著者
安藤 亮一 吉川 桃乃 山下 裕美 土肥 まゆみ 千田 佳子 井田 隆 石田 雄二 秋葉 隆
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.317-325, 2003-05-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
30
被引用文献数
1

活性型ビタミンD静注製剤である, マキサカルシトールとカルシトリオールの透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症に対する効果を比較検討した. また, 新たに開発された1-84副甲状腺ホルモン (PTH) のみを測定するwhole PTHの測定を行い, whole PTHおよびC端の不活性フラグメント7-84 PTHへの効果についても比較検討した. 対象は年齢, 透析歴, PTHをマッチングさせた, 各群10例の二次性副甲状腺機能亢進症を有する透析患者である. PTHの値に応じて, マキサカルシトール5あるいは10μgを週3回各透析後に (マキサカルシトール群), また, カルシトリオールを0.5あるいは1.0μgを週3回 (カルシトリオール群) より開始し, intact PTH, whole PTH, 7-84 PTH, 骨型アルカリフォスファターゼ (BAP), インタクトオステオカルシン (iOC), I型プロコラーゲンNプロペプチド (PINP), 補正カルシウム (Ca), リン (P) に及ぼす影響について, 24週間にわたり前向きに比較検討した.両群ともに, 4週後にwhole PTHの有意な低下が認められた. カルシトリオール群では, 8週-12週においてPTHの低下が少ない傾向であったが, 薬剤の増量により, 16週以後, マキサカルシトール群と同様に低下した. Intact PTH, 7-84 PTHは, whole PTHと同様の経過を示した. BAP, iOC, PINPも同様の傾向を示したが, カルシトリオール群では有意な低下ではなかった. また, 補正Caは両群ともに増加, Pは変動が大きいが有意な変化を認めなかった. これらの検査値は24週後において, 両群間に有意な差を認めなかった. 薬剤の投与量を調節した結果, 24週後の投与量の比は約7:1であった. 以上より, マキサカルシトールとカルシトリオールは投与量を調節すれば, ほぼ同等の二次性副甲状腺機能亢進症に対する効果が得られ, その効力比はマキサカルシトールを1とするとカルシトリオールで約7に相当すると考えられた.
著者
尾﨑 章子 荻原 隆二 内山 真 太田 壽城 前田 清 柴田 博 小板谷 典子 山見 信夫 眞野 喜洋 大井田 隆 曽根 啓一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.697-712, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
23
被引用文献数
2

目的 100歳以上の長寿者(百寿者)の QOL を調べ,男女差,地域差を明らかにするとともに,100歳を超えてもなお高い QOL を実現している百寿者に関して生活習慣,生活環境との関連について検討を行った。方法 1999年度の「全国高齢者名簿」に登録された100歳以上の高齢者11,346人を母集団とした。男性は全数,女性は 1/2 の比率で無作為抽出を行った。死亡,住所不明,不参加の者を除く1,907人(男性566人,女性1,341人)に対し,個別に訪問し,質問紙を用いて聞き取り調査を行った(2000年 4~6 月)。本研究では百歳老人の QOL について a. 日常生活動作の自立,b. 認知機能の保持,c. 心の健康の維持の観点から検討した。独立変数は,食生活,栄養,運動,睡眠,喫煙習慣,飲酒習慣,身体機能,家族とした。分析は SPSS11.0J を使用し,男女別に多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 1. 男性の百寿者は女性の百寿者と比較して数は少ないものの,QOL の高い百寿者の割合は日常生活動作,認知機能,心の健康のすべてにおいて男性が女性に比べ多かった。 2. 百寿者数は西日本に多いものの,QOL の高い百寿者の割合に関して地域による有意な差は男女とも認められなかった。 3. ①日常生活動作の自立の関連要因:男性では,運動習慣あり,視力の保持,自然な目覚め,常食が食べられる,同居の家族がいるの 5 要因が,女性では,運動習慣あり,常食が食べられる,視力の保持,自然な目覚め,食欲あり,同居の家族がいる,転倒経験なしの 7 要因が日常生活動作の自立と有意な関係にあった。②認知機能の保持の関連要因:男性では,自然な目覚め,視力の保持,運動習慣あり,よく眠れている,常食が食べられるの 5 要因が,女性では,聴力の保持,自然な目覚め,視力の保持,食欲あり,同居の家族がいる,運動習慣ありの 6 要因が認知機能の保持と有意な関係にあった。③心の健康の維持の関連要因:男性では,視力の保持,運動習慣あり,よく眠れている,常食が食べられるの 4 要因が,女性では,視力の保持,食欲あり,運動習慣あり,1 日 3 回食事を食べる,同居の家族がいる,常食が食べられる,自然な目覚めの 7 要因が心の健康の維持と有意な関係にあった。結論 百寿者の日常生活動作の自立,認知機能の保持,心の健康の維持に共通して関連が認められた要因は,男性では運動習慣,身体機能としての視力,食事のかたさであり,女性では,運動習慣,身体機能としての視力,自然な目覚め,食欲,同居家族であった。これらの検討から,QOL の高い百寿者の特徴は,男性では,①運動習慣がある②身体機能としての視力が保持されている③普通のかたさの食事が食べられる,女性では①運動習慣がある②身体機能としての視力が保持されている③自分から定時に目覚める④食事を自らすすんで食べる(食欲がある),⑤同居の家族がいること,が明らかになった。これらの要因の維持が超高齢者の高い QOL の実現に関与している可能性が示唆された。
著者
城戸 尚治 兼板 佳孝 尾崎 米厚 谷畑 健生 神田 秀幸 大井田 隆
出版者
NIHON UNIVERSITY MEDICAL ASSOCIATION
雑誌
日大醫學雜誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.428-435, 2012-12-01

全国約 10 万人の中高生を対象とした大規模疫学調査データを用いて喫煙行動と不眠の関連性について検討を行った.調査デザインは断面標本調査とした.2004年から 2005 年にかけて全国学校総覧より無作為抽出した中学高校の在校生を対象に自記式質問調査票による調査を行い,回答に不備のなかった 102,451 人分の調査票を解析した.入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒の有訴者率は,喫煙日数,喫煙本数が多いあるいはニコチン依存度が高いほど有意に高値を示した.多重ロジスティック回帰分析により非喫煙者に対する調整オッズ比を算出した結果,毎日喫煙する,1 日 21 本以上喫煙する,朝起きていつもすぐに吸いたくなるという群が最も高値を示し,いずれも有意な関連が認められた.これら体内のニコチン摂取量と不眠症状の関係から,喫煙行動と不眠の間に密接な関連があることが示唆された.今後,学校において喫煙防止と睡眠衛生を含めた包括的な対策が必要である.
著者
城戸 尚治 兼板 佳孝 尾崎 米厚 谷畑 健生 神田 秀幸 大井田 隆
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大醫學雜誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.428-435, 2012-12-01
参考文献数
30

全国約 10 万人の中高生を対象とした大規模疫学調査データを用いて喫煙行動と不眠の関連性について検討を行った.調査デザインは断面標本調査とした.2004年から 2005 年にかけて全国学校総覧より無作為抽出した中学高校の在校生を対象に自記式質問調査票による調査を行い,回答に不備のなかった 102,451 人分の調査票を解析した.入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒の有訴者率は,喫煙日数,喫煙本数が多いあるいはニコチン依存度が高いほど有意に高値を示した.多重ロジスティック回帰分析により非喫煙者に対する調整オッズ比を算出した結果,毎日喫煙する,1 日 21 本以上喫煙する,朝起きていつもすぐに吸いたくなるという群が最も高値を示し,いずれも有意な関連が認められた.これら体内のニコチン摂取量と不眠症状の関係から,喫煙行動と不眠の間に密接な関連があることが示唆された.今後,学校において喫煙防止と睡眠衛生を含めた包括的な対策が必要である.
著者
村上 昇 幸野 亮太 中原 桂子 井田 隆徳 黒田 治門
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.S・viii, 763-766, 2000-07-25
被引用文献数
3

一年以上の間, 室温22度, 14時間明:10時間暗の照明条件下で飼育されたシマリスを短日照明(10時間明:14時間暗)と低温条件に暴露することにより季節外冬眠を誘起した.我々は一年のどの時期でもこの季節外冬眠を誘起できた.この季節外冬眠は季節間において, 冬眠一党醒インターバルや, それぞれの冬眠や覚醒時間には有意な差を認めなかったが, 冬眠に入るまでの期間の長さにおいて夏のみ約60日を要し, 他の季節の平均30日より長かった.さらに, 覚醒インターバルでの覚醒時刻は冬では明期に起こるのに対し, 春では明期と暗期でほぼ等しい割合で起こった.これらの結果はシマリスの冬眠がサーカディアンリズム(概日リズム)とサーカニュアルリズム(概年リズム)の両者にリンクしていることを示唆している.夏の季節外冬眠において, セロトニン枯渇剤であるパラクロロフェニルアラニン(PCPA)の冬眠中での慢性投与は冬眠を阻止し, 非冬眠動物への投与は逆に冬眠を誘発した.一方, オピオイドのアンタゴニストであるナロキソンの投与は覚醒時間の延長を起こした.これらの結果は, セロトニンによる冬眠誘超や維持機構がサーカニュアル(概年リズム)システムと独立したものであることを示唆している.