著者
加藤 拓巳
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-20-00016, (Released:2020-10-21)
参考文献数
36

Color has long been considered important by both the manufacturing industry and academia because it affects people’s perceptions, emotions, and behaviors. However, the evaluation of purchasing behavior until now has mainly been only in an experimental environment, and there have been concerns that differed from the actual consumer behavior. Therefore, the causal effect of the strong impression of a manufacturer’s brand color on the purchase behavior in the Japanese automobile industry was verified. Covariate was homogenized by propensity score matching based on the online survey, and the causal effect on purchase intention was extracted. As a result, the impression of the brand color had a positive effect on the purchase intention. This effect was estimated to be 5.739 in odds ratio. Commercial brands, logos, emblems, car body colors, dealers, showrooms, and even professional baseball teams were found to be factors that foster brand color.
著者
蛯谷 孟弘 加藤 拓巳
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.21-29, 2024-03-19 (Released:2024-03-19)
参考文献数
22

近年,商品機能を過剰に表現した「過剰広告」が散見される。それら過剰広告が消費者の知覚に及ぼす影響については,これまで盛んに議論されてきた。既存研究の多くは過剰広告の負の影響について論じたものだが,以下2つの条件では正の影響を及ぼす;(1)消費者がブランドに好意的な態度を有する,(2)過剰さを受容しやすい国民性を有する。しかし,これら既存研究は消費者の態度や属性に依拠しており,消費者に魅力的に映る過剰広告の要素についての議論は乏しい。そこで本研究は柔軟剤広告を対象に,過剰な要素として香り(私益)とエシカルさ(公益)を挙げ,各要素を過剰に訴求した場合の広告の魅力について,以下2つの仮説を導出した。H1:柔軟剤広告の香り要素(私益)の表現は,過剰と知覚された場合,広告の魅力に負の影響を与える。H2:柔軟剤広告の過剰なエシカル要素(公益)の表現は,過剰と知覚された場合,広告の魅力に正の影響を与える。ランダム化比較試験の結果,2つの仮説は支持された。よって,消費者の知覚する広告の魅力を高めるために過剰広告の公益要素は効果的であり,企業は積極的に消費者に訴求すべきである。
著者
加藤 拓巳
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.12-23, 2020-04-15 (Released:2020-05-15)
参考文献数
52

再購入率を高めることは,企業の効率的な利益に貢献する.したがって,その要因を特定し,効果的に投資することが重要である.しかし,多様な企業活動や顧客との接点を横断的に評価した事例は少ない.本研究では,自動車業界の企業・商品・販売会社の観点から,再購入意向に寄与する要因を共分散構造分析で評価した.その結果,販社スタッフの魅力が最も効果的であり,次いで商品の魅力,企業ブランドイメージが寄与することが明らかになった.企業において,プロジェクト数が増大し,大きな負担になるケースが散見される.各部門から上がってきたプロジェクト計画の優先順位を全社的な視点で概算的に判断できる基準を持つことは有益である.
著者
マックグリン チェリー百音 加藤 拓巳
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR MANAGEMENT INFORMATION (JASMIN)
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
pp.139-142, 2022-01-31 (Released:2022-01-27)

消費者は,SNS上のインフルエンサーを信頼し,消費行動の判断材料としている.その背景から,インフルエンサーを起用したマーケティングの市場規模は,増加の一途を辿っている.その一方で,企業は公式アカウントを設置してプロモーションに注力しているが,その効果は乏しいと指摘されている.しかし,訴求商品や,投稿内 文章・写真,フォロワー数等の条件を揃えた状態で,両者が購入行動に与える影響の差異は十分に明らかにされていない.そこで,「企業公式アカウントと比較して,インフルエンサーによる商品訴求の投稿の方が購入意向を高める」と仮説を立案し,日本の化粧品市場を対象としたランダム化比較試験によって,その是非を検討した.
著者
遠藤 茉樹 加藤 拓巳
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.28-36, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
22

インターネット広告の影響力は,スマートフォンと高速通信の普及によってさらに増している。なかでも,YouTube等の動画共有サービス上で配信される動画広告が注目されており,効果的な配信方法について盛んに議論されている。しかし,動画広告の挿入位置に関する研究としては,中盤の広告を中心としており,冒頭・末尾の挿入位置の評価は不十分である。動画コンテンツの開始前・終了後と視聴最中では,視聴者の意識が異なるため,視聴者に与える効果が変化すると推察される。そこで,本研究ではYouTubeにおけるお茶とフィットネスジムの動画広告を対象として,以下2つの仮説を検証した;(1)冒頭・末尾に挿入された広告に比べて,画面に集中している中盤の方が記憶に残る,(2)中盤に挿入された広告に比べて,嫌悪感の少ない冒頭・末尾の方が購入意向を高める。ランダム化比較試験の結果,いずれの仮説も支持された。したがって,動画プラットフォームの運営企業は,広告主の目的に応じて,動画広告の挿入位置を変える仕組みの構築が求められる。
著者
加藤 拓巳
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.19-26, 2021 (Released:2021-02-26)
参考文献数
36

Color has long been considered important by both the manufacturing industry and academia because it affects people’s perceptions, emotions, and behaviors. However, the evaluation of purchasing behavior until now has mainly been only in an experimental environment, and there have been concerns that differed from the actual consumer behavior. Therefore, the causal effect of the strong impression of a manufacturer’s brand color on the purchase behavior in the Japanese automobile industry was verified. Covariate was homogenized by propensity score matching based on the online survey, and the causal effect on purchase intention was extracted. As a result, the impression of the brand color had a positive effect on the purchase intention. This effect was estimated to be 5.739 in odds ratio. Commercial brands, logos, emblems, car body colors, dealers, showrooms, and even professional baseball teams were found to be factors that foster brand color.
著者
加藤 拓巳
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.78-88, 2021-01-07 (Released:2021-01-07)
参考文献数
22

企業は,消費者の認知を文脈によって導くことで,少ないコストで自社商品の差別化や優位性を確保できることから,マーケティングは文脈の設定作業とさえ言われる。消費者の認知バイアスを誘発する企業のマーケティング施策の代表例に妥協効果(松竹梅効果)がある。選択肢が「松・竹・梅」と3つ用意された場合,「竹」を妥協的に選択する特性を指し,飲食店や車等の多様な業界で利用されている。しかし,既存研究では,妥協効果の出現条件として,同じメーカーブランド内における,高付加価値志向と低価格志向という商品特性に焦点を当てた例は少ない。本研究では,日本の自動車業界におけるWeb見積りを対象に,商品特性による妥協効果の差異を検証した。その結果,低価格志向である軽やコンパクトでは妥協効果が出現するが,高付加価値志向であるSUVやミニバンでは妥協効果が出現せず,最上位グレードが選ばれやすいことが明らかになった。本研究で示したとおり,各商品の特性に適合したグレードを設定することは重要な文脈設定である。
著者
加藤 拓巳 津田 和彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.85-95, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
27

Electronic Commerce(EC)の普及によって生まれた消費者行動に,ショールーミングがある。販売店で確認した商品をインターネットで安価に購入する行動を指す。これは実店舗で販売する企業にとって大きな脅威であり,産業界・学術界ともに大きな注目を集めている。しかし,自動車業界に目を向けると状況は異なり,依然として販売店での購入が主流である。そのため,ショールームの現状評価やあり方の議論は不十分になっている。本研究では,日本の自動車業界を対象に,テーマパークやカフェ等の多様な形態のショールームへの訪問経験が消費者の推奨意向に与える影響を検証した。オンライン調査で得たデータをもとに,傾向スコアによって因果効果を推定した結果,有意な効果は見られなかった。推奨意向を有する要因としては,商品より販売店の観点が多く,礼儀・親近感・特別感が抽出された。EC化がそれほど普及していない業界では,購入行動に直結する動線設計は難しいと考えられるが,推奨意向の形成要因を把握したうえで,それを一貫して経験できる場の設計は重要であろう。
著者
加藤 拓巳
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.71-83, 2019 (Released:2020-04-21)
参考文献数
43

品質は,材料特性や製造技術等の客観的な要素と,美しさや心地よさ等の主観的な要素に分けられる.後者は,知覚品質と呼ばれ,近年は機能的な要素以上に重要視されている.自動車業界でも,知覚品質は大きな競争力の1つになっている.しかし,知覚品質の重要性は広く認識されながらも,主観的であるがゆえに,定量的な効果の推定は不透明なままであった.そこで,本研究の目的は,車のエクステリアの知覚品質が顧客の支払意思額に与える影響を評価することである.知覚品質の要素は,色,素材,仕上げのうち,これまで取り上げられた例の少ない仕上げを対象とした.仕上げは,「見切り線の有無」と「合わせ幅」の2つとし,同じスタイリングでありながら仕上げレベルが異なる2つの車を用意し,ランダム化比較試験によって検証を行った.ランダム化比較試験を行うにあたって,単純ランダム化で2群に割り当てた後,事前のリクルーティング調査で聴取した性別,年齢,世帯年収,保有メーカー,運転頻度,情報接触頻度等の項目で,各群の同質性を確認した.支払意思額は,仮想市場評価法の自由回答方式で聴取した.得られた支払意思額をブルンナー・ムンツェル検定で評価した結果,2つの車の間での差は有意となった.統計的な手法による定量評価は,商品の機能的な要素に着目されることが多いが,デザインの仕上げという感覚的な要素でも支払意思額という消費者視点で評価が可能である.