著者
中下 留美子 鈴木 彌生子 林 秀剛 泉山 茂之 中川 恒祐 八代田 千鶴 淺野 玄 鈴木 正嗣
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.43-48, 2010-06-30
参考文献数
20

2009年9月19日,乗鞍岳の畳平(岐阜県高山市)で発生したツキノワグマ(<i>Ursus thibetanus</i>)による人身事故について,加害個体の炭素および窒素安定同位体比による食性解析を行った.体毛の炭素・窒素安定同位体比は,他の北アルプスの自然個体と同様の値を示した.さらに,体毛の成長過程に沿って切り分けて分析を行った結果についても,過去2年間の食性履歴において残飯に依存した形跡は見られなかった.当該個体は,観光客や食堂から出る残飯等に餌付いた可能性が疑われていたが,そのような経歴の無い,高山帯を生息圏の一部として利用する個体である可能性が高いことが明らかとなった.<br>
著者
伊吾田 宏正 松浦 友紀子 八代田 千鶴 東谷 宗光 アンソニー デニコラ 鈴木 正嗣
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.103-109, 2017 (Released:2017-07-11)
参考文献数
13
被引用文献数
2

2014年の鳥獣保護管理法の改正により,条件付きでニホンジカ(Cervus nippon)の夜間銃猟が可能となったが,実施にあたっては,入念な計画,戦略,戦術が不可欠であり,無計画,無秩序な夜間銃猟はシカの警戒心を増大させ,むしろ捕獲を困難にする可能性が懸念される.そこで,効果的な夜間銃猟実施のための基礎情報を収集することを目的に,夜間のシカ狙撃に多数の実績を持つホワイトバッファロー社において,夜間を含む狙撃の実射訓練に参加した.2016年8月5日から7日まで,3日間でのべ約10.0時間の射撃場における射撃訓練及び試験,のべ約4.5時間の移動狙撃訓練コースにおける射撃訓練,のべ約4.5時間のシカ実験区におけるシカ狙撃実習,のべ約2.5時間の主に装備に関する室内講義,のべ約1.5時間以上の質疑応答を含む,合計約23時間以上の訓練を受けた.サウンドサプレッサー,光学スコープを装着したヘヴィーバレルの5.56 mm口径のライフルを用いて,100 m以下の様々な距離の標的およびシカを狙撃した.夜間狙撃はシカ管理の最終手段であり,射手はシカ個体群の警戒心を増大させないように,群れを全滅させることが求められる.そのためには,群れの全てのシカの脳を迅速に狙撃すべきであるが,それには徹底的な訓練が必要である.今後,我が国で夜間銃猟を安全かつ効果的に推進していく上で,捕獲従事者に高度な射撃技能ならびに野生動物管理に関する総合的な知識・技術を修得させるためのプログラムの構築が不可欠である.
著者
奥村 栄朗 藤井 栄 森 一生 八代田 千鶴 金城 芳典
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

森林総研と徳島県では、再造林地でのシカ被害軽減のため、皆伐跡地における集中捕獲技術の開発を試みていて、皆伐跡地のシカによる利用実態を把握するため、糞粒法と自動撮影カメラによるモニタリングを行った。 2014年春、徳島県つるぎ町の皆伐跡地2ヶ所(2013〜14年伐採、約4ha)を捕獲試験地および対照試験地に設定した。糞粒法調査は、各試験地周囲の林内、および捕獲試験地の周辺地域(1.5〜3km範囲の4地点)で行い、シカの利用頻度指標としてプログラムFUNRYU(岩本ら 2000)による生息密度推定値を用いた。自動撮影カメラは、7月末から試験地の林縁に各15台を設置した。 糞粒法の結果は、試験地周囲が31頭/km<sup>2</sup>、周辺地点は15頭/km<sup>2</sup>で、皆伐跡地の利用頻度が高かった。自動撮影カメラでは、夏〜秋には出現頻度が高く、日没前の出現もあり、給餌による日中の誘引が可能と考えられたが、12月初めに記録的大雪があり、以後、出現頻度が大幅に低下するとともに、日中の出現がほとんど無くなった。その状況で2〜3月に給餌誘引による捕獲(狙撃および囲いワナ)を試みたが不成功に終わった。 講演では、冬季の出現低下の要因を考察し、今年度の状況についても報告する。
著者
八代田 千鶴 森元 萌弥 中須 真史 岡本 宏之 鈴木 正嗣
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

森林におけるシカによる被害防止のためには、捕獲による個体数管理も重要である。そこで本研究では、植栽地での捕獲実施によるシカの出没状況への影響を検討した。三重県多気郡大台町内のパッチディフェンスを設置した広葉樹植栽地(3.2ha)において調査を実施した。2012年度(以下、12年)および2013年度(以下、13年)の2年間実施し、両年とも調査期間は11月~4月とした。植栽地内に設置した自動撮影カメラを用いてシカの出没状況を記録し、12月および2月に2週間ずつ給餌を行った。捕獲は12年のみ実施し、給餌期間中に誘引狙撃法により3回実施した。また、植栽地内および周辺の林内に固定コドラートを設置し、1カ月あたりの平均糞粒数(個/m<sup>2</sup>)を測定した。シカの出没頻度は、給餌期間中に増加したことから、給餌によりシカの出没を誘導できることが確認できた。12年の捕獲では、合計8頭のシカを捕獲した。実施前の平均糞粒数は、林内では0.5個以下であったが、植栽地内では約7.5個と多かった。実施後における植栽地内の平均糞粒数は実施前の半分に減少し13年も同水準であったことから、捕獲により植栽地内へのシカの出没頻度を減少させる一定の効果があると考えられた。
著者
八代田 千鶴 小泉 透
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.128, 2017

<p>森林におけるシカによる被害は、林業への直接的な被害だけでなく森林生態系にも深刻な影響を及ぼしている。被害防止のために、個体数管理を目的とした様々な捕獲技術が開発されているが、これらの技術は給餌による誘引を利用したものが多い。そこで本研究では、給餌による誘引効果と下層植生との関連について検討した。静岡県伊豆半島中央部に位置する伊豆森林管理署管轄の国有林内において調査を行った。調査時期は、夏季(2014年9月)、秋季(2014年10-11月)、冬季(2015年1-2月)、春季(2015年5月)とした。調査開始前に、植生調査(階層毎の植被率)、植物現存量調査(下層植物の刈取)を行い、その後1カ月間誘引調査(給餌場へのシカ出没状況)を行った。草本層の植被率は、広葉樹林で低く人工林で高かった。同様に、植物現存量も人工林で多い傾向にあったが、シカの不嗜好性植物が優占していた。秋季から冬季にかけて全ての調査区で完食されており、不嗜好性植物の現存量は誘引効果に影響しないと考えられた。夏季および春季は調査区によって傾向が異なったことから、この時期は現存量だけでなく植物種構成など他の要因の影響も大きいと考えられた。</p>