著者
佐伯 宏樹 原 彰彦 清水 裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

イクラやタラコの喫食によって起きる魚卵アレルギーは、日本の食習慣と密接に関わる食物アレルギーである。本研究では、魚卵中のアレルゲンタンパク質の同定と構造決定、魚卵間のアレルゲン交差性の調査を試みた。得られた成果は次の通りである。(1)11魚種(シロザケ、イトウ、ニジマス、アメマス、オショロコマ、スケトウダラ、アサバカレイ、ババカレイ、ホッケ、シシャモ、カペリン)の卵黄タンパク質とイクラ・アレルギー患者血清との反応を調べたところ、いずれの卵黄中にもシロザケβ'-c抗体と反応するタンパク質が含まれており,アレルギー患者血清中の特異IgEはこの成分と反応していた(サケ科魚類では100%、スケトウダラ38%、アサバカレイ69%、ババカレイ77%、ホッケ85%、シシャモ38%、カペリン23%の患者血清で反応が観察された)。(2)また、リポビテリン軽鎖についてもIgE反応の交差性が見られた。(3)サケ科魚種間とタラコ中の主要アレルゲンは,いずれもβ'-c(および類似構造成分)であった。(4)サケ科魚卵間、およびイクラとタラコ間には、いずれもβ'-cを介したアレルゲン交差性が見いだされた。(5)ニジマス・ビテロジェニンのアミノ酸配列を鋳型として、シロザケβ'-c(2成分のうち16K Da成分)とタラコのβ'-c(3成分のうち17K Da成分)の一次構解析をおこなった。また,シロザケ肝臓からmRNAを抽出し、ニジマス・ビテロジェニンの塩基配列を基にプライマーを作製してPCRを行ない,シロザケ・β'-cをコードするcDNAを得た。これらの結果両β'-cアミノ酸配列の60-70%を決定した。以上の学術的知見は、「魚卵アレルギー」の理解と食事指導における有益な情報である。
著者
山根 善治 武宮 重人 川瀬 直樹 佐伯 宏
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.224-227, 1997-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
8
被引用文献数
3 5

清酒中での脂肪酸の閾値を, エタノール濃度15%(v/v) のホワイトリカーをべースにして測定した結果, 酢酸39.3ppm, 酪酸2.7ppm, カプロン酸2.3ppm, カプリル酸2.4ppm, カプリン酸3.1ppmとなった。また, 酢酸, 酪酸は酸臭, カプロン酸, カプリル酸, カプリン酸は油臭と感じる傾向にあることが分かった。清酒に脂肪酸を添加したときの官能評価を4種類の清酒をべ一スにして行った結果, 酢酸, カプリル酸, 酪酸, カプロン酸, カプリン酸の順に評価が悪くなることが分かった。酢酸を60ppm添加しても無添加のものと有意な差はなく, 官能評価には影響しないことが分かった。逆に酢酸以外は4ppm又は8ppm添加すると無添加のものと有為な差が生じ, 官能評価にマイナスの影響を与えることが分かった。酢酸, 酪酸は酸臭, カプロン酸, カプリル酸, カプリン酸では油臭, ほこり臭, ろ過臭, 袋香という指摘が多かった。最後になりましたが, 官能評価にご協力いただきました各審査員に深謝します。
著者
山崎 健一朗 和田 浩卓 桜田 伊知郎 門之園 一明 佐伯 宏三 Kenichiro YAMAZAKI Hirotaka WADA Ichiro SAKURADA Kazuaki KADONOSONO Kozo SAEKI 佐伯眼科クリニック 佐伯眼科クリニック 佐伯眼科クリニック 横浜市立大学附属市民総合医療センター眼科 佐伯眼科クリニック Saeki Eye Clinic Saeki Eye Clinic Saeki Eye Clinic Yokohama City University Medical Center Department Of Ophthalmology Saeki Eye Clinic
雑誌
横濱醫學 = The Yokohama medical journal (ISSN:03727726)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.197-200, 2005-05-31

背景:脈絡膜破裂を伴った外傷性黄斑円孔に対し硝子体手術を行った一例を経験したので報告する.症例と所見:26歳女性,うちあげ花火が直接右眼にあたり鈍的外傷となった.初診時の矯正視力は0.01であり,白内障,前房出血,黄斑円孔,脈絡膜破裂に伴う黄斑下出血と網膜浮腫がみられた.3週間後黄斑円孔は拡大した.6週後の蛍光眼底造影にて黄斑部に及ぶ網膜循環障害を認めた.受傷6週間後にインドシアニングリーンを用いた内境界膜剥離術を行った.黄斑下手術は行わなかった.結果:術後黄斑円孔は閉鎖し,視力は0.5に改善した.重篤な術後合併症は見られなかった.結論:脈絡膜破裂のある外傷性黄斑円孔に対しても硝子体手術は有効であると考えられた.
著者
佐伯 宏幸 河合 克尚 溝川 賢史 横家 正樹 皆川 太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.443, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】人工炭酸泉浴は炭酸ガスの経皮的侵入によって血管拡張と血流増加、組織酸素分圧の上昇、微小組織循環改善などの生理的作用があると報告されている。末梢循環障害による足部潰瘍では切断に至る症例も稀ではない。人工炭酸泉浴はそれら末梢循環障害に対する保存的治療の手段として幅広く使用されている。当院においても人工炭酸泉浴の導入により良好な治療成果が得られた有効例を経験したので報告する。【治療内容】人工炭酸泉は三菱レーヨン・エンジニアリング社製人工炭酸泉製造装置を用いて、濃度約1000ppm、湯温37から38℃とし、浸漬部は下腿局所浴とした。【症例紹介1】48歳、維持透析歴7年の女性。2002年3月より右第1から4趾尖部の潰瘍増悪と疼痛のため歩行困難となり当院入院となる。潰瘍部は黒色壊死にて母趾が約20×22mm、第2から4趾も広範であった。下肢血管造影にて近位から遠位動脈まで高度狭窄病変を呈しており血行再建術不適応、薬物療法も効果不十分の状態であった。人工炭酸泉浴は毎日2回10分間実施した。開始から1ヶ月後、潰瘍の縮小と疼痛の緩和を認め、3ヶ月後には潰瘍と疼痛の消失により独歩にて退院となった。【症例紹介2】67歳、糖尿病、高血圧を有する女性。2002年4月より右踵部に潰瘍が出現し、疼痛の増悪にて歩行困難となり当院入院となる。潰瘍部は25×13×10mmであった。下肢血管造影にて両下腿動脈にびまん性高度狭窄病変を認め、血行再建術は困難と判断された。入院後から人工炭酸泉浴を毎日2回10分間実施したところ、約1ヶ月後には潰瘍の縮小を示し、3ヶ月後には潰瘍および疼痛の消失にて独歩可能となり退院となった。【考察】下肢動脈の慢性閉塞性疾患の根本的治療には血行再建術、薬物療法、理学療法があり、末梢循環障害による潰瘍は循環が改善すれば、潰瘍は軽快すると考えられる。人工炭酸泉浴による理学的治療は、組織循環の30%増加を認め、約4週の局所浴により効果が表れるなど、臨床的にも有効な末梢循環障害の基本的治療であり、長期的に見ても有望なものとされている。今回の症例では、いずれも血行再建術不可、薬物療法も効果不十分であったため、人工炭酸泉療法を行い、足部潰瘍および疼痛が消失し、退院時には独歩可能までになった。潰瘍を合併した虚血肢において人工炭酸泉療法は有用な理学療法の一手段と考えられた。
著者
岩野 君夫 三上 重明 福田 清治 椎木 敏 島田 豊明 小幡 孝之 木崎 康造 新里 修一 荒巻 功 佐伯 宏
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.495-498, 1986-07-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
9

南九州の焼酎製造場で実際に使用されている白麹を集め, 各種酵素活性の調査を行ったところ以下の知見を得た。1. 焼酎白麹の各種酵素バランスを清酒麹と較べてみると, α-amylaseが極端に低く, glucoamylaseとacid carb0xypeptidaseはほぼ同程度, acidprotease, transglucosidaseが極めて高くかつ生でん粉分解力を有するのが特徴である。焼酎白麹と泡盛麹の酵素活性を較べてみると, 活性のバランスはほぼ同様であるが, 泡盛麹は全体的にやや活性が低い。2. 焼酎白麹は調べた6種類の酵素活性とも変動率が17~40%と大きく, 最大値と最小値を較べると約2.7倍の大きな差があつた。3. 米麹と麦麹を較べると, 麦麹は6種類の酵素活性のすべてが低く, 特にα-amylase, transgnucosidase, acid proteaseに大きな違いが認められた。終りに臨み, 本実験に御協力をいただいた当研究室, 甲斐文男君, 未広康夫君に, 御指導を賜わりました当試験所中村欽一所長に深謝致します。
著者
山崎 健一朗 和田 浩卓 桜田 伊知郎 門之園 一明 佐伯 宏三
出版者
横浜市立大学
雑誌
横濱醫學 (ISSN:03727726)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.197-200, 2005-05-31

背景:脈絡膜破裂を伴った外傷性黄斑円孔に対し硝子体手術を行った一例を経験したので報告する.症例と所見:26歳女性,うちあげ花火が直接右眼にあたり鈍的外傷となった.初診時の矯正視力は0.01であり,白内障,前房出血,黄斑円孔,脈絡膜破裂に伴う黄斑下出血と網膜浮腫がみられた.3週間後黄斑円孔は拡大した.6週後の蛍光眼底造影にて黄斑部に及ぶ網膜循環障害を認めた.受傷6週間後にインドシアニングリーンを用いた内境界膜剥離術を行った.黄斑下手術は行わなかった.結果:術後黄斑円孔は閉鎖し,視力は0.5に改善した.重篤な術後合併症は見られなかった.結論:脈絡膜破裂のある外傷性黄斑円孔に対しても硝子体手術は有効であると考えられた.