著者
相澤 卓郎 佐久間 政広
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.45-56, 2017-12-26 (Released:2019-01-28)
参考文献数
5

東日本大震災後の早い時期に,被災した民俗芸能がつぎとつぎと再開された.先行研究では,こうした祭礼や民俗芸能の再開により,被災者が直面する困難への対処がなされていることが明らかにされた.しかし,それでは説明できない現実も出現している.2012年1月3日に復活した大曲浜獅子舞は,復活後数年間,震災前より格段に多い回数の上演が実施された.それは,この獅子舞が「被災者が全国から支援をうけて民俗芸能を復活させ,復興に向けて力強く歩みを進める」という物語を背負う「復興のシンボル」として扱われ,この物語が被災地の内外において求められたからである.獅子舞保存会に殺到する上演依頼に対して,保存会会員は,獅子舞上演を「被災地支援に対するお返し」と意味づけて応えた.保存会は,中学校時代に獅子舞指導を受けた先輩-後輩,同級生たちからなる仲間集団であり,会員たちは,互いに仲間としての関係を維持するために,可能な限り上演に参加した.
著者
佐久間 政広
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.47-49, 2011-07-16 (Released:2014-02-07)
参考文献数
2
著者
佐久間 政広
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.83-104, 2017-09-14 (Released:2021-12-12)
参考文献数
9

山村が激しい過疎高齢化の波に襲われて久しい。山村に居住する高齢者たちの多くは、慣れ親しんだ近隣関係や自然環境のゆえに、長年住み慣れた地を離れない。こうした高齢者たちの生活は、他出子から種々の援助を受けて維持されてきた。さらに、他出子が高齢者に代わって集落の共同作業に出役することで、集落も維持されてきた。やがて集落に居住する高齢者たちが死亡や施設入所で欠けていくと、それも困難になる。事例とする集落では過疎高齢化が著しく、もはや居住者だけでは集落を維持することが困難である。しかし、中山間地域等直接支払制度の交付金を受け、この交付金を利用して他出子が自家の農地を維持し、集落の共同作業に参加するよううながす仕組みをつくる。また空き家となった実家家屋を維持管理するよう方向づける。このように外部の補助金、他出子の労力、さらには行政の支援といった、集落にとっての外部資源を積極的に導入することで、集落維持をはかっているのである。
著者
菊地 立 佐久間 政広 元木 靖 佐藤 信俊
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

地球温暖化防止を目指した京都議定書が2005年2月に発効した。我が国に科せられた二酸化炭素排出量の削減目標(1990年比-6%)を達成するための重要な施策として,植物の二酸化炭素吸収を組み入れ海外で植林活動を行っている。一方国内では,伝統的な屋敷林が継続的に減少しており,屋敷林が蓄積していた二酸化炭素が大気中に放出されている。この現状をふまえ,我が国の屋敷林中心地の一つである仙台平野中部を主たる対象地域として,以下のような現地調査を試みた。(1)現在の屋敷林の分布,規模,構成樹種(2)屋敷林の気候緩和機能の調査(3)屋敷林植生による大気浄化機能の調査(4)屋敷林の樹木が蓄積する二酸化炭素量の推定(5)屋敷林面積の減少(6)屋敷林を持つ農家の意識調査本研究の結果,仙台平野中部には多くの屋敷林が現存しているが,仙台市の拡大にともなう都市化の波により,過去40年間における屋敷林面積の減少が約40%に上ることが判明した。屋敷林は二酸化炭素の蓄積にとどまらず,気温や風に対する環境緩和効果および大気汚染の浄化機能も顕著であることが確認され,今後とも屋敷林を保護・育成することが重要であることは明らかであるが,住民の意識調査では高齢層は維持の方向,中年層は伐採と開発の方向と2極分化しており,今後の推移は楽観を許さない。何らかの体制的支援策が必要と思われる。