著者
齋藤 佑樹 友利 幸之介 澤田 辰徳 大野 勘太
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.226-238, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
25

本研究の目的は,訪問リハビリテーションに従事し,対象者の活動・参加レベルの目標達成を支援している作業療法士が,臨床プロセスにおいてどのような経験や臨床判断を行っているのかを明らかにすることである.4名の作業療法士にインタビューを実施し,複線径路等至性アプローチ(TEA)にて分析を行ったところ,4名は介入初期において,①クライエントが作業の視点で生活を顧みることができるよう働きかけを行っていた.また目標設定の際は,②面接評価の時間を設け,クライエントと協働的に課題を焦点化するプロセスを重視しており,目標設定後は,訪問リハの利点・欠点を踏まえ,③柔軟に介入内容の選択を行っていた.
著者
川口 悠子 西川 可奈子 齋藤 佑樹 友利 幸之介
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.309-318, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
41

作業選択意思決定支援ソフト(以下,ADOC)に関する既存の研究や実践報告をマッピングし,今後必要な研究領域の特定を目的に,スコーピングレビューを行った.4つの文献データベースと2学会の抄録集からADOCに関する報告を検索し,最終的に178編(論文49編,学会129編)を特定した.詳細は,量的研究38編(論文19編,学会19編),事例報告140編(論文30編,学会110編)であった.これらの研究および事例報告にて,ADOCの適用範囲が多岐にわたることが示唆された.一方,今後異文化妥当性ならびに介入研究の拡充,そして事例報告(特に脊椎・脊髄疾患,悪性腫瘍,認知症)の論文化の必要性が明らかとなった.
著者
川口 悠子 齋藤 佑樹
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.741-748, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
21

高次脳機能障害を呈した対象者に対し,Paper版ADOCを障害特性に考慮した工夫を加えて実施することで,対象者にとって意味のある作業の共有が可能となった.また,その結果をもとに多職種連携を行うことで,目標指向型の役割分担が可能となり,チーム全体で意味のある作業への介入が行えるようになった.対象者の症状や回復過程に合わせ,柔軟にADOCを使用することで,意味のある作業を共有できる対象者の幅が広がる可能性,また,ADOCを使用した情報共有が,多職種連携の促進につながる可能性が示唆された.
著者
山口 桜子 友利 幸之介 齋藤 佑樹 高畑 脩平
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.630-637, 2023-10-15 (Released:2023-10-15)
参考文献数
17

学校作業療法が円滑に実施できるまでには様々な障壁があることが先行研究にて明らかとなっているが,作業療法士はその障壁をどのように乗り越えているだろうか.今回,複線径路・等至性アプローチ(TEA)を用いて,学校作業療法を円滑に実践するためのプロセスの理論化を目指した.その結果,広範囲に安定的に学校作業療法を実施するためのターニングポイントとなる6つの分岐点と,分岐点での行動選択を方向づける5つの信念や価値観が抽出された.これらの価値観に共通する概念として,作業療法士は常に相手の理解に努め,利他的に相手を活かす姿勢を貫いており,これが学校作業療法の障壁を乗り越えていく基本となっていると推察された.
著者
齋藤 佑樹 上江洲 聖 金城 正太 友利 幸之介 東 登志夫
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.22-31, 2012-02-15

要旨:我々は,作業に焦点を当てた目標設定における意思決定を共有するためのiPad用アプリケーションである作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を開発した.ADOCでは,日常生活上の作業場面のイラスト94項目の中からクライエントにとって重要な作業をクライエントと作業療法士がそれぞれ選び,協業しながら目標設定を行う.今回,重度失語症のA氏に対してADOCを用いた結果,A氏が意味のある作業に気付き,作業に焦点を当てた実践へと展開するきっかけを作ることができた.この経験から,ADOCは意思疎通が困難なクライエントとの作業に焦点を当てた意思決定の共有を促進する有用なツールであることが示唆された.
著者
齋藤 佑樹 丸山 祥 熊谷 竜太 髙橋 慧
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.393-401, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
18

本研究の目的は,作業科学の学びが,学生の作業療法に対する理解や私生活にどのような影響があるのかについて記述し,分析・考察を加えることである.作業科学を履修した1年生5名を対象にフォーカス・グループ・インタビューを実施し,SCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析を行った結果,作業科学の学習経験は,作業の知識の理解だけでなく,自身を作業的存在として省みる契機となっていた.この実感を伴う作業の知識の活用経験は,クライエント中心の重要性に対する気づきを与え,父権主義的に偏った考え方の修正につながるなど,作業療法を行ううえでの大切な気づきをもたらしていた.
著者
平井 龍之介 齋藤 佑樹 猿渡 洋
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2023-SLP-146, no.11, pp.1-8, 2023-02-21

本稿では,連合学習を用いたユーザ参加型の多対多声質変換モデル学習法を提案する.従来の多対多声質変換技術は,多数話者の音声を含むデータセットを用いて声質変換モデルを学習する.しかし,学習されたモデルが多種多様なユーザによる入力音声に対して高品質な声質変換を実現する保証はない.提案手法では,高品質な多対多声質変換を実現する StarGANv2-VC モデルを研究開発者とユーザが協同的に学習し,ユーザが所有する音声データのプライバシーを保護しながら,より多様な話者の音声を変換可能な深層学習モデルを構築する.実験的評価の結果より,提案手法が従来の非分散型学習法と同程度の話者類似性を達成しうることを示す.
著者
倉田 将希 高道 慎之介 佐伯 高明 荒川 陸 齋藤 佑樹 樋口 啓太 猿渡 洋
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2021-SLP-136, no.31, pp.1-6, 2021-02-24

本稿では,音声変換ユーザに目標話者のキャラクタ性を獲得して発話させるためのシステムを提案する.深層学習に基づくリアルタイム音声変換は,人間の発声器官の物理制約を超えて,ユーザの音声から所望のキャタクタ性を持つ音声への高精度な変換を可能にしつつある.しかしながら,音声のパラ言語情報(抑揚・強勢など)の変換は未だ困難であり,ユーザの音声のパラ言語情報が変換音声に直接的に反映されてしまう.また,通常の発話において,人間は自己聴取音の聴取との相互作用により自らの言語情報・パラ言語情報を制御するが,リアルタイム音声変換を用いた発話において,そのような相互作用をもたらす機構は存在しない.そこで本稿では,変換音声をユーザにリアルタイムにフィードバックする自己聴取音制御システムにより,変換音声に所望のキャラクタ性を付与するようユーザを発話変容させるシステムを提案する.実験的評価では,一人称視点(音声変換ユーザ視点)と三人称視点においてシステムおよび変換音声を評価し,(1) 演技経験の少ないユーザに対してシステムの有用性が高いこと,(2) F0 を目標キャラクタに近づけるだけで十分な発話変容効果がみられることを示す.
著者
齋藤 佑樹 長山 洋史 友利 幸之介 菊池 恵美子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.299-308, 2017-06-15

要旨:本研究では,ADOCが作業療法面接に与える影響について検証した.ADOCは作業療法士とクライエントが協業的に面接評価を行い,作業療法目標を立案・共有するための面接ツールである.Webアンケート調査で,5名の予備調査インタビューから得た3つのカテゴリー(①セラピストの知識・技術,②セラピストの自信,③クライエントの状態)を基に,全34問の質問紙にて調査した.ADOCの使用経験者188名の回答を分析した結果,作業療法初心者には作業に焦点を当てた実践を追求したいと思う動機的側面にプラスに作用し,経験者では認知症や失語症など意思疎通が困難なクライエントと意味のある作業を共有する自信がついたとの回答が多いことが明らかとなった.