著者
谷口 義明
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.744-752, 2014-11-05 (Released:2018-09-30)

私たちは銀河系(天の川銀河)という銀河に住んでいる.銀河系には約2,000億個もの星があり,その大きさは10万光年にも及ぶ(1光年は光が1年間に進む距離で,約10兆km).宇宙には銀河系のような銀河が1,000億個程度あると考えられている.銀河には渦巻構造を持つ円盤銀河と回転楕円体構造を持つ楕円銀河(天球面に投影して観測すると見かけ上が楕円に見えるため楕円銀河と呼ばれる)がある.円盤銀河の円盤はもちろん回転運動をしている.楕円銀河の構造は星々のランダム運動(速度分散)でサポートされている場合が多いが,少なからず回転運動もしている.角運動量を持たない銀河はないということである.回転している銀河には中心があり,その場所は銀河中心核と呼ばれる.確かに銀河の写真を見てみると,銀河の中心部は明るい.そこには星の集団があるのだろうと考えられていたが,どうもそうではないケースがあることがわかった.1960年代のことである.銀河の中には,中心部が異様に明るく輝いているものがあり,それらは活動銀河中心核と呼ばれる.これらの中心核から放射されるエネルギー量は星の集団では説明できない.そのため,超大質量ブラックホールによる重力発電が有力なエネルギー源であると考えられるようになった.つまり,銀河中心核にある超大質量ブラックホールに星やガスが降着し(質量降着と呼ばれる),そのときに解放される重力エネルギーを電磁波に変換して明るく輝いているというアイデアである.では,活動銀河核を持つ銀河は特別で,普通の銀河の中心核には超大質量ブラックホールはないのだろうか?答えはノーである.最近の10数年の研究によって,ほとんどすべての銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在することが明らかになってきたのである.その結果,驚くべきことがわかった.超大質量ブラックホールの質量は銀河の回転楕円体成分(スフェロイド:円盤銀河の場合はバルジと呼ばれる構造であり,楕円銀河の場合は銀河本体)の質量と非常に良い比例関係を示すことである.両者のサイズは約10桁も異なっているので,なぜこのような驚くべき関係があるのか大きな問題としてクローズアップされたのである.なぜなら,この事実は,ブラックホールが銀河と共に進化してきたことを意味するからだ.ブラックホールの重力圏は銀河のスケールに比べれば極端に小さいので,共進化はブラックホールと銀河とがお互いに何らかのフィードバックを与えつつ進化してきたことを意味する.さらに,最近では,宇宙の年齢がわずか8億歳の頃に,太陽質量の10億倍を超える超大質量ブラックホールが既に形成されていることが発見され,その起源も謎となっている.このような超大質量ブラックホールを短期間で作るには,種となるブラックホールの形成のみならず,どのような物理過程でブラックホールが大質量を獲得していくのかは不明のままである.銀河衝突などのトリガーの要素も取り入れた研究が行われている.本稿では,観測的な進展も合わせて,超大質量ブラックホールと銀河の共進化についての現状を解説し,今後の研究の展望について言及する.
著者
今城 健太郎 長谷川 剛 谷口 義明 中野 博隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.455, pp.93-98, 2011-02-28
参考文献数
22

現在,数時間以内の降水量の予報は,雨域を観測しその移動を補外する方法によって行われている.これは補外法が,数時間以内の予報においては,物理法則に基づき大気の状態変化を計算を行う方法に比べ,同程度の精度を得るのにかかる計算時間が短いためである.一方,近年多発している都市型水害をもたらす集中豪雨を早期に発見し予報を行うには,現在気象庁が予報に用いている気象レーダーでは解像度および観測頻度ともに十分とは言えない.これに対し,より高解像度かつ高頻度な観測データを得るため,現在の気象レーダーより高性能なレーダーの配備が進んでいる.しかし現在,そのような高性能レーダーを用いた降水量の恒常的な予報は行われていない.そこで本稿では,高性能レーダーの観測結果を用いて分単位の降雨予報を行う手法を提案する.提案手法は複数の時刻の観測データを基に,ブロックマッチングアルゴリズムを用いてオプティカルフローを検出し,それ以後の雨域の予報を行う.評価の結果,気象庁が提供している予報情報であるナウキャストと比較し,5分後から1時間後の以内の予報において,25%以上高い精度が得られることを確認した.
著者
岸本 和理 谷口 義明 井口 信和
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.76-81, 2022-06-23

Webアプリケーションの脆弱性を悪用した主要な攻撃の1つにクロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃がある.Webアプリケーション内のXSS脆弱性を減らすためには,Webアプリケーション開発者が,XSS攻撃および対策手法を学ぶだけでなく,攻撃者視点でXSS脆弱性を発見するための知識やスキルを習得することが重要であると考えられる.そこで本稿では,攻撃者視点を取り入れたXSS演習システムを開発する.学習者はWebブラウザ,仮想ネットワーク上に構築したWebサーバ,攻撃者ホストを使って学習や演習を実施する.情報系学科の学生を対象とした実験の結果,本システムを用いることにより座学と比較してXSS対策の学習を支援できることを確認した.
著者
谷口 義明
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.744-752, 2014

私たちは銀河系(天の川銀河)という銀河に住んでいる.銀河系には約2,000億個もの星があり,その大きさは10万光年にも及ぶ(1光年は光が1年間に進む距離で,約10兆km).宇宙には銀河系のような銀河が1,000億個程度あると考えられている.銀河には渦巻構造を持つ円盤銀河と回転楕円体構造を持つ楕円銀河(天球面に投影して観測すると見かけ上が楕円に見えるため楕円銀河と呼ばれる)がある.円盤銀河の円盤はもちろん回転運動をしている.楕円銀河の構造は星々のランダム運動(速度分散)でサポートされている場合が多いが,少なからず回転運動もしている.角運動量を持たない銀河はないということである.回転している銀河には中心があり,その場所は銀河中心核と呼ばれる.確かに銀河の写真を見てみると,銀河の中心部は明るい.そこには星の集団があるのだろうと考えられていたが,どうもそうではないケースがあることがわかった.1960年代のことである.銀河の中には,中心部が異様に明るく輝いているものがあり,それらは活動銀河中心核と呼ばれる.これらの中心核から放射されるエネルギー量は星の集団では説明できない.そのため,超大質量ブラックホールによる重力発電が有力なエネルギー源であると考えられるようになった.つまり,銀河中心核にある超大質量ブラックホールに星やガスが降着し(質量降着と呼ばれる),そのときに解放される重力エネルギーを電磁波に変換して明るく輝いているというアイデアである.では,活動銀河核を持つ銀河は特別で,普通の銀河の中心核には超大質量ブラックホールはないのだろうか?答えはノーである.最近の10数年の研究によって,ほとんどすべての銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在することが明らかになってきたのである.その結果,驚くべきことがわかった.超大質量ブラックホールの質量は銀河の回転楕円体成分(スフェロイド:円盤銀河の場合はバルジと呼ばれる構造であり,楕円銀河の場合は銀河本体)の質量と非常に良い比例関係を示すことである.両者のサイズは約10桁も異なっているので,なぜこのような驚くべき関係があるのか大きな問題としてクローズアップされたのである.なぜなら,この事実は,ブラックホールが銀河と共に進化してきたことを意味するからだ.ブラックホールの重力圏は銀河のスケールに比べれば極端に小さいので,共進化はブラックホールと銀河とがお互いに何らかのフィードバックを与えつつ進化してきたことを意味する.さらに,最近では,宇宙の年齢がわずか8億歳の頃に,太陽質量の10億倍を超える超大質量ブラックホールが既に形成されていることが発見され,その起源も謎となっている.このような超大質量ブラックホールを短期間で作るには,種となるブラックホールの形成のみならず,どのような物理過程でブラックホールが大質量を獲得していくのかは不明のままである.銀河衝突などのトリガーの要素も取り入れた研究が行われている.本稿では,観測的な進展も合わせて,超大質量ブラックホールと銀河の共進化についての現状を解説し,今後の研究の展望について言及する.
著者
野村 圭太 谷口 義明 井口 信和 渡辺 健次
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.672-682, 2017-03-15

今後,企業や大学などの既存ネットワークにおいてOpenFlowネットワークへの移行が進められると予測される.しかし,OpenFlowネットワークへの移行には,コントローラの設定やテスト環境の構築にコストを要すると考えられる.そこで本稿では,従来型のネットワークから,OpenFlowネットワークへの移行を支援するシステムを提案,設計,実装,評価する.提案システムを用いることにより,従来型のネットワーク上のルータから自動的に設定情報を取得し,その設定情報をOpenFlowネットワークで適用可能な形式に変換,その後,変換した設定情報をOpenFlowネットワークへ反映させることができる.これにより,従来型のネットワークと同等のパケット制御を行うOpenFlowネットワークを半自動的に構築できる.本稿では,実ルータを用いた評価の結果,最大10台のルータから構成される従来型のネットワークを6分以内でOpenFlowネットワークに移行できることを確認した.
著者
谷口 義明 唐牛 宏 有本 信雄 岡村 定矩 太田 耕司 土居 守 海部 宣男 唐牛 宏 有本 信雄 岡村 定矩 太田 耕司 土居 守 宮崎 聡 小宮山 裕 村山 卓
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ハッブル宇宙望遠鏡の基幹プログラムである「宇宙進化サーベイ(COSMOSプロジェクト)」を遂行した。国立天文台ハワイ観測所のすばる望遠鏡のデータとあわせて、宇宙の暗黒物質の空間分布を世界で初めて明らかにした。これにより、暗黒物質に導かれた銀河形成論のパラダイムが正しいことを立証した。また、COSMOS天域で検出された約100万個の銀河の測光データに基づき、銀河、巨大ブラックホール、及び宇宙大規模構造の進化の研究に大きな貢献を果たした。
著者
眞鍋 督 谷口 義明 井口 信和
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルプラクティス(DP) (ISSN:24356484)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.22-32, 2023-07-15

本研究では,クラウド環境を標的とするDDoS攻撃の対策演習を実施できる環境の提供を目的としてDDoS攻撃の対策訓練システムを開発した.本システムは,Infrastructure as a Serviceにおいて最も採用されているAmazon Web Serviceを用いた演習が可能である.また,高度化するDDoS攻撃にも対応できる力を身につけるために,対策手法に加えて攻撃手法に関する演習も実施できる.本システムによる演習を通して,クラウド環境を狙ったDDoS攻撃の対策手法に関する理解と知識の定着が期待できる.実験協力者20名を対象に実施した評価実験の結果,本システムを利用する学習が座学と比較して有効であることを確認した.
著者
秋山 周平 森本 涼也 谷口 義明
雑誌
2021年度 情報処理学会関西支部 支部大会 講演論文集 (ISSN:1884197X)
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021-09-10

本研究では、MACアドレスがランダム化されたBLE(Bluetooth Low Energy)端末のアドバタイジングパケットからパケットの受信時刻とRSSIを用いて端末を同定する手法を提案、評価する。
著者
江川 悠斗 谷口 義明 井口 信和
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.1298-1306, 2021-05-15

Wi-Fiネットワークを介して様々なIoT機器がインターネットに接続されているが,小規模組織や家庭ではIoT機器が適切に管理されておらず,十分なセキュリティ対策が講じられていない場合がある.管理されていないIoT機器を管理するためには,まず,無線LAN内のIoT機器を把握する必要がある.そこで本稿では,ノートPCのみを用いて無線LAN内のIoT機器の把握を支援できるシステムを提案,開発する.提案システムは,まず,無線LAN内の無線フレームを観測することにより,無線LAN内に設置されたIoT機器のアドレス一覧を取得する.また,IoT機器から送信される無線フレームの受信電波強度を利用して,システム利用者がシステム上に表示されたアドレスと実際のIoT機器の対応付けを行う際の補助を行う.さらに,利用者が所在を把握していないIoT機器がある場合は,そのIoT機器の設置場所に利用者を誘導する.本稿では,研究室内に設置したIoT機器を利用した実験により,提案システムを用いてIoT機器の把握を支援できることを示す.
著者
後安 謙吾 谷口 義明 井口 信和
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J104-D, no.2, pp.159-163, 2021-02-01

本論文では,MR技術を用い実空間上に仮想ネットワーク環境を構築するシステムを開発する.本システムにより,実ネットワーク機器を用いることなく,ネットワーク機器の配置や配線などの物理的な構成を確認しながら,ネットワークの検証や構築学習を実施できる.
著者
江川 悠斗 谷口 義明 井口 信和
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.56-62, 2020-11-26

Wi-Fi ネットワークを介して様々な IoT 機器がインターネットに接続されているが,小規模組織や家庭では IoT 機器が適切に管理されておらず,十分なセキュリティ対策が講じられていない場合がある.我々はこれまでに IoT 機器の把握を支援することを目的に,IoT 機器から送信される無線フレームを利用した IoT 機器一覧表示システムを開発してきた.本稿では,IoT 機器から送信される無線フレームを受信する際の受信電波強度を利用して,所在が不明な IoT 機器の設置位置にユーザを誘導するナビゲーション機能を新たに提案,本システムに導入する.また,研究室内に設置した IoT 機器を利用した実験により,ナビゲーション機能を用いて IoT 機器の設置された位置にユーザを誘導できることを示す.

1 0 0 0 OA 宇宙進化論

著者
谷口 義明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_3-I_12, 2011 (Released:2012-04-06)
参考文献数
3

We present a review on the formation and evolution of the universe based on recent observations and theoretical considerations. In particular, we summarize the observational properties and theoretical perspectives on both the dark matter and dark energy that occupy 95 percent of the mass density in the universe.
著者
湯川 誠人 谷口 義明 井口 信和
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.8, pp.591-602, 2020-08-01

ネットワークセキュリティ教育においては,防御側の視点のみでなく攻撃側の視点を加えた学習を行うことで,防御手法の理解をより深めることができる.そのため,攻防戦型演習のように両側の視点を学べる演習が有効とされている.そこで本論文では,無償で提供されているソフトウェアを組みあわせることにより,低コストに攻防戦型ネットワークセキュリティ演習を実施できるシステムを開発した.本論文で対象とする攻防戦型演習は,初学者を対象としており,2人の学習者が攻撃側と防御側に分かれて演習を行う.開発システムは仮想化ソフトウェアを利用しているため,既存のネットワークに対して攻撃を行わない安全な演習が実施可能である.また,開発システムではブラウザを通して機器を操作するため,学習者は自身の保有するPC等を使って手軽に演習を実施可能である.性能評価の結果,想定する演習のネットワークの規模に開発システムが対応可能であること,また,学習者が仮想ネットワークの構築を円滑に実施できることを確認した.更に,利用評価を行い,開発システムの有用性を確認した.
著者
足利 えりか 谷口 義明 長谷川 剛 中野 博隆
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会研究会講演予稿 (ISSN:02853957)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.129-136, 2010

近年,道路の通行量や建物,催し物会場等の入退場者数を把握するための人流計測の自動化に対する需要が高まっている.我々の研究グループでは,カメラで取得した動画像を用いて,人物が重なり合うような状況でも,人流を実時間,高精度に計測できる人流計測手法を提案している.提案手法では,まず,カメラを用いて斜め上空から対象領域を撮影し,取得した動画像中の所望の位置に直線状の仮想ゲートを設置する.次に,仮想ゲート上の各画素における背景差分をフレーム毎に計算し,差分が大きな画素を始点とするオプティカルフローを抽出する.抽出したオプティカルフローを始点が隣接する同じ向き,大きさのフロー群に分離し,事前学習により得た統計情報を用いて,分離したフロー群の大きさから,通過人数を推定する.本稿では,提案手法の諸要素のうち,仮想ゲートにおけるオプティカルフローをブロックマッチング法を用いて抽出する手法を提案する.提案手法では,探索範囲を仮想ゲート周辺に限定することにより,計算量を抑え,マッチング判定処理を従来より詳細に行うことができるため,高精度なオプティカルフローの抽出が可能となる.実動画像を用いた評価の結果,提案手法を用いることにより,実時間,89%の精度でオプティカルフローの抽出が出来ることを示す.
著者
木谷 友哉 谷口 義明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.457, pp.499-504, 2009-02-24

センサネットワークのカバレッジ,コネクティビティ,寿命,ロバスト性はセンサ端末の初期配置に大きく影響される.本稿では,大量のセンサ端末を一度に空中で散布する際に,センサ端末の効果的な初期配置を実現するための散布法を提案する.提案手法では,センサ端末に落下中に2つの水平方向の移動挙動を切替えられる機構を持たせ,その切替タイミングを制御することにより観測領域に均等に分布して落下させる.センサ端末は落下中に他のセンサ端末と通信を行い,周辺の他の端末数を考慮して落下挙動の切替を行うことで,落下後のセンサ端末の分布の偏りを防ぐ.シミュレーションにより,提案手法がセンサ端末の初期配置を一様に近づけられることを示す.
著者
福山 和生 谷口 義明 井口 信和
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.931-935, 2016-03-15

不正アクセスによる被害の増加,ネットワークセキュリティに関する知識,技能を持つ技術者の不足などを背景に,ネットワークセキュリティ教育の重要性および緊急性が高まっている.実践的なネットワークセキュリティ教育のためには演習が不可欠であるが,独立した演習環境を構築するための機材の準備コストなどが障壁となる.本研究では,仮想マシンを用いて1台のコンピュータ上に不正アクセス対策機器を導入した仮想ネットワークを構築することにより,安全かつ低コストにネットワークセキュリティに関する演習を実施できるシステムを実装した.評価実験の結果,本システムで実践的なネットワークセキュリティの学習環境を提供できることが分かった.
著者
谷口 義明
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

UltraVISTAプロジェクトはVISTA望遠鏡(VISTA=Visible and Infrared Survey Telescope for Astronomy)はチリ共和国にあるVery Large Telescopeのサイトに設置された口径4mのサーベイ専用の望遠鏡である。我々はハッブル宇宙望遠鏡のトレジャリー・プログラムで観測された宇宙進化サーベイの天域の近赤外線撮像探査を行い、赤方偏移 z=7 の銀河を多数発見した。広視野サーベイのおかげで、従来想定されていなかった明るい光度の銀河が発見され、銀河の初期進化及び宇宙再電離源の研究に大きな貢献をした。
著者
谷口 義明
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

近年、センサネットワーク技術が大きな注目を集めている。センサネットワークの性能はセンサ端末の初期配置に大きく影響される。本研究では、大量のセンサ端末を一度に空中で散布する際に、センサ端末の一様な初期配置を実現するためのセンサ端末散布法を提案した。提案手法では、空中落下中に自身の落下挙動を切替可能なセンサ端末を想定する。周囲センサ端末との通信結果に基づき落下挙動の切替えタイミングを適切に制御することにより、センサ端末を観測領域に均等に落下させる。シミュレーション評価の結果、提案手法を用いることにより、カバレッジの高いセンサ端末配置を実現できることを示した。
著者
谷口 義明
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本年度は昨年度に購入したイメ-ジ増倍管付きのCCDカメラを用いた高速星像検出システムによる観測を行いデ-タ解析を行った。このデ-タに基づき、木曽観測所における星像ダンスの性質を定量的に解析した。このような研究は国内では初めてのものである。1)観測:観測は東京大学理学部天文学教育研究センタ-木曽観測所の105cmシュミレット望遠鏡の主焦点部にカメラを取り付けて行った。観測期間は4月から12月で計10晩以上に及んだ。CCDカメラは約10分角の視野をビデオレ-トで撮像する事ができるので、その視野中に写る全ての星像を解析することができる。解析可能な星の限界等級は約16等である。2)デ-タ解析:観測デ-タはSVHSビデオに集録され、その後1画面ずつディジタル化して写野中に写っている星像の位置を30ミリ秒毎に測定し、その動きを調べた。デ-タ解析は東京大学木曽観測所現有のパ-ソナルコンピュ-タX68000と国立天文台のSpark Stationを用いてなされた。3)結果:写野内の複数の星像の動きの相関を調べることで、星像の動きはわずか10分角の視野の中でも複雑な動きを示すことがわかった。独立した動きをしている領域は1.5ー2分角である。既ち、1枚のtipーtilt鏡で星像ダンスの補償をできるのは木曽観測所の典型的な観測条件のもとでは2分角以内であることが分かった。また、ビデオレ-トのフィ-ドバックで補償する場合、星像サイズを約2割小さくできることがシミュレ-ションの結果判明した。