著者
新川 詔夫 太田 亨 吉浦 孝一郎 デョミトロ スタレンキ
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

174名成人における巻舌/平舌、組み手パターン、組み腕パターン、耳垂付着部の形状、前毛髪線の形状、一重/二重まぶたなどのいわゆる正常多様性形質について、全ゲノムSNPsとの関連研究を行った。優性遺伝モデルの下で、組み腕パターンのみが10^<-4>以下のp値を示す4種のSPEN遺伝子内SNPがみられたが、右型組み腕93名と左型80名全員のSPENのシーケンシングでは2群に分けるような変異あるいは多型はみられなかった。他の形質ではいずれも明白な関連SNPは検出されなかった。したがってこれらの正常多様性形質は遺伝形質ではないとは言えないが、少なくとも1遺伝子形質ではないと結論できる。
著者
新川 詔夫 太田 亨 吉浦 孝一郎
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ヒト耳垢型決定遺伝子ABCC11多型に関する分子遺伝学的・医学的・人類学的研究を行った。乳癌との関係は証明されないが、産婦の初乳量と湿型耳垢型との間、および腋窩臭症と湿型多型間に相関を認めた。全国SSHコンソーシアムとの共同研究で、乾型耳垢型のアレル頻度に関する日本地図を完成した。さらに、ABCC11遺伝子多型が湿型。乾型耳垢型表現型を形成する分子機構を明らかにした。
著者
今村 明 吉浦 孝一郎 黒滝 直弘 小澤 寛樹
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究で我々は、統合失調症のrare-risk variantを同定することを目標として、統合失調症の多発大家系を対象として、遺伝学的解析を行った。統合失調症多発大家系に属する10名に全エクソン解析を行った。同定された2つの候補遺伝子に関して、統合失調症288名、健常者419名のtarget sequencingを行った。その結果、候補遺伝子はGene Aだけに絞られた。Crispr-cas9にて作成した遺伝子改変マウス(Gene Aのノックインマウス)の行動解析を行った。行動解析の結果、遺伝子改変マウスは活動性が低いまたは運動機能が減衰している可能性が示された。
著者
斎藤 成也 井ノ上 逸朗 吉浦 孝一郎 Jinam TimothyA 松波 雅俊
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29

以下の地域の住民からDNAサンプル入手を試みた:(1)沖縄、(2)九州(なし)、(3)中国(隠岐諸島、鳥取県)、(4)四国(徳島県)、(5)近畿(なし)、(6)中部(なし)、(7)関東(なし), (8)東北(山形県)。具体的には、4人の祖父母がすべてその地域出身者である提供者50名をえらび、本研究について説明してインフォームドコンセントを取得し、DNAサンプルの供与を受ける。既存の全ゲノムSNP多型データを持つ研究機関などの協力も得る。沖縄地域は松波(琉球大学)が、九州地域は吉浦(長崎大学)・井ノ上(遺伝研)・斎藤(遺伝研)が、中国・四国・近畿・中部・関東・東北地域については、斎藤と井ノ上がサンプリングを担当した。全ゲノムSNP多型データが未決定の人間について、ゲノム規模SNPデータを決定する。一部個体についてはゲノム配列決定をおこなった。現代人のゲノムをすでに決定した日本の研究機関および海外の研究機関やゲノムデータの解析を大規模に進めている海外の研究者と連絡をとり、共同研究を継続した。
著者
中島 正洋 吉浦 孝一郎 柴田 龍弘
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

被爆者腫瘍組織を用いて分子病理学的特徴解析を推進している。ヒトでは完成した腫瘍を対象とするため発がんまでの経時的変化を網羅的に解析することは難しく、動物モデルでの検討が必要である。ラット放射線誘発甲状腺発がんモデルにより、被ばく後がんに至るまでの分子変化を経時的に解析し特異的異常を探索中で、mRNA発現ではがん発症以前からDNA損傷応答や細胞周期調節系の有意な変化を認めることを確認した。本研究では、発がんまでの甲状腺組織でのmiRNA発現を網羅的に解析し、放射線誘発甲状腺がんの遺伝子変異シグネチャーを明らかにすることで、被ばくがんリスク診断への展開と、被ばくリスク推定の科学的根拠につなげる。
著者
金澤 伸雄 有馬 和彦 井田 弘明 吉浦 孝一郎 古川 福実
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.388-400, 2011 (Released:2011-10-31)
参考文献数
44
被引用文献数
3 4

中條—西村症候群(ORPHA 2615, MIM 256040)は,幼小児期に凍瘡様皮疹で発症し,弛張熱や結節性紅斑様皮疹を伴いながら,次第に顔面・上肢を中心とした上半身のやせと拘縮を伴う長く節くれだった指趾が明らかになる特異な遺伝性炎症・消耗性疾患である.和歌山,大阪を中心とした関西と東北,関東地方に偏在し,30例近い報告がある.全国疫学調査で生存が確認された関西の10症例に加え,新規幼児例が和歌山で見出され,今後も増える可能性がある.長らく原因不明であったが,ホモ接合マッピングにより,免疫プロテアソームβ5iサブユニットをコードするPSMB8遺伝子のホモ変異が同定された.患者由来細胞,組織の検討により,本疾患ではプロテアソーム機能不全のためにユビキチン化,酸化蛋白質が蓄積することによって,p38 MAPK経路が過剰に活性化しIL-6が過剰に産生されることが示唆された.最近,欧米からもPSMB8遺伝子変異を伴う類症が報告され,遺伝性自己炎症疾患の新たなカテゴリーであるプロテアソーム不全症が世界に分布することが明らかになりつつある.