著者
五島 史行 新井 基洋 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.9, pp.1016-1023, 2013-09-20 (Released:2013-10-24)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

めまいのリハビリテーションの継続には十分な動機付けが必要である. その有効性の機序については, 純粋に前庭機能改善による効果なのか, 心理的な効果なのかまだ不明な点が多い. 施行に当たって医師以外の職種の関与も必要である. 今回臨床心理士, 臨床検査技師と協力し, めまいリハビリテーションを行った. 最低6カ月以上めまい症状を訴える慢性のめまい患者16例を対象として, 初回は動機付けセッションとして個別に臨床心理士がめまいのリハビリテーションの意義, 方法を十分に説明し, 動機付けした. その後リハビリテーションを自宅で継続させた. 介入前, 介入後1, 2, 3カ月の時点でDHI日本語版 (dizziness handicap inventory), 抑うつ尺度, 不安尺度などの質問紙を用いて評価を行った. また静的平衡機能評価として重心動揺計, フォーム重心動揺計, および動的平衡機能評価として頭振りなどの動作に必要な時間を測定した. 15例 (93.8%) で継続可能であった. 不安, 抑うつレベルは介入後変化を認めなかったがDHI日本語版は介入後1, 2, 3カ月の時点で介入前と比べ改善を示した. 開閉眼での頭振り, および固視点を注視したまま行う頭振り動作の所要時間は横方向, 縦方向ともに改善を認めた. 重心動揺計の開眼の矩形面積 (REC AREA) は2カ月後に改善を認めた. フォーム重心動揺計の閉眼軌跡長 (LNG) は2カ月後, 3カ月後, および開閉眼のREC AREAは3カ月後に改善を認めた. これらより患者のめまいの自覚症状の改善は抑うつ, 不安といった心理面での変化ではなく静的, 動的平衡機能が改善した結果得られたものであることが示された.
著者
五島 史行
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.8, pp.1105-1109, 2016-08-20 (Released:2016-09-08)
参考文献数
11

うつ病患者は初診の診療科として精神科を受診するよりも耳鼻咽喉科をふくむ身体科を受診することの方が多い. うつ病によってさまざまな身体症状が出現したり, もともと有していた身体症状がより強くなることによって, 身体科である耳鼻咽喉科を受診することは少なくない. われわれ耳鼻咽喉科医としてもある程度うつ病をふくむ, うつの知識を持った上で日常診療にあたることで, これまで説明ができなかった患者の身体症状の要因を明らかにすることができる. 本稿でははじめにうつ病について概説し, 耳鼻咽喉科を受診するうつ病患者の症状の特徴, スクリーニング, 治療法について解説する. うつ病は, 気分障害の一種であり, 抑うつ気分, 意欲・興味・精神活動の低下, 焦燥 (しょうそう), 食欲低下, 不眠, 持続する悲しみ・不安などを特徴とした精神障害である. うつ病の診断基準を満たすものを大うつ病としてアメリカ精神神経科学会では定義をしている. 耳鼻咽喉科を受診するうつの患者はうつ状態を主訴として受診するのではなく, あくまで耳鼻咽喉科の身体症状を訴えて受診するため, 耳鼻咽喉科外来でうつを発見するには適切にスクリーニングをする必要がある. 耳鼻咽喉科でうつを疑うのはめまい, 耳鳴, 咽喉頭異常感を主訴としており, 医学的に症状が十分説明がつかない場合である. その場合には, 問診票 (既往, 書き方) に注意する. さらに質問紙を用いたスクリーニングとして DHI, THI, SDS 等を用いる. 問診では特に睡眠障害, 体重減少, 気分の落ち込みについて問診する. うつを疑った場合には身体疾患がないことを保障し, 企死念慮を確認し, 精神科, 心療内科への紹介を検討する.
著者
五島 史行
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.989-991, 2019-07-20 (Released:2019-08-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
鈴木 法臣 守本 倫子 五島 史行
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.89-93, 2015-04-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
9

Pediatric subjects with vertigo are rare in Japan. Benign paroxysmal vertigo (BPV) is a frequent disease similar to orthostatic hypotension. We report herein on a case of BPV in which psychological dizziness had previously been diagnosed. A 5-year-old girl visited our hospital complaining of repeated attacks of vertigo for 3 years. She had intermittent strabismus, and the result of her stabilometry showed functional symptoms, so the doctor who had treated her previously at the age of 4 diagnosed psychological dizziness with visual influence, and observation was started. Her symptoms persisted for 12 months however, and she visited our hospital. Her equilibrium and neurological status were examined. And we asked her family about the situation at the time of attack in detail. Based on the interview, we discovered that she felt fear at the time of attacks, and her family had a history of migraines. Based on our finding, we diagnosed her as having BPV. Vestibular rehabilitation on its own effected a cure. History taking is so important in the diagnosis of BPV, so that we may fully understand the diagnostic criteria prior to examination of pediatric subjects with vertigo.
著者
五島 史行
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.228-233, 2016-08-31 (Released:2016-10-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2

Headaches are a similar physical complaint to dizziness that is a functional disorder and it is difficult to ascertain any physical abnormality in such subjects. In addition, both of the symptoms may be caused by a possible fatal illness. Headaches are quite common in healthy subjects and it is a common comorbid disorder with dizziness. We found out that 163 (40%) of 403 patients with intractable dizziness complained of some type of headache. So far the relationship between headache and dizziness has not been intensively investigated. One reason for this is that the physicians who are specialized in vestibular disorders usually focus on the dizzy symptom and do not have much interest in the comorbid headache in the same patient. Recently the relationship between migraine and dizziness has attracted more interest than before and the diagnostic criteria of vestibular migraine have been proposed by the ICHD (International Classification of Headache Disorders). It is important to have basic knowledge concerning headaches to understand the vestibular migraine. Migraine and tension type headaches are important primarily headache disorders. It is well known that the patients with migraine are at a higher risk of having dizziness as a complaint. When we treat the dizzy patients with headache, it is important to identify the type of the comorbid headache. The prophylactic treatment is more important than the acute treatment. The point is to promote the life style change and pharmacotherapy. The first line of medical treatment is a Ca blocker, such as lomerizine hydrochloride, followed by valproic acid, and amitriptyline. Collaboration with headache specialists is also an important strategy.
著者
五島 史行
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.116-121, 2019-02-18 (Released:2019-04-03)
参考文献数
20

前庭機能障害患者に対するリハビリテーション治療は一側性前庭障害症例において,中等度~強度の根拠があり,中等度の一側性前庭障害症例については中等度の根拠がある.また,良性発作性頭位めまい症症例については,確定診断に基づいた特有の理学療法治療法は,一般の運動療法に基づいた前庭リハビリテーションよりも,より効果を示すというエビデンスがある.しかしながら,本邦では本治療はあまり普及していない.外来において迷路性失調に対するリハビリテーション治療を行いその有効性について検討したので概説する.
著者
五島 史行 矢部 はる奈 中井 貴美子 藤野 紀子 小川 郁
雑誌
日本心療内科学会誌 (ISSN:13429558)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.5-9, 2008-02-20
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
五島 史行 鈴木 法臣 原 真理子 土橋 奈々 守本 倫子
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.3, pp.285, 2017-03-20 (Released:2017-04-19)

掲載号:118巻7号,860-866頁参考文献にしたがって5歳以上と5歳未満の2群に分けて解析せねばならないところを誤って7歳未満と7歳以上に分けて解析したため,上記論文を取り下げたい旨の申請が著者からあり,これを承認した.
著者
五島 史行 堤 知子 新井 基洋 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.9, pp.742-750, 2010 (Released:2011-05-28)
参考文献数
17
被引用文献数
7 9

めまい患者の身体症状とストレスに着目し調べることを目的とした. めまいの治療のため集団リハビリテーション治療を目的として入院した患者145例を対象とした. 今回作成した問診票を用いて調査した. 質問項目の内容は現在有している身体症状としてめまい, 頭痛, 不眠, 下痢, 便秘, 腹痛, 胸痛, 心臓がドキドキする, 息が切れやすい, 疲れやすいの項目, さらに現在感じているストレスの内容として仕事 (学業), 家庭内の問題, 社会に対して, 金銭面, 自分の健康, 生活環境, 近所づきあいの項目について数値評価尺度 (Numerical Rating Scale: NRS) によって回答するものである. また不安, 抑うつの程度, めまいによる障害度をHADS (hospital anxiety and depression scale), DHI (dizziness handicap inventory) にて評価を行った. 身体症状として疲れやすい, 不眠, 頭痛を多く認めた. これらの症状は抑うつや不安にしばしば認められる症状である. NRSにて数値化しためまいと頭痛症状の間には相関関係が認められた (R=0.48, P<0.0001). 今回の結果, めまい患者はめまい以外にもさまざまな身体愁訴を有していることが明らかになった. めまい患者の治療においてはめまい以外の身体症状に焦点をあて, 適切に症状聴取を行い対応していくことが必要である.
著者
五島 史行 矢部 はる奈
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.142-144, 2006-06-15 (Released:2011-08-16)
参考文献数
3

耳鼻咽喉科外来で, 一般的に使用する照射装置としてユニットのライトを光源とし, 額帯鏡による反射光で診察するのが一般的であった。最近消費電力が少なく, 明るい高輝度白色LEDの開発によってヘッドライトのコードレス化が可能となってきた。しかし市販されているものは, バッテリの持続時間などの問題がある。市販のヘッドライトを改造し, 問題点の改善を試みた。使用したものは白色LEDヘッドライト (IWポータブルヘッドライト®Welch Allyn), 携帯電話用外部バッテリ (My Battery mini®日本トラストテクノロジー) などである。バッテリによる連続照射時間は2時間以上可能であった。白色LEDは低消費電力で発熱も少なく優れた光源装置である。しかし額帯鏡に慣れ親しんだ医師にとって明るすぎたり, 光の色調が異なるなど相違点もある。直視することがなければ現在のところは問題がないとされている。診察用のユニットのライトと額帯鏡の格闘から逃れられる喜びは患者医師ともに大きい。
著者
五島 史行 矢部 はる奈 小川 郁
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.315-320, 2009 (Released:2010-12-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

Introduction: Treatments for acute peripheral vertigo have not been well investigated. The most suitable drug for controlling acute vertigo should suppress both vertigo and accompanying nausea. The purpose of this study was to evaluate the effect of four different drugs on acute peripheral vertigo: (A) hydroxyzine hydrochloride (25 mg, i.v.); (B) 0.5% metoclopramide (2 ml, i.v.); (C) sodium bicarbonate (40 ml, i.v.); and (D) a cocktail of diphenhydramine hydrochloride (30 mg) and dyprophylline (26 mg) (both i.m.). Methods: Forty-two patients with acute peripheral vertigo (average age: 59.5±18.1 years) with spontaneous nystagmus were assigned to four treatment groups (A-D, above). Patients with central vertigo and vestibular neuritis were excluded. The number of patients in each group was as follows: A, n=11; B, n=11; C, n=11; and D, n=9. Patients were instructed to evaluate their subjective symptoms of nausea and vertigo before and 30 minutes after drug treatment. They rated the severity of their symptoms on a 0-to-10 scale, with 10 representing the most severe symptoms and 0 a lack of symptoms. Results: Group A patients (hydroxyzine hydrochloride; 25 mg, i.v.) reported the highest level of relief from vertigo and nausea after drug treatment, whereas group C (sodium bicarbonate; 40 ml, i.v.) and D (diphenhydramine hydrochloride (30 mg)-dyprophylline (26 mg) cocktail; i.m.) patients reported only the slight relief of these symptoms. Group B patients (0.5% metoclopramide; 2 ml, i.v.) experienced partial symptom relief; their vertigo remained unchanged. Thus, hydroxyzine hydrochloride (A) was the most effective in controlling both nausea and vertigo, whereas sodium bicarbonate (C) and diphenhydramine hydrochloride and dyprophylline (D) only slightly suppressed vertigo and nausea. Metoclopramide (B) only suppressed nausea. Conclusions: Hydroxyzine hydrochloride (A) was the most suitable for treating acute peripheral vertigo. Doctors should be familiar with the contraindications of these drugs. Some of these drugs may potentially be used in combination to control the symptoms of acute vertigo more effectively.
著者
五島 史行 堤 知子 新井 基洋 小川 郁
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.9, pp.742-750, 2010-09-20
被引用文献数
2 9

めまい患者の身体症状とストレスに着目し調べることを目的とした. めまいの治療のため集団リハビリテーション治療を目的として入院した患者145例を対象とした. 今回作成した問診票を用いて調査した. 質問項目の内容は現在有している身体症状としてめまい, 頭痛, 不眠, 下痢, 便秘, 腹痛, 胸痛, 心臓がドキドキする, 息が切れやすい, 疲れやすいの項目, さらに現在感じているストレスの内容として仕事 (学業), 家庭内の問題, 社会に対して, 金銭面, 自分の健康, 生活環境, 近所づきあいの項目について数値評価尺度 (Numerical Rating Scale: NRS) によって回答するものである. また不安, 抑うつの程度, めまいによる障害度をHADS (hospital anxiety and depression scale), DHI (dizziness handicap inventory) にて評価を行った. 身体症状として疲れやすい, 不眠, 頭痛を多く認めた. これらの症状は抑うつや不安にしばしば認められる症状である. NRSにて数値化しためまいと頭痛症状の間には相関関係が認められた (R=0.48, P<0.0001). 今回の結果, めまい患者はめまい以外にもさまざまな身体愁訴を有していることが明らかになった. めまい患者の治療においてはめまい以外の身体症状に焦点をあて, 適切に症状聴取を行い対応していくことが必要である.