著者
氷見山 幸夫 春山 成子 土居 晴洋 木本 浩一 元木 靖 季 増民 季 増民
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

アジアにおける持続可能な土地利用の形成に向け、日本、中国、インド、極東ロシア、フィリピン、タイ、インドネシア、ミャンマーで広域の土地利用変化データファイル(オリジナル電子地図、多数の現地写真等)を作成し、土地利用の現況と変化及び関連する諸問題を明らかにした。その成果はSLUAS英文成果報告他多くの雑誌・文献等で公刊した。また国際地理学連合、日本学術会議、日本地球惑星科学連合などと連携してアジア各地と国内で多くのシンポジウム等を主催・共催・後援し、研究成果を発信し、持続可能な土地利用に関する理解の向上に貢献した。東日本大震災発災後は土地利用持続可能性の観点から深く関わり、学術会議提言に寄与した。
著者
元木 靖
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.161-178, 1999-09-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
39
被引用文献数
4 3

1970年代以降における米過剰と流通の自由化がすすむ中で, 米に対する消費者の要求は量の確保から質の向上に変わり,「うまい米指向」の時代に移った。本論では寒冷地に成立した東北日本 (北海道, 東北) の稲作が, 新しい時代環境にいかに対応しているかを見きわめ, 今後の可能性を探る一助として, 最近4半世紀間 (1970-95年) の水稲 (ウルチ) 品種の変遷について詳細な資料整理を試みた。その結果, 良食味米生産をめざした品種再編成が東北日本の南部で先行し, その後徐々に中部から北部へ進展してきたことを確認した。1990年代前半に至って, 東北に加え北海道の道央付近にまで, 良食味品種の栽培が一般的に認められるようになった。こうした新しい傾向が東北の良食味品種であったササニシキではなく, 全国的に良食味品種の筆頭とされるコシヒカリとの交配を通して実現してきたこと, および稲作の耐冷性強化にも大きな効果を発揮しつつ展開していることが地理学的に注目される。東北日本の稲作の将来に対して, 少なくとも品種的には大きな可能性が約束されつつあるといえよう。
著者
元木 靖
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

今日の「都市型社会」の形成は、農林業地域に対して労働力不足や生産者の高齢化、生産物価格等の面で深刻な問題を提起している。本研究では稲作以前からのわが国の土地利用型作物であるクリを事例として、その歴史的動向の整序と今日の実態解明をすすめた。(1)日本列島ではほぼ全国に自生するシバグリが、縄文時代以来高度経済成長期に入る頃まで、食糧や木材、薪炭材等に多面的に活用されてきた。一方、稲作導入以後畿内の古代都市周辺に大粒の丹波系クリの生産が萌芽し、藩政時代にはそれが関東周辺にも普及した。こうした丹波系のクリの栽培は、明治以降とくに昭和初期頃には果樹として注目され、戦後の高度経済成長期になると遠隔の中山間地域をはじめ全国的に増殖され、飛躍的な発展をみた。(2)しかし、高度成長終焉後の都市型社会が進展する過程で、クリ生産は一転して減少をみるようになり、今日ではその栽培地域も急速な縮小基調にある。ただし、クリ生産を持続している地域では、従来のクリ栽培のイメージを一新するような対応を取り始めていることが明らかになった。クリの低樹高栽培の技術が確立され、その方式が各地に普及したことが、大きいな特徴である。そこには、良質グリを求める実需者(菓子メーカー)の期待と生産者の課題を同時に解決する意味が込められている。(3)新しい経営の傾向として、地域により (a)低樹高のクリを機械管理する専業的クリ生産のタイプ、(b)実需者が独自にあるいは生産農家を支援するタイプ、(c)低樹高栽培を取り入れ、限界的な山間傾斜地の生産者が実需者と契約栽培するタイプ、等が見いだされた。これらのうち(c)は生産を期待されながらも、労働力流出間題が深刻で、発展は望めないかもしれない。しかし(a)と(b)の両タイプは将来の農業の展開を考える上で、重要な方向性を示唆しているように思われる。
著者
菊地 立 佐久間 政広 元木 靖 佐藤 信俊
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

地球温暖化防止を目指した京都議定書が2005年2月に発効した。我が国に科せられた二酸化炭素排出量の削減目標(1990年比-6%)を達成するための重要な施策として,植物の二酸化炭素吸収を組み入れ海外で植林活動を行っている。一方国内では,伝統的な屋敷林が継続的に減少しており,屋敷林が蓄積していた二酸化炭素が大気中に放出されている。この現状をふまえ,我が国の屋敷林中心地の一つである仙台平野中部を主たる対象地域として,以下のような現地調査を試みた。(1)現在の屋敷林の分布,規模,構成樹種(2)屋敷林の気候緩和機能の調査(3)屋敷林植生による大気浄化機能の調査(4)屋敷林の樹木が蓄積する二酸化炭素量の推定(5)屋敷林面積の減少(6)屋敷林を持つ農家の意識調査本研究の結果,仙台平野中部には多くの屋敷林が現存しているが,仙台市の拡大にともなう都市化の波により,過去40年間における屋敷林面積の減少が約40%に上ることが判明した。屋敷林は二酸化炭素の蓄積にとどまらず,気温や風に対する環境緩和効果および大気汚染の浄化機能も顕著であることが確認され,今後とも屋敷林を保護・育成することが重要であることは明らかであるが,住民の意識調査では高齢層は維持の方向,中年層は伐採と開発の方向と2極分化しており,今後の推移は楽観を許さない。何らかの体制的支援策が必要と思われる。