著者
篠田 謙一 井ノ上 逸朗 飯塚 勝 斎藤 成也 富崎 松代 安達 登 神澤 秀明
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では縄文人骨43体、弥生人骨4体の合計47体のゲノム解析を行った。ミトコンドリアDNAの全配列を使った系統解析から、縄文人は遺伝的に均一な集団ではなく、地域による違いがあることが判明した。また、弥生人の遺伝的多様性は従来考えられていたより大きなものだった。そして渡来系弥生人もすでに在来の縄文人と混血していることも明らかとなった。これらの事実は従来の日本人起源論を再考する必要があることを示唆している。
著者
西村 瑠佳 井ノ上 逸朗
出版者
特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会
雑誌
JSBi Bioinformatics Review (ISSN:24357022)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.68-80, 2023 (Released:2023-11-01)
参考文献数
112

ウイルスはヒトの体内をはじめとする地球上の様々な場所に存在し、バイロームを構成する。このバイロームを解析するのにはメタゲノムデータまたはメタトランスクリプトームデータを用い、バイオインフォマティクス技術を駆使したウイルスゲノムの網羅的探索が必要となる。ウイルスゲノムの探索には既知のウイルスゲノム配列を基にした相同性検索に加え、近年では様々な手法が用いられるようになった。さらに、こうして探索された多数のウイルスゲノムを基に、バイロームを構成するウイルス組成や宿主との関連性が調べられている。本稿ではウイルスの探索とバイローム解析に使われるバイオインフォマティクス解析手法を紹介し、バイローム研究結果の概要や問題点などを概説する。
著者
中岡 博史 細道 一善 光永 滋樹 猪子 英俊 井ノ上 逸朗
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.37-44, 2014-04-20 (Released:2014-04-20)
参考文献数
28

HLA領域の遺伝的多型は医学分野のみならず,人類の移住,混合,自然選択や遺伝的適応といった進化過程を推測する集団遺伝学においても重要なツールとして用いられている。日本人の起源については諸説あるが,約30,000年前の後期旧石器時代に日本列島へと移住してきた狩猟採集民である縄文人と,紀元前1,000年から西暦300年頃に朝鮮半島から日本列島へと移住してきた弥生人の祖先が混血して,現在の日本人集団の起源になったとする“混合モデル”が有力であると考えられている。本稿では,日本人集団の混合的起源を支持する遺伝的知見について概説するとともに,HLA遺伝子多型から日本人の祖先集団を推測する遺伝的痕跡の探索について,最新の研究を紹介したい。
著者
斎藤 成也 井ノ上 逸朗 吉浦 孝一郎 Jinam TimothyA 松波 雅俊
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29

以下の地域の住民からDNAサンプル入手を試みた:(1)沖縄、(2)九州(なし)、(3)中国(隠岐諸島、鳥取県)、(4)四国(徳島県)、(5)近畿(なし)、(6)中部(なし)、(7)関東(なし), (8)東北(山形県)。具体的には、4人の祖父母がすべてその地域出身者である提供者50名をえらび、本研究について説明してインフォームドコンセントを取得し、DNAサンプルの供与を受ける。既存の全ゲノムSNP多型データを持つ研究機関などの協力も得る。沖縄地域は松波(琉球大学)が、九州地域は吉浦(長崎大学)・井ノ上(遺伝研)・斎藤(遺伝研)が、中国・四国・近畿・中部・関東・東北地域については、斎藤と井ノ上がサンプリングを担当した。全ゲノムSNP多型データが未決定の人間について、ゲノム規模SNPデータを決定する。一部個体についてはゲノム配列決定をおこなった。現代人のゲノムをすでに決定した日本の研究機関および海外の研究機関やゲノムデータの解析を大規模に進めている海外の研究者と連絡をとり、共同研究を継続した。
著者
西郷 健一 中岡 博史 早野 崇秀 Phuong Thanh NGUYEN 青山 博道 圷 尚武 北村 博司 丸山 通広 井ノ上 逸朗
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.007-014, 2023 (Released:2023-02-21)
参考文献数
22

Acute or chronic graft rejection is the primary threat to transplant recipients. The golden standard for rejection diagnosis is invasive biopsy. Measurement of donor derived cell free DNA (ddcfDNA) in the blood have been described as a non-invasive biomarker for organ transplantations. To develop a diagnostic system to detect graft injury before diagnosis by biopsy, we established capture-based sequencing procedure on extracted cf DNA which targets 1000 selected single nucleotide polymorphism sites. The ddcfDNA percentages were highly elevated on the first days after transplantation, but ddcfDNA percentages were decreased gradually within 7-14 days in stable patients with no sign of rejection. In 80% of cases having rejection episodes and all cases having biopsy proven rejection, ddcfDNA levels showed greater expressive signals on days of rejection episode. Additionally, we found evidences showing that ddcfDNA level sensitively corresponded with immunosuppressant dosages which were administered on recipients. This non-invasive method enables us close follow up the graft injury and prevent graft rejection.