著者
重田 祥範 高岡 利行 大橋 唯太 亀卦川 幸浩 平野 勇二郎
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.23-35, 2013 (Released:2013-05-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1

都市内緑地の大気冷却効果を定量的に把握するため,大阪城公園とその周辺都市部を対象とした地上気象観測を 2007 年 8 月 1~15 日にかけて連続的に実施した.その結果,大阪城公園のクールアイランド強度は,午前 4~5 時のあいだに+2.0℃以上(最大+2.8℃)を示した.観測を実施した夜間には,この地域特有の南西寄りの一般風が卓越していたにもかかわらず,公園南側では一般風とは相反する弱い北風(0.5 m/s)が観測され,にじみ出し現象の存在を示唆する結果となった.また,冷気は公園東縁から都市部に流出しており,その影響範囲は最大で約 250 m 認められた.冷気の生成場所を特定するため空間開放度の違いによる夜間の大気冷却量に着目し,公園内の芝生地と樹林地の気温差を検討した.その結果,放射冷却によって芝生地で生成された冷気が樹林地まで輸送されるよりも,樹林地の樹冠上部で生成された冷気が地表付近へと沈降し蓄積した可能性が示唆された.
著者
大橋 唯太
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.33(2019年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.301-306, 2019-11-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
14

気候区分を考慮した9つの政令指定都市を対象に,2010~2017 年8年間の気象・気候の変化と急性循環器疾患の死亡率との関係を調べた。月平均気温を因子と考え,7種の心疾患・脳血管疾患の年齢調整死亡率の増減を説明した。夏と冬の月に死亡率の上昇する特徴が特に心疾患で明瞭に現れたが,日本海側・北日本の都市は太平洋側・西日本に比べて傾向が鈍かった。年による夏と冬の気候の違いも,その年の死亡率に影響することが明らかとなった。冬は厳冬の年になるほど全疾患で死亡率の上昇が現れた一方,夏は猛暑の年ほど心筋梗塞や脳梗塞といった血液の流れ・血栓に関係する疾患で上昇がみられた。月平均気温は,これら疾患リスクの情報に有用である。
著者
大橋 唯太 井原 智彦 高根 雄也
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.37(2023年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.27-32, 2023-12-08 (Released:2023-12-08)
参考文献数
21

東京23 区の夏季熱中症と虚血性心疾患の高齢者死亡リスクを,沿岸と内陸の地域別に高温経験の遷延性を考慮して解析した。日最高気温99 パーセンタイルの37℃高温経験は,沿岸地域で3日後,内陸地域で6日後まで熱中症リスクを高めていた。日中の高温条件では沿岸のほうが内陸よりも死亡リスクが高い一方,夜間の高温となる日最低気温28℃では逆に内陸のほうが死亡リスクは高くなった。虚血性心疾患の遷延性は特に沿岸地域で熱中症よりも長く12~13 日後までみられ,死亡リスクも沿岸が内陸よりも高くなっていた。日中の気温が高い日ほど業務・商業施設が集中する沿岸地域への高齢者の流動人口は減少し,気温による大規模な行動変容が確認された。
著者
大橋 唯太 亀卦川 幸浩 井原 智彦 高根 雄也
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

人口が集中する都市の屋内外環境における急性循環器系疾患の死亡リスクを、気象と都市の数値流体モデルによって高解像でマップ化することが、本研究の主課題である。建物室内での生活、屋外空間での歩行や労働など、個々の活動条件を想定した疾患リスクの定量評価を試みる。この物理モデルで得られた結果をもとに、AI(機械学習)による疾患リスク予測の簡易手法を確立する。また、将来の気候変動によって予想される極端な高温化が、急性循環器系疾患の死亡リスクをどの程度上昇させるかについても、予測評価を試みる。
著者
大橋 唯太 井原 智彦
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3-4, pp.101-114, 2022-11-25 (Released:2022-12-06)
参考文献数
45

2005~2019年15年間の東京23区・名古屋市・大阪市における循環器系疾患の旬別死亡率と気象条件の統計的関係を調べた.気温や気圧など複数の気象条件の各種疾患死亡率への影響度(死亡リスク)を,一般化加法モデル(GAM)によって評価した.解析した疾患種類の多くで,気象変数のうち日最高(最低)気温に対して死亡率が低温側と高温側で正の極値をもつような非線形効果を示した.現地気圧は,死亡率に対して線形効果が多くの疾患種類で現れていた.循環器疾患のうち不整脈と心不全は,日最高気温には高温側でも低温側でも死亡感度があまり強くない一方,出血性脳疾患や脳梗塞などの脳血管疾患は低温側のみで死亡感度が現れる,U-shapeやV-shapeとは異なる影響度曲線を示した.また,不整脈と心不全は高気圧条件ほど,脳血管疾患は低気圧条件ほど死亡リスクが上昇する特徴がみられた.このように疾患の種類によって気象要素への感度が異なるため,疾患別に分析する必要がある.
著者
大橋 唯太
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.36(2022年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.112-117, 2022-11-30 (Released:2022-12-05)
参考文献数
21

機械学習による雲海予報の実証実験をおこなった。機械学習には勾配ブースティング(lightGBM)を採用し,2018~2021 年の広島県三次盆地の雲海シーズンに対して予報した。誰でもWEB から入手できる気象庁アメダスの前日21 時までに観測された気象データから予報できる点が,本研究の大きな利点である。SHAP による特徴量重要度分析からは,前日18 時から21 時までの地上の気温低下量が翌朝の雲海予報に最も影響力が大きく,また地上だけでなく周辺山地で観測された気象データを含めたほうが予報精度も向上するとわかった。雲海の発生・非発生すべての適中率は4年平均で76.7%であったが,確率予報としても表現も付記することで利用者自ら意思決定できる工夫も加えた。
著者
大橋 唯太
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.67-80, 2020-11-12 (Released:2021-04-23)
参考文献数
40

本研究では,岡山県内の異なる地理的特徴をもつ3地域を対象に,季節性インフルエンザの流行の特徴と気象・気候の関係性を分析した.冬により低温な気候をもつ県北地域でインフルエンザ流行の開始やピークが早まるような特徴はなく,各地域の月平均気温(平年偏差)と流行レベルの関係も不明確であった.一方で,週平均気温とその週の流行レベルとのあいだにはある程度の関係が認められたが,気温よりも蒸気圧のほうが地域による差も年による差も小さくなる傾向がみられた.たとえばレベル2(定点あたり報告数が10以上)の流行時には県南・県北,暖冬年・厳冬年によらず週平均蒸気圧6hPaが目安となり,この数値は既往研究で示されたインフルエンザウィルスの1時間生存率60~70%,感染率70~80%の条件に相当していた.
著者
重田 祥範 菊川 由香利 大橋 唯太
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.23, 2014

2004年は観測史上最多となる10個の台風が日本に上陸した.その中でも台風0416号と0418号は瀬戸内海沿岸に甚大な高潮被害をもたらした.そこで,メソ数値気象モデルWRFと海洋数値モデルPOMの結合計算により,同経路を有する台風0416号と0418号を対象に瀬戸内海で発生した高潮の再現計算をおこなった.本研究では,高潮発生の主要因である吹き寄せ効果に主眼を置き,両台風の被害地域の違いを解析した.高松,宇野,松山,神戸の4地点で実測値と計算値を比較した結果,台風0416号において,高松では台風通過後,宇野では接近前に潮位偏差の計算値が実測値よりも過大評価していた.また,類似経路をとった台風でも最接近時の通過場所が海上もしくは陸上の違いで風向が異なるほか,潮位偏差が大きくなる海域についてもその風系の影響を受けて違いが生じることが明らかとなった.
著者
大橋 唯太 井原 智彦 玄地 裕
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.367-372, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
10

2007 年夏季に東京23 区で調査された睡眠に関するアンケート結果をもとに,住民の睡眠障害と屋外気象環境の関係を分析した。暑さによる睡眠障害を訴えた人の割合(睡眠障害有症率)と夜間の屋外最低気温とのあいだには明らかな相関が認められ,25℃を下回らない熱帯夜条件になると睡眠障害有症率が顕著に増加した。東京23 区を沿岸部・都心部・内陸部に分けた場合,熱帯夜条件のなかで,最低気温の低い沿岸部の睡眠障害有症率が他の地域に比べて低かった。湿度なども含めた温熱指標を用いた場合,体感温度を表すヒートインデックス(HI)が睡眠障害の指標として比較的良好であった。特にHI が気温の値から乖離するような夜間は,睡眠障害有症率が顕著に増加していた。
著者
大橋 唯太 竜門 洋 重田 祥範
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.59-68, 2009-06-01
被引用文献数
1