著者
藤本 悠吾 中川 慧 今城 健太郎 南 賢太郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.FIN-029, pp.73-80, 2022-10-08 (Released:2022-10-01)

機械学習を用いた株価予測は実務的にも学術的にも重要であり、多くの研究がおこなわれている。それらのうち有望な方法の一つとして、株式市場のダイナミズムを考慮し、高い予測力と解釈可能性を兼ね備えた Trader-Company (TC) 法がある。一方、TC 法をはじめとする機械学習による株価予測手法は、点推定であり、その予測の不確実性が考慮できていないため、実務的な応用に際して懸念が生じる。そこで本研究では、Uncertainty Aware Trader-Company Method (UTC) 法という高い予測力を持ち、予測の不確実性を定量化できる株価予測手法を提案する。UTC 法は、TC 法を不確実性の推定を可能にする確率的モデリングと組み合わせることにより、不確実性を捉えながら、TC 法の予測力と解釈可能性を維持できる。理論的にも、UTC 法による推定分散が事後分散を反映し、かつ TC 法に対して予測の悪化につながるバイアス等を与えないことを証明できる。さらに、人工および実際の市場データに基づいた実証分析を行い UTC 法の有効性を確認した。人工データでは、予測が困難な状況や予測対象の分布の変化を UTC 法が検出できることを確認した。実際の市場データを用いた分析では、UTC 法による投資戦略がベースライン手法よりも高いリスク・リターン比を達成できることを示した。
著者
伊藤 克哉 中川 慧 今城 健太郎 酒本 隆太
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3Xin409, 2023 (Released:2023-07-10)

機械学習による金融時系列の予測は実務的にも学術的にも重要な研究課題である。金融時系列は、ノイズが多く、非定常であり、更に機密情報を含む事があるため、分析が困難である。これらの課題に対して、本研究ではAugmentation and Bagging method for Confidential Data series Forecasting(ABCD-Forecast)という手法を提案する。ABCD-Forecastは「データ分析コンペティション」という現実の枠組みから着想を得ており、 多数の分析者が予測結果を送信し評価を受ける仕組みを仮想的に構築する。ABCD-Forecastでは、仮想的な分析者に多様な「ノイズ除去加工」をしたデータを配布する。この加工により多様で低ノイズなデータ生成が可能となる。コンペティション形式で、分析者から多様かつ正確なモデルを得、状況ごとに使い分けることで非定常な市場にも対処する。また、時系列を加工して配布することで、実際のコンペティションに於いても機密性を担保したデータ配布が期待される。本研究では実データを用いた実証分析により良好な予測精度が得られることを示した。
著者
今城 健太郎 南 健太郎 伊藤 克哉 中川 慧
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.4Rin120, 2020 (Released:2020-06-19)

株式投資におけるポートフォリオ構築は金融分野で重要な課題である.本論文では,株式市場における共通因子をヘッジしたあとに残る残差リターン (residual return) という概念に着目し,その分布予測に基づいてポートフォリオを構築する新しい手法を提案する.提案手法の特徴は,単純なスペクトル分解を用いることで残差リターンの情報を抽出すること,および金融時系列に特有のスケール不変性を考慮した新しい深層学習のアーキテクチャを利用した分布予測を行うことである.本論文では,日本の株式市場のデータを用いた実証実験によって提案手法の有効性を示す.
著者
平野 正徳 南 賢太郎 今城 健太郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-030, pp.51-57, 2023-03-04 (Released:2023-03-04)

深層学習と価格時系列シミュレーションを用いてオプションのヘッジ戦略を学習するDeep Hedgingは,取引手数料などを考慮に入れたより現実的な取引戦略を立てることができるため,近年脚光を浴びている.しかしながら,その学習において活用される原資産価格のシミュレーターは,Heston過程などの特定の価格過程を使用することが多い.そこで,本研究においては,特定の価格過程を用いることなく,Deep Hedgingの取引戦略の学習を可能にする手法を提案する.提案手法では,架空の任意の価格過程を生成する生成器とDeep Hedgingが敵対的に学習を行う.提案手法を用いた場合,一切の価格時系列を与えることなく,通常のDeep Hedgingとほぼ同等の性能のヘッジを行えることを示した.
著者
山内 智貴 中川 慧 南 賢太郎 今城 健太郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2J4GS1001, 2022 (Released:2022-07-11)

近年,金融分野における機械学習に基づく定量的予測モデルの開発が活発化している.しかし,機械学習ベースの株価予測モデルは「市場の効率性」と「予測モデルの解釈可能性」の2つの課題により,実用化が困難である.これらの課題に対して,解釈性を担保しつつ短期的に高い予測精度のルールを進化的に実現するTrader-Company(TC)法がある.しかし,TC法はその性質上,市場レジームの急激な変化を考慮しないため,変化によって予測精度が悪化する可能性がある.そこで本研究では,レジームの変化に対する高いロバスト性を実現するため,Multiple-World Trader-Company法を提案する.提案手法では,TC法において単純で解釈可能な予測アルゴリズムであるTraderを管理するCompanyモデルを弱学習器として,レジーム単位で分割した学習データを複数Companyが個別に学習する.実データを用いた実証分析により,提案手法がベースライン手法と比較して良好な予測精度を達成することを示す.
著者
今城 健太郎 長谷川 剛 谷口 義明 中野 博隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.455, pp.93-98, 2011-02-28
参考文献数
22

現在,数時間以内の降水量の予報は,雨域を観測しその移動を補外する方法によって行われている.これは補外法が,数時間以内の予報においては,物理法則に基づき大気の状態変化を計算を行う方法に比べ,同程度の精度を得るのにかかる計算時間が短いためである.一方,近年多発している都市型水害をもたらす集中豪雨を早期に発見し予報を行うには,現在気象庁が予報に用いている気象レーダーでは解像度および観測頻度ともに十分とは言えない.これに対し,より高解像度かつ高頻度な観測データを得るため,現在の気象レーダーより高性能なレーダーの配備が進んでいる.しかし現在,そのような高性能レーダーを用いた降水量の恒常的な予報は行われていない.そこで本稿では,高性能レーダーの観測結果を用いて分単位の降雨予報を行う手法を提案する.提案手法は複数の時刻の観測データを基に,ブロックマッチングアルゴリズムを用いてオプティカルフローを検出し,それ以後の雨域の予報を行う.評価の結果,気象庁が提供している予報情報であるナウキャストと比較し,5分後から1時間後の以内の予報において,25%以上高い精度が得られることを確認した.
著者
伊藤 克哉 南 賢太郎 今城 健太郎 中川 慧
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4Rin167, 2020 (Released:2020-06-19)

近年、金融分野において、機械学習的手法を用いた定量的な金融予測手法の開発が実務的にも学術的にも盛んである。 しかし、機械学習を用いた定量的金融予測モデルの開発には三つの困難がある。まず、原理的に全てのモデルは短命でかつ、ほとんどチャンスレートの正解率しか達成できない。次に、取引戦略という特殊なルールを一般的な機械学習モデルが学習することは難しい。最後に、高い予測精度とモデルの解釈性を同時に達成することが難しい。これらの問題に対処するべく我々は、Trader-Company法という新しいメタヒューリスティクスを用いた予測アルゴリズムを提案する。Trader-Company法は、単純な予測アルゴリズムであるTraderとTraderを管理するCompanyからなる。提案手法は、短命で弱いモデルが大量に存在する実際の金融市場の特性を反映している。また取引戦略の枠組み内で最適化を行うため、最適な予測戦略を作成できる。そして個々のTraderは人間に理解に可能な戦略からなるので解釈可能である。我々は提案手法の有効性を、実際の株式市場のデータを用いた実験で確認する。
著者
平野 正徳 今城 健太郎 南 賢太郎 島田 拓弥
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.FIN-028, pp.27, 2022-03-12 (Released:2022-10-21)

Deep Hedging, which uses deep learning and price time-series simulations to optimize option hedging, has recently been in the spotlight because it enables more realistic hedging that can take into account frictions such as transaction fees (imperfect market). However, the situation of hedging an option by other options has never been addressed by deep hedging because of its simulation difficulties. In that situation, pricing for tradable options should also be performed via deep hedging in simulations for realizing imperfect market simulations, which has required unrealizable enormous computational resources because of the nested architecture of deep hedging. Thus, in this study, we proposed a new deep-hedging mechanism for learning hedging strategies under such a nested situation. As a result, we showed better hedging via proposed deep hedging with multiple tradable options.
著者
南 賢太郎 今城 健太郎 中川 慧 今長谷 拓
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2J4GS1002, 2022 (Released:2022-07-11)

フルスケール最適化 (FSO) はポートフォリオ選択の枠組みで,ヒストリカルリターンの上で効用関数を直接最適化する手法である.FSOの既存の定式化は経験分布に基づいているため,リターン分布が時間変化する場合にはout-of-sampleでのパフォーマンスが悪くなりうる.本論文では,予測型フルスケール最適化 (PFSO) というFSOと分布予測を組み合わせた新しいポートフォリオ構築の枠組みを提案する.PFSOは柔軟な枠組みであるため,投資家のリスク選好や将来のリターン分布に関する見通しを取り入れることができる.また,FSOのための新しい連続最適化アルゴリズムも提案する.提案法は階層的な予算制約のもとで素早く最適解に収束する.現実のポートフォリオのデータにおいて数値実験を行い,提案手法の有効性を示す.