を報告書にまとめるとともに、各地の公立文化施設におけるテキストとしての実際的な活用を考慮し、CD-ROMによる映像記録を中心にした創造的な芸術教育プログラムを作成した。プログラムは美術館が所蔵する作品を基本とした美術鑑賞教育用のものとした。創造的な芸術教育プログラムを実施する公立文化施設は高知県立美術館とし、11月12日第1回の実施がされた。一階のギャラリーを専用スペースとして借り、横尾忠則、クレメンテの作品を高知大学教育学部附属小学校5年生が鑑賞学習した。これは、第46回高知県造形教育研究大会の公開授業とも位置づけられた。学校教育における研究・公開授業が公立文化施設でおこなわれ、学校教育と社会教育が融合した事業となった。