- 著者
-
大橋 唯太
井原 智彦
- 出版者
- 日本生気象学会
- 雑誌
- 日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.3-4, pp.101-114, 2022-11-25 (Released:2022-12-06)
- 参考文献数
- 45
2005~2019年15年間の東京23区・名古屋市・大阪市における循環器系疾患の旬別死亡率と気象条件の統計的関係を調べた.気温や気圧など複数の気象条件の各種疾患死亡率への影響度(死亡リスク)を,一般化加法モデル(GAM)によって評価した.解析した疾患種類の多くで,気象変数のうち日最高(最低)気温に対して死亡率が低温側と高温側で正の極値をもつような非線形効果を示した.現地気圧は,死亡率に対して線形効果が多くの疾患種類で現れていた.循環器疾患のうち不整脈と心不全は,日最高気温には高温側でも低温側でも死亡感度があまり強くない一方,出血性脳疾患や脳梗塞などの脳血管疾患は低温側のみで死亡感度が現れる,U-shapeやV-shapeとは異なる影響度曲線を示した.また,不整脈と心不全は高気圧条件ほど,脳血管疾患は低気圧条件ほど死亡リスクが上昇する特徴がみられた.このように疾患の種類によって気象要素への感度が異なるため,疾患別に分析する必要がある.