著者
八ッ塚 一郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.170-179, 2014

Changes in the usage of the verb "ijimeru" (to bully) and the noun "ijime" (bullying) in Japanese newspaper articles were investigated. Full-text searches and postpositional particle analysis were performed on issues of three major Japanese newspapers published between 1987 and 2011. The passive form of ijimeru (to bully) was used much more often than was the active form during the entire period investigated. During several specific years, the noun, ijime (bullying), appeared as a subject very frequently, but this trend was not consistent, and the number of articles containing this word decreased in most of the other years. Ijime (bullying) refers to an action that occurs independently of any particular actor. As such, it would be expected to appear frequently during any period of time. However, the word is construed to refer to suffering endured by an unlucky passive victim or to rare events such as natural disasters. The dissociation of the denotation from the actual usage of ijime (bullying) as well as the use of the term ijime (bullying) more generally are discussed from the perspective of social representations.
著者
八ッ塚 一郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.146-159, 2008 (Released:2008-03-19)
参考文献数
25

阪神・淡路大震災(1995)を契機として発生し分離・変容を遂げた,被災地におけるひとつのボランティア活動の系譜を報告した。さらに,社会的表象論を援用してこの事例を検討し,震災を契機とする社会変動の構図と,それに対してボランティア実践が持つ意義とを考察した。①阪神大震災地元NGO救援連絡会議,②震災・活動記録室,③震災しみん情報室,④震災・まちのアーカイブ,⑤市民活動センター神戸,という一連の団体は,被災地における情報の交換や伝達,記録資料の保存など,記録に関わるボランティアとしてその活動を展開してきた。被災者の支援と被災体験の継承を企図して開始された記録活動は,復興に伴う被災地域の変化のなかで一時その目的を喪失し停滞に陥った。その後,団体の分裂と目的の特化により,活力を回復し現在に至っている。震災復興という状況における,記録活動,および,その変遷の意味を検討した。あわせて,社会変動へとつながる実践活動のあり方についても考察を行った。
著者
楽木 章子 藤井 厚紀 東村 知子 八ッ塚 一郎
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.149-155, 2018-03-12

養子、養親、および養子の実父母に対して学生が有するイメージに焦点をあて、学生が養親当事者と交流することによって、そのイメージがどのように変化したかを、当事者との交流前と交流後のアンケート調査を比較することを通して明らかにした。分析の結果、①養子の実父母についての批判的なイメージが同情的なイメージに変化すること、②養子についての「かわいそうで心配な」イメージが減少し、これに代わって「その他(自由記述)」の回答が顕著に増加することが見出された。また自由記述の回答の増加を、養子に関するイメージの多様化として捉え、単語の出現頻度、新出単語、単語同士の連関に着目して再分析した結果、「普通」という単語の出現、および、「普通→子ども」「普通→家庭」という連関が新たに生じていることが見出された。このことから、当事者との交流は、学生に養子縁組家庭を身近なイメージをもたらす効果があることが明らかになった。This paper focused on stereotypes of adoptive family in Japan, i.e. adoptive parents, adopted children, and their birth parents. An adoptive mother was invited to talk about her experience to University & College student in 5 classes. The effect of the talk was examined by comparing the pre- and post-class questionnaires. The results revealed that (1) negative images of birth parents changes to sympathetic ones, (2) free description about adopted children in questionnaire significantly increases contrary to decreased pity stereotypes. Focusing of the words in free description, the word "ordinary '" was newly appeared and the word "ordinary" and "children/family" were linked together. It was found that the tales by an adoptive mother made the students feel closer to adopted families.
著者
楽木 章子 東村 知子 八ッ塚 一郎
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.25, pp.75-85, 2019-03-12

家族関係の多様化にも関わらず、今なお、大多数の日本人にとって、「家族とは血縁で結ばれた親子を基本にする」という直結規範(産むことと育てることを直結させる家族観)が、その根底にある。この家族観は、「血縁のない親子をも認める」という分離規範(産むことと育てることの分離を是認する家族観)と対立し、養子縁組家庭の存在を意識的・無意識的に疎外している。本研究では、圧倒的多数派(直結規範)による支配的言説と、これに対する圧倒的少数派(分離規範)の対抗言説を言説領域ごとに検討する。具体的には、(1)学校という空間における支配的言説とその対抗言説、(2)実父母に対する支配的言説とその対抗言説、(3)身近な人々による支配的言説とその対抗言説、(4)メディアによる支配的言説と対抗言説を取り上げ、これらを具体的な事例に即して検討する。
著者
八ッ塚 一郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.146-159, 2008
被引用文献数
1

阪神・淡路大震災(1995)を契機として発生し分離・変容を遂げた,被災地におけるひとつのボランティア活動の系譜を報告した。さらに,社会的表象論を援用してこの事例を検討し,震災を契機とする社会変動の構図と,それに対してボランティア実践が持つ意義とを考察した。①阪神大震災地元NGO救援連絡会議,②震災・活動記録室,③震災しみん情報室,④震災・まちのアーカイブ,⑤市民活動センター神戸,という一連の団体は,被災地における情報の交換や伝達,記録資料の保存など,記録に関わるボランティアとしてその活動を展開してきた。被災者の支援と被災体験の継承を企図して開始された記録活動は,復興に伴う被災地域の変化のなかで一時その目的を喪失し停滞に陥った。その後,団体の分裂と目的の特化により,活力を回復し現在に至っている。震災復興という状況における,記録活動,および,その変遷の意味を検討した。あわせて,社会変動へとつながる実践活動のあり方についても考察を行った。<br>
著者
八ッ塚 一郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.170-179, 2014-03-17 (Released:2017-02-28)

Changes in the usage of the verb "ijimeru" (to bully) and the noun "ijime" (bullying) in Japanese news-paper articles were investigated. Full-text searches and postpositional particle analysis were performed on issues of three major Japanese newspapers published between 1987 and 2011. The passive form of ijimeru (to bully) was used much more often than was the active form during the entire period investigated. During several specific years, the noun, ijime (bullying), appeared as a subject very frequently, but this trend was not consistent, and the number of articles containing this word decreased in most of the other years. Ijime (bullying)refers to an action that occurs independently of any particular actor. As such, it would be expected to appear frequently during any period of time. However, the word is construed to refer to suffering endured by an unlucky passive victim or to rare events such as natural disasters. The dissociation of the denotation from the actual usage of ijime (bullying) as well as the use of the term ijime (bullying) more generally are discussed from the perspective of social representations.
著者
八ッ塚 一郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.103-119, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

日本社会における「ボランティア」と「NPO」の普及・興隆という現象を,社会的現実の生成と変容のプロセスとみなし,社会的表象論に依拠してその機制を検討した。各々の語を含む新聞記事の量の経年的変化を検討したところ,いずれの語も記事量を増大させていた。さらに,各々の語について,助詞を付して用いられる比率を算出する「助詞分析」を試みた。ボランティアは,阪神大震災以前には高かった主語としての用法の比率を,震災後には相対的に低下させていた。一方,NPOでは,主語としての使用比率は一貫して高かった。このことから,NPOは,生成の渦中にあるものの,社会的現実としては未だ単調であり,生活世界にとって疎遠であることが示唆された。それに対しボランティアは,震災を契機にその多層性を確立し,豊かな意味をもつ社会的現実として,生活世界の細部へと浸透しつつある。このことは記事内容に関する分析によっても支持された。2つの社会的現実について今後の変容可能性を展望するとともに,新聞記事を活用した分析技法について,社会的表象論に基づく展開の方向性を考察した。
著者
八ッ塚 一郎
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育学部紀要 (ISSN:21881871)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.123-132, 2015-12-18

「いじめ」について語れば語るほど、問題の本質が遠ざかり、その解決がいっそう困難となる、言説のもたらす逆説について検討する。本稿では「いじめ」現象の記述と把握、および、マクロな言説流通の2段階に分けて整理する。特に「いじめ」言説がもたらす効果、その逆説に焦点を当てる。
著者
八ッ塚 一郎
出版者
奈良大学総合研究所
雑誌
総合研究所所報 (ISSN:09192999)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.287-288, 2000-03

1995年の阪神・淡路大震災において興隆をみた災害救援ボラソティア活動は、その後の日本社会に対して深甚な影響を与えた。政策担当者が、災害救援のみならず、福祉、国際交流、人権擁護、政策提言等々の広範な領域にわたって、市民の力としてのボラソティアの活用とその活性化を謳うようになったのは、もとより80年代以降のNGOの影響力拡大という動向もあったものの、直接的には阪神大震災を契機としてのことである。筆者は、阪神大震災の発災以来、直接被災地に身を置きボラソティア活動に参加することを通じて、この大きな変動過程を調査してきた。この調査活動を通じて、筆者は、災害救援活動に従事したボラソティア団体が直接残した、記録、資料名鑑類を収集してきた。これら集積した資料とあわせ、特に今回は、文書的な素材を対象に、社会心理学的な分析を試みた。すなわち、筆者が年来理論的研究に従事している、社会心理学における社会的構成主義の動向、具体的には社会的表象の理論に依拠して、災害救援ボラソティアという社会現象を、日本社会の変容過程のなかにおける、新しい社会的現実の構成過程として把握することを試みた。この試みは、同時に、社会的構成主義の考え方に基づいた具体的研究に関する、新しい内容分析技法の確立という側面をも含んだものである。