著者
有賀 健高
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.223-226, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
7

本研究では,風評被害の払拭には福島原子力発電所近辺を産地とする食品に対する消費者意識を把握することが重要であるという立場から,主に消費者の環境意識が,発電所近辺を産地とする食品購入に与える影響について検証した。アンケート調査によって得られたデータの分析から,環境意識の高い消費者ほど原発近辺を産地とする食品に対する購入意欲があることが示された。また環境意識以外の分析から,食品中の放射性物質の規格基準への信頼,高年齢,男性といった要素は購入意欲に正の影響があることがわかった。一方,高所得,高学歴,子供が多い,居住地が原発から離れているといった要素は購入意欲に負の影響を与えることが明らかとなった。
著者
藤澤 翠 高山 範理
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.361-366, 2014-12-02 (Released:2014-12-03)
参考文献数
19

本研究では,自然環境の有する心理的回復効果を調べるために,ROS(Restorative Outcome Scale;回復感指標)の日本語版(ROS-J)を開発し,妥当性・信頼性の検証を行った。さらに気軽なストレス解消法の創出を目指して,短時間の仮想的な森林浴環境の心理的回復効果について調べた。まずROS-Jの開発のため,合計357名(有効回答330名)を対象に実験①と実験②を行った。また,オフサイト森林浴の心理的回復効果の検証のため,ROS-Jを用い,実験①の計312名(有効回答285名)の被験者を対象に詳細な分析を行った。その結果,ROS-Jの質問紙としての妥当性・信頼性が確認された。また,ROS-Jによって,オフサイトにて容易に再現可能な映像と音を用いた仮想的な森林浴環境であっても,心理的回復効果が期待できることが明らかになった。
著者
吉水 湧樹 坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.337-342, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
15

この研究の目的は,共同運動と論理的思考を好むことが情報環境におけるテクノ依存症傾向が及ぼす新型うつ傾向に対する抑制要因になるかどうかを調査することである。情報系大学生に対する調査データは共分散構造分析で分析され,論理的思考傾向を示す学生及び単独運動よりも共同運動を好む学生に,より低い新型うつ傾向がみられた。現今の情報化社会における新型うつ傾向を予防するために,共同運動と論理的思考への愛好が振興される必要があり,また共同運動愛好を奨励することによってテクノ依存症傾向が低下すると思われる。
著者
武田 重昭 神崎 澪妃 加我 宏之 増田 昇
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.349-354, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
11

近年,本研究では,旅が大衆化した江戸期の名所案内記の中でも,はじめて観光モデルルートが掲載された「京城勝覧」を対象に近世京都における観光特性を明らかにすることを目的とした。本文に記載されている17 日間の案内文から,観光対象およびそれらの順序,観光対象についての説明内容を抽出して分析した。観光特性は,短距離で観光拠点が多い巡覧型,中距離で観光対象の少ない散策型,長距離で観光拠点が少ない遊山型,長距離で観光対象が多い周遊型の4つのタイプに分類でき,各タイプにおける人工物と自然物を調和させた観光特性が確認できた。
著者
對馬 孝治 舩橋 亨 笹田 勝寛 河野 英一
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.49-54, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
14

本研究では,河川に広く生息するオイカワ(Zacco platypus)を対象に,体組織の炭素と窒素の安定同位体比が食物源の違いを反映して河川(およそ-26‰と16‰)と遊水地(およそ-22‰と11‰)で異なったことを利用し,水域間の移動を明らかにした。同種の採補は,神奈川県内の境川,境川支流の和泉川,神奈川県立境川遊水地公園内の俣野遊水地,下飯田遊水地の隣接する4水域で実施した。出水による越流前後で河川と遊水地で採補された個体の安定同位体比の比較から,越流による河川から遊水地内へのオイカワの移動が確認された。遊水地は出水による生息域の流下を防ぐ役割があり,遊水地は河川のオイカワの生育場として重要な場所であることが示唆された。
著者
大橋 唯太 井原 智彦 玄地 裕
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.367-372, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
10

2007 年夏季に東京23 区で調査された睡眠に関するアンケート結果をもとに,住民の睡眠障害と屋外気象環境の関係を分析した。暑さによる睡眠障害を訴えた人の割合(睡眠障害有症率)と夜間の屋外最低気温とのあいだには明らかな相関が認められ,25℃を下回らない熱帯夜条件になると睡眠障害有症率が顕著に増加した。東京23 区を沿岸部・都心部・内陸部に分けた場合,熱帯夜条件のなかで,最低気温の低い沿岸部の睡眠障害有症率が他の地域に比べて低かった。湿度なども含めた温熱指標を用いた場合,体感温度を表すヒートインデックス(HI)が睡眠障害の指標として比較的良好であった。特にHI が気温の値から乖離するような夜間は,睡眠障害有症率が顕著に増加していた。
著者
孫 可冀 一ノ瀬 友博 土光 智子 陳 文波 板川 暢
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.71-76, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
19

ヨシ群落の効率的な生育管理を実現するため,広域的なモニタリング手法の開発が期待されている。 本研究は,中国向海(シャンハイ)湿地のヨシ群落を対象にし,現地調査データと衛星画像データの両方を使用し,ヨシの在・不在,草高,茎径,稈密度の四つの予測モデルを開発した。最適モデルの結果により, ヨシの生育に最も影響している指標は水分条件と傾斜角であることがわかった。この結果を踏まえて, 保全策を検討する基礎資料として, 2010年の向海湿地のヨシ群落の生育予測図を作成した。
著者
菅原 遼 坪井 塑太郎 畔柳 昭雄
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.413-418, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
4
被引用文献数
1

本研究では,東京都臨海部の運河利用に向けた規制緩和措置としての運河ルネサンス事業の対象 5地区において,管理者と協議会へのヒアリング調査を通じて運河の利用実態の把握と課題の検討を行った。その結果,地区ごとに事業構造や実施状況は異なるものの,独自の水辺づくり事業を展開していることを把握した。しかし,各地区の「管理者?協議会?事業者」の関係の実態から,協議会主体による事業実施に伴い事業者が限定的となっており,また,事業者の資金確保および施設利用に関する運営基盤が必ずしも整っておらず,継続的な事業実施および新規の事業者参入に向けた運営体制の確立が不十分であることを明らかにした。
著者
市川 貴大
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.7-12, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
37

堆肥環状施用の有無が樹木の生育に及ぼす影響を明らかにするために,植栽基盤に植栽された生育不良なヤマザクラについて,葉のSPAD 値,活力度,相対樹高,相対胸高直径,相対樹冠幅の変化を調査した。本調査地では表層土壌の持ち出しによる肥沃度の低下が植栽樹木の生育への制限要因になっていると考えられた。また,堆肥環状施用により,表層土と下層土の混合土と同様の植栽基盤の改善効果があることが示された。葉のSPAD 値にて植栽樹木の生育状況を評価する場合は夏期に行う必要があることが示唆された。
著者
増山 哲男 舘野 真澄 木下 瑞夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.281-286, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
7

市町村マスタープランは,将来のあるべき市町村像や将来の土地利用などのまちづくりの基本的な方向性を示すものであり,この中には自然的環境保全に関する検討が含まれるべきである。本研究は,文献情報を含む地理情報から得られる自然的環境に関わる基本情報と,住民から得られる動植物の存在および生活空間の変容に関わるオーラル情報を結合することにより,マスタープランづくりに必要となる自然的環境保全のための基本情報を得ようとするものである。本研究では,神奈川県秦野市西部をケーススタディ地区とし,地理情報とオーラル情報を用いて明らかになる有効性と留意点について明らかにした。
著者
小林 翼 大沼 進 森 康浩
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.37-42, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
9

家庭での省エネルギー行動を普及させる取り組みは多いが,長期に渡る質的な変化について追跡した研究は希少である。本研究では一年間にわたる省エネプロジェクト参加者の質的側面の時系列的変化を探索的に明らかにすることを目的とし,グループインタビューにおける参加者の発言内容をテキストマイニングによって分析を行った。その結果,最初の半年では事前に提示された行動項目について,金銭的なこと,暖房に関すること,取り組みの効果の実感しやすさなどに関する内容が多く発言されていたが,一年経過後では,自分だけでなく家族全体も含めて変われたことや,エネエコ診断にない新たな項目への挑戦などに関する発言が増えていた。