著者
橋本 秀実 伊藤 薫 山路 由実子 佐々木 由香 村嶋 正幸 柳澤 理子
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.281-293, 2011-12-20 (Released:2012-02-04)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的在日外国人女性の日本での妊娠・出産・育児の困難と、それを乗り越える方略を明らかにする。方法日本で出産、子育てを経験した外国人18名を対象に半構成的面接を行った。妊娠、出産と育児について、健康診断や予防接種などの受診状況や困ったこと、問題をどう克服したかなどについて自由に語ってもらった。逐語録から、テーマについての文脈を取り出しコード化した。コードの意味内容から類似性のあるものを集めてサブカテゴリを作り、抽象度の高いカテゴリを作成、コアカテゴリを抽出した。結果在日外国人女性の妊娠・出産・育児の困難では、≪育児の不安・ストレス≫、≪周りとのつながりの問題≫、≪社会・経済的問題≫、≪妊娠・出産・病気の不安≫、≪日本語による情報伝達困難に起因する問題≫、≪日本の保健医療についての理解の困難≫、≪出産国の選択≫の7つのコアカテゴリが、困難を乗り越える方略では≪自分で何とかする≫、≪家族に助けてもらう≫、≪友人や近所の人に助けてもらう≫、≪感情の表出≫、≪通訳の利用≫、≪日本の保健医療システムの利用≫、≪日本以外の保健医療システムの利用≫、≪やり過ごす≫の8つのコアカテゴリが抽出された。このコアカテゴリは次のように構造化できた。困難への対処方略の核は家族である。≪家族に助けてもらう≫中で≪自分で何とかする≫努力をする。受診を控えるなど≪やり過ごす≫こともあるが、十分な助けが得られれば、≪自分で何とかする≫方略へと移行することが可能である。家族で対処困難になると、直接あるいは友人や通訳の助けを得て、日本または日本以外の保健医療システムの利用を通じて専門家の助けを求めていた。結論外国人が保健医療にアクセスする際、日常の言葉以外にも、専門用語やシステムの理解といったヘルスリテラシーが必要となる。≪自分で何とかする≫女性の方略を支援するために、彼らの方略を理解し、強化する工夫が必要である。外国人女性は家族や友人などの支援を得て困難を乗り越えていたが、支援を得られにくい女性についてはネットワークづくりや保健医療従事者の積極的な介入が求められる。≪やり過ごす≫といったネガティブな方略や≪日本以外の保健医療システムの利用≫は、日本社会適応段階の途中とも考えられ、保健医療従事者は一概にその行動を否定するのでなく、不安を軽減するための方法として捉え、支援する必要がある。
著者
矢野 憲 伊藤 薫 若宮 翔子 荒牧 英治
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

医療テキストには,非文法的かつ断片化した表現が多く含まれるため利活用が進んで行われてこなかった.本研究では,文字ベースBi-LSTM-CRFにより,医療テキストから病名,症状名を抽出する事象認識器を提案し,その性能評価を行った.提案手法は事象認識(ER)と事実性判定(P/N分類)を同時に処理することで,医療テキストに記述される陽性,陰性の所見を独立した事象として抽出を行う.
著者
伊藤 薫 Wolf Kay N.
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.422-427, 2009 (Released:2011-12-29)

アメリカにおける管理栄養士(registered dietitian;RD)教育制度を学ぶため、オハイオ州立大学で研修を行っている筆者が、現在のアメリカでの教育制度と日本における制度の相違を報告する。アメリカでのRD 養成プログラムには、学外実習900 時間(2009 年度からは1 , 200 時間に延長)が組み込まれており、アメリカでは実践教育を重要視している。アメリカのRD 教育には、アメリカ栄養士会(ADA)の関連機関である2 つの組織が関わっている。RD 養成大学についてはCommission on Accreditation of Dietetic Education(CADE) が大学教育について認定、管理運営を行い、資格認定試験と卒後教育はCommission on Dietetics Registration(CDR)が行っている。認定試験の内容は学外実習で実践して学んだ内容が主となっているため、実践活動を身につけることが大学教育では必要なことであり、アメリカの高いレベルの実践教育制度は、卒業後のRD としての即戦力と社会的地位の高さを保証しているあり方へもつながる。アメリカでは学生の段階でRD の実務を多く経験できることが、将来の就職先の選択や即戦力としての実務能力の向上に非常に重要である。
著者
伊藤 薫
出版者
日本地域学会
雑誌
地域学研究 (ISSN:02876256)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.19-36, 1992-12-20 (Released:2008-10-10)
参考文献数
23
被引用文献数
1

On the study of internal migration in postwar Japan, migration between rural and urban areas has been studied rigorously. But there are quite few studies about the migration between major metropolitan areas in spite of its importance.Based on the Japanese prefectural data for 1955-90, this paper treats two major subjects. The first is to deduce the properties of migration from the actual movement between any two of three major metropolitan areas, (Tokyo, Oosaka and Nagoya major metropolitan areas). The second is to analyse the relationship between net migration of inter major metropolitan areas and regional economic differentials.The results of our analysis is summarized as follows.Firstly the proportion of inter major metropolitan migrants to all inter prefectural migrants has been increasing steadily.Secondly all net migration of each metropolitan areas has been strongly influenced by the excess of inflow to outflow of other major metropolitan areas, especialy after the first oil crisis than before.Thirdly both metropolitan/non-metropolitan per capita disposal income differentials and employee growth rate differentials have a strong positive correlation to the rate of net migration. But those differentials between Tokyo and other metropolitan areas have a weak positive correlation to the rate of net migration. On the case of the migration between metropolitan areas, it seems that employee growth rate differentials have a stronger effect to net migration rate than per capita disposal income differentials.
著者
荒牧 英治 若宮 翔子 矢野 憲 永井 宥之 岡久 太郎 伊藤 薫
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.119-152, 2018-02-15 (Released:2018-05-15)
参考文献数
15
被引用文献数
3 9

高度な人工知能研究のためには,その材料となるデータが必須となる.医療,特に臨床に関わる分野において,人工知能研究の材料となるデータは主に自然言語文を含む電子カルテである.このようなデータを最大限に利用するには,自然言語処理による情報抽出が必須であり,同時に,情報抽出技術を開発するためのコーパスが必要となる.本コーパスの特徴は,45,000 テキストという我々の知る限りもっとも大規模なデータを構築した点と,単に用語のアノテーションや用語の標準化を行っただけでなく,当該の疾患が実際に患者に生じたかどうかという事実性をアノテーションした点の 2 点である.本稿では病名や症状のアノテーションを対象に,この医療コーパス開発についてその詳細を述べる.人工知能研究のための医療コーパス開発について病名や症状のアノテーションを中心にその詳細を述べる.本稿の構成は以下の通りである.まず,アノテーションの基準について,例を交えながら,概念の定義について述べる.次に,実際にアノテーターが作業した際の一致率などの指標を算出し,アノテーションのフィージビリティについて述べる.最後に,構築したコーパスを用いた病名抽出システムについて報告する.本稿のアノテーション仕様は,様々な医療テキストや医療表現をアノテーションする際の参考となるであろう.
著者
浅野 竜太 磯田 豊 小林 直人 中村 知裕 伊藤 薫
出版者
北海道大学大学院水産科学研究院
雑誌
北海道大学水産科学研究彙報 (ISSN:24353353)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.63-76, 2020-08-24

A new type of mechanism for the generation of vertical circulation is revealed with the use of numerical experiments for the bended channel model. In the steady passage-flow experiment with a flat bottom and no bottom friction, a remarkable vertical circulation is formed only at the downside of bended corner where a negative horizontal shear flow dominates. Specifically, we call this type circulation “Negative Shear induced Vertical Circulation (NSVC)”, which is caused through the dynamical unbalance of gradient flow and the vorticity balance between the lateral vorticity advection and the sea surface divergence. A field observation was carried out around the Ooma-zaki area in the eastern Tsugaru Strait to confirm an enhanced downward flow expected by the realistic experiment including the bottom slope and friction. The spatial istributions of water temperature support the existence of this downward motion.
著者
羽藤 由美 神澤 克徳 光永 悠彦 清水 裕子 坪田 康 桝田 秀夫 永井 孝幸 ヒーリ サンドラ 竹井 智子 山本 以和子 森 真幸 内村 浩 伊藤 薫
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

学校・大学等が入試や定期考査において,それぞれのアドミッション・ポリシー,教育目標,受検環境などに応じた英語スピーキングテストを開発・実施するためのガイドライン策定を目標として,以下の(1)~(5)を完遂した。(1)京都工芸繊維大学が独自に開発し,学内で定期実施しているコンピュータ方式の英語スピーキングテストシステム(毎年約700名が受験)について,リンガフランカ(共通語)としての英語運用能力を測るテストとしての妥当性を高めるために,評定基準と採点者訓練およびオンライン採点システムを改善した。(2)上記スピーキングテストを京都工芸繊維大学の平成30年度ダビンチAO入試に導入した実績に基づき,同じ仕様のテストを学内で能力診断テストとして実施する際と入学試験の一環として運営する際の違い(公正性・公平性の担保,システムの安定性維持,リスクマネージメント,情報セキュリティーのレベル等の違い)や,入試利用の際のこれらの点に関する留意点を明らかにした。(3)京都市立工学院高校の定期考査(「英語表現II」の1,3学期末試験)において,生徒とフィリピン在住の面接・採点者をスカイプで結ぶスピーキングテストを実施した。昨年度実施分から,テスト内容の改訂(ディベートとロールプレイの組み込み),採点基準・採点者訓練の改善,効果的なフィードバックのためのマニュアル作成を行った。(4)上記(1)~(3)の遂行状況をプロジェクトのホームページを通して広く社会に公表するとともに,実践報告や,実践を通して得たデータの分析に基づくリンガフランカとしての英語能力評価(特に,採点基準と採点方法)に関する研究成果を関連学会で発表した。(5)これまでのスピーキングテスト開発・運営の実績に基づいて,2020年度から始まる民間試験の入試利用(共通テストとしての活用)の問題点を明らかにし,関連のシンポジウムやブログ,twitterで発表した。
著者
木曽 良明 宇川 和子 中村 静夫 伊藤 薫 秋田 正
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.673-676, 1980-02-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
18
被引用文献数
41 58

A thioanisole-trifluoroacetic acid (TFA) system was found to deprotect Tyr (Bzl) quantitatively at 25°within 3 hr by a push-pull mechanism without O-to-C rearrangements. This new deblocking system did not completely deprotect Ser (Bzl) and Thr (Bzl), but deprotected Lys (Z) quantitatively.