- 著者
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藤原 賢吾
中山 彰一
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2015, 2016
【はじめに,目的】本校では,クリニカルクラークシップ(以下CCS)導入に向けて取り組みを進めており,第50回の本学会において,実習生に対するアンケート調査よりCCSの有益性と学生にとって肯定的イメージであることを示した。今回,実習施設の現状の指導方法,今後の方針,CCS導入に対する考えを把握する目的で実習施設へのアンケート調査を実施し,若干の知見を得たので報告する。【方法】平成25,26年度の実習施設147施設に対し,質問紙法によるアンケート調査を実施した。アンケート記入は,施設,回答者は無記名とした。アンケート内容は,①現状の実習指導方法,②発表の有無,③担当症例数,④診療参加症例数,⑤実習実施形態,⑥今後の取り組み,⑦CCS受入れ可否,⑧CCS導入に向けての不安要素,⑨CCSを導入しない理由とした。回答形式は①~⑦は多肢選択法(①②は無制限複数選択法),⑧~⑨は自由回答法とした。【結果】147施設のうち116施設から有効回答を得た(回収率79%)。設問①で多かった回答は,症例担当(99%),レポート(90%),レジメ(80%),ケースノート(63%),学習課題(57%)であった。設問②は,最終評価発表(80%),初期評価発表(34%),発表なし(9%)であった。設問③は,1名(55%),2名(53%),3~5名(9%)であった。設問④は,1~5名(53%),6~10名(21%),11~20名(9%)であった。設問⑤は,従来型(69%),施設独自のCCS形態(20%),養成校の方針に合せたCCS形態(13%),検査測定までCCS併用(1%)であった。設問⑥で多かった回答は,将来的に養成校の方針に合せたCCS導入予定(30%),CCS導入予定なし(29%),CCS導入済(19%),将来的に施設独自のCCS導入予定(13%)であった。設問⑦は,可能(40%),要検討(34%),折衷型(CCSの要素を取り入れた従来型)での受入れ(24%),不可能(5%)であった。自由回答で多かったものは,設問⑧「受入れ側のCCSに対する理解不足(19件)」「全体像把握,統合と解釈,経過的理解などが困難(19件)」「学生の自主性,実習の質の低下(10件)」,設問⑨「患者について考慮し,考えを伝えるために症例担当,レポート作成が必要(13件)」「受入れ側のCCSに対する知識,理解不足(10件)」であった。【結論】今回の調査で,CCSを導入している施設が約30%であることがわかった。また,今後CCSを導入する予定の施設を合せると約70%となり,本校がCCSを導入した際に受入れ不可能な施設は5%にとどまり,CCS導入に向けて前向きな結果であった。しかし,受入れの際に折衷型での受入れ,要検討の施設が50%以上であり,導入の際は現場に即したシステムの構築が必要であると考える。CCSを導入している施設を含め,ほぼすべての施設で症例を担当しており,経過を追える症例の必要性が示唆された。また,今後CCS導入に向けては,統一したCCSの概念,方法論を施設側に提供する事,レポートに代わる学生の理解度を評価するツールが必要である。