著者
沼倉 茜 吉川 沙耶花 上條 篤 松田 帆 新藤 晋 池園 哲郎 加瀬 康弘 神山 信也 伊藤 彰紀 大澤 威一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.2, pp.134-138, 2018-02-20 (Released:2018-03-07)
参考文献数
15

拍動性耳鳴に対しては, 器質的疾患の存在を疑う必要がある. 今回われわれは, 拍動性耳鳴を主訴に来院し, 横- S 状静脈洞部硬膜動静脈瘻と診断された1例を経験した. 拍動性耳鳴の診断には頸部血管の圧迫による変化と聴診が重要である. 硬膜動静脈瘻のスクリーニングには脳 MRA が優れている. しかし, 脳疾患の MRA 診断においては脳主幹動脈領域のみを関心領域とした MIP 画像が用いられることが多く, 外頸動脈系や静脈洞が関与する硬膜動静脈瘻は見落とされる可能性がある. したがって, 見落としを避けるには, MIP 画像のみならず MRA の元画像を確認することが重要である. 硬膜動静脈瘻は根治が期待できるため見落とさないことが重要である.
著者
中野 光花 篠原 宏 清水 啓成 松田 帆 池園 哲郎
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.465-471, 2021 (Released:2022-06-25)
参考文献数
13

外リンパ瘻はあぶみ骨直達外傷や鼻かみ等により外リンパ腔と中耳や頭蓋内の間に瘻孔が生じ,めまいや難聴をきたす疾患である.我々は当院を受診した急性感音難聴症例,くり返す難聴・めまい症例全例,計121例125耳にcochlin-tomoprotein(CTP)検査を行い,CTP陽性例がどの程度存在するか検討した.全症例に詳細な問診を行って,診断基準に従い外リンパ瘻を起こす誘因のある症例を外リンパ瘻疑い,誘因の無い症例は特発性症例とした.CTP陽性症例は全125耳中,外リンパ瘻疑い27耳中の4耳のみで,外傷によるカテゴリー1の3耳と内因性圧外傷によるカテゴリー3の1耳であった.特発性症例98耳は全て陰性であった.高齢者は蝸牛窓膜などの内耳構造が脆弱であるとの報告もあるが,60歳以上の高齢者の特発性例51耳は中間値の1耳を除き,全て陰性であった.以上より,急性感音難聴やめまい症例の中で外リンパ瘻を疑う明らかな誘因のない特発性症例では外リンパ瘻の可能性は低いと考えられた.
著者
坂本 圭 小渕 千絵 城間 将江 松田 帆 関 恵美子 荒木 隆一郎 池園 哲郎
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.92-98, 2014

要旨: 人工内耳装用者 (以下CI装用者) の語音聴取における発話速度の影響と, 聴取能を補うための休止区間挿入の効果について検討した。対象は健聴者10名, CI装用者13名であり, 通常の発話速度 (以下, 基準文) を1倍速とし, これに対して2段階に倍速にした音声 (1.5倍速, 2.0倍速, 以下倍速文) の聴取成績を分析した。また, 各倍速音声に休止区間を文節, ランダムの2種の方法で挿入しその効果を実験的に検討した。この結果, 両対象者共に発話速度が速くなるにつれて有意に正答率の減少がみられた。特にCI装用者で顕著であり, 2.0倍速ではほとんどのCI装用者が聴取困難となった。また, 休止区間挿入の効果は, CI装用者で1.5倍速文においてのみ有効であった。倍速音声聴取が困難であるCI装用者であっても休止区間挿入により処理時間が確保され聴取能改善につながるため, 会話時においては意味的に区切って発話することの重要性が示唆された。
著者
坂本 圭 小渕 千絵 城間 将江 松田 帆 関 恵美子 荒木 隆一郎 池園 哲郎
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.92-98, 2014-02-28 (Released:2014-11-06)
参考文献数
14

要旨: 人工内耳装用者 (以下CI装用者) の語音聴取における発話速度の影響と, 聴取能を補うための休止区間挿入の効果について検討した。対象は健聴者10名, CI装用者13名であり, 通常の発話速度 (以下, 基準文) を1倍速とし, これに対して2段階に倍速にした音声 (1.5倍速, 2.0倍速, 以下倍速文) の聴取成績を分析した。また, 各倍速音声に休止区間を文節, ランダムの2種の方法で挿入しその効果を実験的に検討した。この結果, 両対象者共に発話速度が速くなるにつれて有意に正答率の減少がみられた。特にCI装用者で顕著であり, 2.0倍速ではほとんどのCI装用者が聴取困難となった。また, 休止区間挿入の効果は, CI装用者で1.5倍速文においてのみ有効であった。倍速音声聴取が困難であるCI装用者であっても休止区間挿入により処理時間が確保され聴取能改善につながるため, 会話時においては意味的に区切って発話することの重要性が示唆された。