著者
釜野 さおり 山内 昌和 千年 よしみ 小山 泰代 布施 香奈 岩本 健良 藤井 ひろみ 石田 仁
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

性的指向と性自認のあり方におけるマイノリティが、「LGBT」と括られて取り上げられることが増えている今、性的指向と性自認のあり方に関しての信頼性のある情報が求められている。そうしたニーズに応えるために、本研究では人口学領域と性的マイノリティの研究との融合を図りつつ、人口学的な視点から性的指向と性自認のあり方(SOGI)の研究基盤を築くことを目指す。この目標に向け、 (1) SOGIに目を向けてこなかった日本の人口学において、SOGIに注目する意義とその研究の方向性を探り、(2)性的指向と性自認を取り巻く社会的状況の重要な要素である「家族」ついての実証研究を進め、(3)日本の文脈で「LGBT」の人口を社会調査で捉える方法論の検討を行い、(4) SOGIによる生活実態の統計的比較分析を可能とする調査のあり方を検討・企画する。平成28年度は、日本人口学会においてSOGIをテーマとしたセッションを企画し、5本の報告を行った。また、これまで人口学関連分野で研究を進めてきた者と、SOGIに関しての研究をしてきた者との間の相互理解を目指し、定期的に研究発表会を実施した。SOGIを扱う人口・家族研究の文献収集とそのデータベース構築の着手に加え、SOGI項目を含む海外の公的調査の事例およびマニュアルを精読し、日本での応用可能性を検討した。また日本においてSOGI項目を含めた生活実態調査を全国レベルおよび自治レベルで実施する可能性を、費用、関心・協力自治体の有無などを含む、広い視野からの情報収集を開始した。SOGIを取り巻く社会の基盤の一つである「家族」に関する研究では、家族と世帯の形、出生力の地域差、母親との同居・近居と女性の就業との関係を取り上げ、1つの事象を複数のデータに基づいて検証する環調査的分析を行い、それらの成果を特集論文として公表した。
著者
白倉 栄美 中井 美樹 与謝野 有紀 岩本 健良 米澤 彰純 岩間 暁子 持田 良和
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997 (Released:1997-04-01)

本年度は、中流階層を中心とした文化とライフスタイルの実態を解明するため、昨年度実施した川崎市における「ライフスタイルと文化に関する意識調査」(郵送質問紙調査)を中心に研究活動を推進した。研究経緯は、データ収集の最終調整を行い、データコーディング作業、データ入力を経てデータセットを作成、さらにデータクリーニング作業、コンピュータでのデータの統計解析、研究報告および検討会議を経て研究成果報告書を作成した。本研究の特徴および成果は、わが国で肥大化したといわれる中流階層〜上層の文化状況とライフスタイルとの関連を明らかにしたこと、また、中流階層の文化消費やライフスタイルの差異を個人的要因に求めるだけでなく、マクロな社会的要因である「場」の効果を測定したことにある。ライフスタイルと文化的諸実践に及ぼす社会階層の効果、家庭文化のの効果、学校効果、企業などの勤務先集団の効果等について検討した結果、主な知見として以下の点が明らかになった。1.諸文化活動を分析すると、学歴や職業などの社会的地位変数によって正統文化嗜好と大衆文化嗜好に差異がみられる。同じ社会階層であっても、出身家庭の文化資本および教育は正統文化活動を促進するよう作用する。2.正統文化と大衆文化の両方に関与する文化的オムニボア(cultural omnivore)が若い年齢層ほど増加し、社会全体としてみると文化的寛容性が高まる方向にある。3.男性と女性で文化消費に差があり、男性は大衆文化嗜好が強く、女性は正統文化嗜好が強い。4.女性の大衆文化化は、配偶者の文化消費傾向からの影響で始まる割合が多い。5.社会関係において文化的境界を用いる人は高学歴層に多く、文化資本と強い関連を示す。6.学校効果と企業効果が顕在化しやすい文化側面が存在する。