著者
廣畑 俊成
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.568-575, 2021-05-01

慢性進行型神経ベーチェット病では,認知症様の精神神経症状や小脳性運動失調が徐々に進行し,寝たきりになる。脳脊髄液インターロイキン6(IL-6)が持続的に異常高値を示すとともにMRIで脳幹部の萎縮を認める。診断上は,不全型以上のベーチェット病の診断基準を満たすことが必須である。治療ではステロイドやアザチオプリン/シクロホスファミドは無効で,まずメトトレキサートによる治療を行い,効果不十分な場合はインフリキシマブを追加併用する。
著者
廣畑 俊成
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.288-295, 2015-12-30 (Released:2016-03-31)
参考文献数
11

神経ベーチェット病は急性型と慢性進行型の2つに分類される.急性型は急性ないし亜急性に発症した髄膜脳炎の形をとり,髄液の細胞数が著明に上昇し,時にMRIのフレア画像で高信号域を認める.一方,慢性進行型では,認知症様の精神神経症状や失調性歩行が徐々に進行し,患者はついには廃人同様になってしまう.この病型では,髄液中のIL-6が持続的に異常高値を示すとともにMRIでは脳幹部の萎縮を認める.稀に両者が合併することもあることから(acute on chronic),両者の病態生理が異なることがわかる.慢性進行型の発症に先立って急性型の発作を起こしている場合が少なくないことから,急性型の発作がおさまった段階で,一度髄液IL-6をチェックしておくことが推奨される.シクロスポリンを投与している患者の約20%に急性の炎症性神経病変を生じるが,これは急性型神経ベーチェット病と同一であると考えられる.慢性進行型では,男性,喫煙,HLA-B51の頻度が高い. 急性型の発作急性期の治療の中心はステロイドである.急性型の発作予防には,コルヒチンの有用性が示唆されている.シクロスポリンによって誘発された急性型ではシクロスポチンの中止でほぼ完全に再発は抑制される.一方,慢性進行型ではまずメトトレキサートによる治療を行うべきであり,効果不十分な場合は,なるべく早くインフリキシマブの追加併用を行う必要がある.ステロイドの大量療法やアザチオプリン/シクロフォスファミドは無効である.
著者
廣畑 俊成
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.224-230, 2018-09-30 (Released:2019-06-01)
参考文献数
11

全身性エリテマトーデス(SLE)における中枢神経病変(いわゆる中枢神経ループス)の中でも精神症状(ループス精神病)は診断に苦慮することが少なくない.ループス精神病については,その病態形成に髄液中に存在する神経細胞に対する自己抗体が深く関与することが近年とくに注目されている.すなわち,NMDA受容体のNR2AとNR2Bに共通する部分と反応する抗体(抗NR2抗体)は,ループス精神病の髄液で有意に上昇し,その中でも特にacute confusional state(ACS)の患者で著明な高値を示すことが明らかになった.最近我々は,髄液中の抗Sm抗体がやはりACSの患者で上昇していること,さらに抗Sm抗体が神経細胞とも結合し,抗神経細胞抗体として直接ニューロンに障害を及ぼす可能性があることを明らかにした.したがって,抗Sm抗体や抗NR2抗体は,ループス精神病の重症度を反映するsurrogate markerであると考えられる.これらの抗体が髄液中で上昇する機序としては,中枢神経内での産生よりもQ albuminの上昇に反映される脳血液関門の破壊による流入が重要であることが証明されている.今後は,この脳血液関門の異常が惹起される機序について解明してゆくことが重要である. 一方,髄液中のIL-6は,ループス精神病でもneurologic syndromesのいずれでも上昇するが,前者の方が高い傾向を示す.さらにループス精神病の中でも,ACSの患者ではそれ以外の精神症状の患者に比して,髄液中のIL-6は有意に高く,前述した抗NR2抗体と同様にループス精神病の重症度のsurrogate markersとなると考えられる.
著者
吉田 秀 遠藤 平仁 田中 淳一 飯塚 進子 木村 美保 橋本 篤 田中 住明 石川 章 廣畑 俊成 近藤 啓文
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.302-309, 2008-12-30 (Released:2016-11-30)
参考文献数
26

A woman of 50 years of age who had a 13-year history of hypothyroidism was diagnosed with systemic lupus erythematosus (SLE) with butterfly rash, leukopenia, positivity of antinuclear antibody, anti-DNA antibody and anti-Sm antibody. Two years later, she developed nephritis (WHO type IV) and remitted with corticosteroid pulse and intermittent intravenous cyclophosphamide pulse therapy (IVCY). Four years after the onset of SLE, she relapsed with proteinuria and leukopenia when she was taking 9 mg/day of prednisolone (PSL) but she stopped all the medication of her own accord. Four months passed without any therapy, she was admitted to our hospital with disturbance of consciousness and anasarca. Laboratory findings showed pancytopenia (WBC 1300/μl, RBC 233×10⁴/μl, Hb6.9g/dl, Plt3.6×10⁴/μl), aggravation of lupus nephritis and hypothyroidism. Chest X-ray and ultrasonography demonstrated pleural and pericardial effusion and the absence of hepatosplenomegaly. She was also diagnosed with myelofibrosis upon bone marrow inspection. Three instances of corticosteroid pulse therapy, oral corticosteroid (PSL was tapered from 50 mg/day) and supplement therapy of levothyroxine improved every symptom and pancytopenia. The second bone marrow biopsy showed reduced fibrosis and recovery of bone marrow cells. These findings implied the secondary myelofibrosis caused by SLE because the myelofibrosis came along with aggravation of SLE and corticosteroid therapy was effective. This is a rare case of SLE in which myelofibrosis improved by high-dose corticosteroid therapy, which was confirmed by bone marrow biopsy and suggests the pathogenic mechanisms for myelofibrosis.
著者
東野 俊洋 高山 陽子 小川 英佑 星山 隆行 東野 紀子 相原 智子 和田 達彦 永井 立夫 廣畑 俊成
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.752-755, 2013-11-20 (Released:2015-02-18)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

We report herein on a 52-year-old Japanese woman with acute pericarditis and glomerulonephritis associated with human parvovirus B19 infection, who had no significant medical history. The patient was admitted for progressive edema and upper abdominal pain. On physical examination, she had hypertension, generalized edema and upper abdominal tenderness. Urinalysis revealed protein (1+), and occult blood (±), with cellular casts. Echocardiography revealed pericardial effusion measuring 3-9mm in diameter. A serological test showed elevation of serum IgM antibodies for parvovirus B19. At the end of two weeks, generalized edema and glomerulonephritis improved spontaneously, and pericardial effusion was resolved three weeks after admission. This case would appear to be a very rare case indicating a direct relationship between human parvovirus B19 infection and acute pericarditis in a healthy adult patient.
著者
吉尾 卓 倉沢 和宏 出井 良明 岡本 完 廣畑 俊成 簑田 清次
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1.CNSループス出現頻度の検討(栃木県モデル)栃木県3医療機関で前向きに3年間、年度毎のSLE患者数、CNSループス発症頻度と症状内訳を調査研究した。SLE登録患者は開始時719例、終了時823例、栃木県人口に対するSLE患者有病率は0.041%であった。10年度12例、11年度16例、12年度15例がCNSループスの診断を受け、半数以上がSLE発症直後に出現し、症状内訳は約7割がループス精神病であった。2.CNS ループス診断に有用なCSFcytokine/chemokine (cy/ch)の検討SLE患者でCSFと血液採取が同時に行われた52例(CNSループス陽性群30例、陰性群22例)のCSFと血清の28種類cy/ch測定を行った。陽性群のCSFIL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、G-CSF濃度が血清の各々に比較して高値を示し、陽性群と陰性群でのこれらCSF濃度比較検討では陽性群が有意に高値を示した。特にIL-6の有意差が最も大きく、CSF IL-6濃度測定がCNSループスの診断に最も有用で