- 著者
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五島 史行
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.119, no.8, pp.1105-1109, 2016-08-20 (Released:2016-09-08)
- 参考文献数
- 11
うつ病患者は初診の診療科として精神科を受診するよりも耳鼻咽喉科をふくむ身体科を受診することの方が多い. うつ病によってさまざまな身体症状が出現したり, もともと有していた身体症状がより強くなることによって, 身体科である耳鼻咽喉科を受診することは少なくない. われわれ耳鼻咽喉科医としてもある程度うつ病をふくむ, うつの知識を持った上で日常診療にあたることで, これまで説明ができなかった患者の身体症状の要因を明らかにすることができる. 本稿でははじめにうつ病について概説し, 耳鼻咽喉科を受診するうつ病患者の症状の特徴, スクリーニング, 治療法について解説する. うつ病は, 気分障害の一種であり, 抑うつ気分, 意欲・興味・精神活動の低下, 焦燥 (しょうそう), 食欲低下, 不眠, 持続する悲しみ・不安などを特徴とした精神障害である. うつ病の診断基準を満たすものを大うつ病としてアメリカ精神神経科学会では定義をしている. 耳鼻咽喉科を受診するうつの患者はうつ状態を主訴として受診するのではなく, あくまで耳鼻咽喉科の身体症状を訴えて受診するため, 耳鼻咽喉科外来でうつを発見するには適切にスクリーニングをする必要がある. 耳鼻咽喉科でうつを疑うのはめまい, 耳鳴, 咽喉頭異常感を主訴としており, 医学的に症状が十分説明がつかない場合である. その場合には, 問診票 (既往, 書き方) に注意する. さらに質問紙を用いたスクリーニングとして DHI, THI, SDS 等を用いる. 問診では特に睡眠障害, 体重減少, 気分の落ち込みについて問診する. うつを疑った場合には身体疾患がないことを保障し, 企死念慮を確認し, 精神科, 心療内科への紹介を検討する.