著者
亀井 克之 八木 良太 大塚 寛樹
出版者
公益財団法人 損害保険事業総合研究所
雑誌
損害保険研究 (ISSN:02876337)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.189-219, 2017

<p> リスク多発の現代においては,リスクマネジメント・危機管理がますます社会的に要請されるに至っている。これは,1916年に発表されたファヨールの論考から100年を経て,練り上げられてきたリスクマネジメントの考え方(フレームワーク)をさまざまな経済主体や事象にあてはめて,リスク・コントロールとリスク・ファイナンスを展開することを意味する。近年,筆者らは日本で急成長している音楽ライブ市場にリスクマネジメントのフレームワークをあてはめて研究を展開している。これは,①2020年の東京五輪開催を見据えたイベントのリスクマネジメントや②さまざまなエンタテインメント・ビジネスのリスクマネジメントを考える上で示唆を与えるものと考える。こうした研究の一環として,本稿では,まず,既存研究で試みてきたように,リスクマネジメントのフレームワークを音楽ライブ・ビジネスに適用して提示することを試みる。次に事例によって「音楽ライブ・ビジネスのリスクマネジメント」を考察する,具体的には,⒜日本の音楽ライブ市場で依然として大きな存在感を示す韓国ポップ(K-Pop)アーティストの事例分析と⒝2015年11月13日にフランス・パリの音楽ライブ劇場バタクランで発生した銃の乱射テロに関連してフランステロ犯罪被害者補償制度の事例分析を行なう。</p>
著者
亀井 克之
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.24-31, 2022-06-28 (Released:2022-06-28)

水資源・環境問題は、企業に対してさまざまな「リスクと機会」を提供している。2023年春に開始予定の福島原子力発電所事故由来の汚染水に処理を施した水の海洋放出(以下、「原発事故由来処理水の海洋放出」)は、近年、世界的に標榜されている「SDGs(持続可能な開発目標)」や「ESG(環境・社会・ガバナンス)」に大きく影響を及ぼすリスク事象である。水資源・環境問題と日本の企業・ビジネスを考える上で、避けて通ることはできない事象である。本稿では、まず第一に、企業リスクマネジメント論の枠組みで「原発事故由来処理水の海洋放出」を位置付けた後、第二に実施を1年後に控えた2022年3月段階までの新聞報道を提示する。 現実に海洋放出が開始されるにあたり、廃炉の行程や汚染水の処理というハードコントロールに加えて、風評リスクに関わるリスクコミュニケーションというソフトコントロールがきわめて重要となる事象であることが認識できる。安全のコストに関わる判断(津波対策の不徹底)や、事故処理のコストに関わる判断(凍土壁の採用)が、結果として長期的に膨大な環境コストを必要とする事態を招いたと言えるのではないか。
著者
亀井 克之
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.602, pp.602_69-602_88, 2008-09-30 (Released:2010-10-15)
参考文献数
6

フランス保険市場では,1960年代に直販相互保険会社(MSI)がリスク細分型自動車保険を開発して以来,さまざまなマーケティング上のイノベーションが導入されてきた。既存サービスとの差異化に基づくイノベーションはやがて業界標準となり,結果として市場における顧客の利便性を大きく向上してきた。これを「マーケティング・イノベーションの市場貢献モデル」と呼ぶ。2006年から2007年のフランス保険企業の動きからも引き続き同様の傾向が確認された。一方,フランス版の内部統制規範に準拠して,フランス保険企業はリスクマネジメント体制を構築している。英米独とは異なる独自性を発揮するフランス保険企業の動きは,我が国に示唆を与えうる。
著者
亀井 克之
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-17, 1995-10-30

In Europe, bancassurance, sales of insurance products through bank branch networks as a channel of distribution, have been increasing since the 1980s. Presently in France, more than fifty percent of life insurance products are sold at the bank branch networks by the bank-owned insurance subsidiaries. From the beginning of the 1990s, French banks began to enter the non-life market. However, they still don't show the same degree of competitiveness as they show with sales of life insurance products. The banking system differs a lot from a non-life insurance business. It is necessary for banks to set up a customer-oriented service including the treatment of accident and claim adjustments. Otherwise their strategy to enter non-life market would be unsuccessful. This is what we have deduced from an observation of the bancassurance in non-life markets in France.
著者
亀井 克之
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.615, pp.615_147-615_166, 2011-12-31 (Released:2013-03-22)
参考文献数
10

フランス保険市場では,これまでMSI(直販相互保険会社)やバンカシュランスの台頭によって,マーケティング戦略上のイノヴェーション導入を契機とした激しい競争を通じて,商品とサービスが洗練されてきた。イノヴェーションは,既存の商品やサービスに欠けている点を補い,顧客満足を実現するが,それを支えるのがブランド戦略・コミュニケーション戦略であった。近年,フランス保険市場では,インターネット技術の進展に支えられて,クルティエ・グロシスト(卸売ブローカー),保険比較サイト,さらにはPay as you drive型保険のインターネット専売事業などが存在感を増した。独自性を発揮するフランス保険企業のマーケティング戦略の動向を分析した結果,(1)顧客のさまざまな購買パターンに対応するために複数のチャネルを充実し併存させる「マルチチャネル」「マルチアクセス」化の流れの中でのインターネットの重要性,(2)ブランド戦略・コミュニケーション戦略の展開によって,依然としてフランスの保険企業は,強固なブランド・アイデンティティを構築していること,(3)顧客に対する利便性向上を主眼としたマーケティング戦略の有用性が再確認できた。
著者
亀井 克之 八木 良太 大塚 寛樹
出版者
公益財団法人 損害保険事業総合研究所
雑誌
損害保険研究 (ISSN:02876337)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.189-219, 2017-02-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
19

リスク多発の現代においては,リスクマネジメント・危機管理がますます社会的に要請されるに至っている。これは,1916年に発表されたファヨールの論考から100年を経て,練り上げられてきたリスクマネジメントの考え方(フレームワーク)をさまざまな経済主体や事象にあてはめて,リスク・コントロールとリスク・ファイナンスを展開することを意味する。近年,筆者らは日本で急成長している音楽ライブ市場にリスクマネジメントのフレームワークをあてはめて研究を展開している。これは,①2020年の東京五輪開催を見据えたイベントのリスクマネジメントや②さまざまなエンタテインメント・ビジネスのリスクマネジメントを考える上で示唆を与えるものと考える。こうした研究の一環として,本稿では,まず,既存研究で試みてきたように,リスクマネジメントのフレームワークを音楽ライブ・ビジネスに適用して提示することを試みる。次に事例によって「音楽ライブ・ビジネスのリスクマネジメント」を考察する,具体的には,⒜日本の音楽ライブ市場で依然として大きな存在感を示す韓国ポップ(K-Pop)アーティストの事例分析と⒝2015年11月13日にフランス・パリの音楽ライブ劇場バタクランで発生した銃の乱射テロに関連してフランステロ犯罪被害者補償制度の事例分析を行なう。
著者
亀井 克之
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

毎年,中小企業が,後継者不足を理由に廃業している。老舗企業,同族企業の多くが中小企業である。社会問題化している事業承継問題について,本課題研究では, (1)リスクマネジメント理論の活用と, (2)現地調査に基づく日仏比較研究という,独自の手法によって研究を進め,最終年度における「中小企業の事業承継・日仏シンポジウム」主催を中心とする成果をあげて,事業承継におけるリスク・コミュニケーション(「事業承継にはどのようなリスクがあるのか」「そのリスクにどう対応するのか」に関する共通理解)の重要性を提言した。
著者
バルティコウスキー ボリス 亀井 克之
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.63-75, 2008-02

本稿は,2007年6月16日から7月31日までの期間,外国人招へい研究者として,関西大学総合情報学部に滞在したボリス・バルティコウスキー氏が7月4日に行った総合情報学部講演会「マーケティング・ローカライゼーションの展開-地域性に基づくカスタマイゼーションの重要性-」の記録である.講演のテーマは,マーケティングの分野におけるグローバリゼーションとローカライゼーションの有効性をめぐる議論である.具体的な考察対象として,企業のWEBサイトを題材とした調査から,進出先の地域的な文化に適応させることが消費者の信頼や態度にどのような影響を及ぼしているかについて,次の諸点が明らかとなった.(1)ローカリゼーション(地域文化適応)戦略は,状況によって,異なる効果をもたらす.(2)ブランド力は,ローカリゼーション(地域文化適応)の効果をしのぐ傾向にある.(3)WEBサイトを通じたさまざまなサービス提供は,WEBサイトのローカリゼーション(地域文化適応)から大きな影響を受ける.