著者
酒井 渉 松井 祥子 高倉 一恵 立瀬 剛志 吉永 崇史 水野 薫 原津 さゆみ 瀬尾 友徳 日下部 貴史 島木 貴久子 佐野 隆子 四間丁 千枝 島田 尚佳 宮村 健壮 舟田 久 康川 慎一郎 宮脇 利男 北島 勲
出版者
富山大学保健管理センター
雑誌
学園の臨床研究 (ISSN:13464213)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.77-82, 2013-03

富山大学杉谷(医薬系)キャンパスは、医療系2学部4学科のみからなる。従来、暗黙理に、医師・医療職を目指すに十分な能力とモチベーションをもった学生のみが在籍し、学生支援は必要ないものと理解されてきた。そのため、学生支援を担う部署や教員組織は存在していなかった。かつて学生支援は、医薬系学生課(現医薬系学務グループ)職員、保健医学教員など、その必要性をいちはやく認識した一部の教職員によって個人的に行われていた。杉谷キャンパスの学生支援体制には不備があり、大学としての安全配慮義務の履行や、学生の修学環境保全に、支障をきたしている。支援職種は単一部署に配置すべきである。
著者
所 崇 北島 勲
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1687-1692, 2003-12-15

1.サイトカインの特徴 サイトカインとは,免疫担当細胞に代表される様々な細胞から産生される生理活性物質である.サイトカインの特徴を以下に列挙する1). 1) サイトカインは糖蛋白である 多くのサイトカインは糖蛋白であり,分子量約1~10万である. 2) サイトカインは微量で作用する in vitroで,サイトカインはpg~ng/mlの微少な濃度で十分に生理活性作用を示す.一方では,ある一定の濃度以下では生理活性は示されず,作用が発揮される閾値が存在する.また,一定の濃度以上ではプラトーに達してしまうこともある. 3) サイトカインは主に産生された局所にて活性を示す サイトカインは,産生された局所にて活性を示すことが多い.その一例として,関節リウマチの滑膜組織では,インターロイキン1(IL-1)や腫瘍壊死因子(TNF-α)などが大量に産生され,破骨細胞を活性化し骨破壊が起こることが挙げられる. 4) 単独のサイトカインが複数の生理活性作用を示す 多くのサイトカインは1つの分子であるにもかかわらず,多彩な生理活性作用を有する.例えばIL-1は,免疫系の賦活作用以外に,白血球や破骨細胞,血管内皮細胞,滑膜細胞,線維芽細胞など様々な細胞に働き,その活性化を引き起こす.これはサイトカインの“pleiotropy”とも呼ばれる. 5) サイトカイン産生細胞が多様に存在する サイトカインを産生するのは単一の系列に属する細胞群に限らない.IL-1を例に挙げると,マクロファージからだけでなく,T細胞,B細胞,NK細胞,多核白血球,血管内皮細胞,滑膜細胞,皮膚のランゲルハンス細胞など,様々な細胞から産生される. 6) 異なるサイトカインが同一の作用を有する IL-1とTNF-αの生理活性はほぼ同一であり,また産生制御機構も極めて類似している.これをサイトカインの“redundancy”と呼ぶ.このように一見無意味に思われる現象であるが,生体内ではこの現象により危険回避をしている可能性が推定できる.それは1つのサイトカイン遺伝子が何らかの原因によって異常を起こしても,別のサイトカイン遺伝子がこれをカバーするからと考えられている. 7) サイトカインは相乗的あるいは拮抗的に働く IL-1やTNF-αなどの炎症性サイトカインは同時に複数存在することで,その作用が相乗的に働く.つまり,複数のサイトカインが低い濃度で産生されたときに,単独で働かなくても,それらのサイトカインが同時に存在することで,相乗的に強い活性を示す.この現象は炎症反応における増悪・慢性化に関わっている.またIL-10はマクロファージに作用することで,IL-1やTNF-αの産生を間接的に抑制する.IL-4やIL-13もIL-10同様の作用を持ち合わせており,抗炎症性サイトカインとして注目を集めている. 8) 正のフィードバック機構を有するサイトカインカスケードの存在 1つのサイトカインが産生することで,次のサイトカイン産生が誘導される.このような現象を“サイトカインカスケード”,または“サイトカインネットワーク”と呼ぶ.例として,IL-1が産生されるとTNF-α,IL-6,IL-8,GM-CSFなどの産生が誘導される.炎症反応において,IL-1が産生されることで,さらにIL-1産生が誘導されるという正のフィードバック機構が働くことが知られている. 9) サイトカインインヒビター・アンタゴニストの存在 サイトカインにはインヒビター,またはアンタゴニストが存在する.例えば,IL-1アンタゴニスト(IL-1ra)はIL-1と構造が似ているために,IL-1レセプターと競合的に結合する.すなわちIL-1の活性を特異的に阻害することになる.IL-1raはIL-1レセプターと結合しても,IL-1のように細胞内シグナルを伝達しない.またIL-1raを産生する細胞は,同時にIL-1も産生する.つまり,同じ細胞がIL-1,IL-1raを産生することで免疫応答の調節をしているということがいえる. 10) サイトカインは正と負両面の作用を有する サイトカインは生体の恒常性を保つうえで必要不可欠な存在である.一方で,炎症反応により過剰産生され病態の増悪・慢性化につながる.例えば関節リウマチ患者の関節滑膜ではIL-1,IL-6,TNF-αなどの炎症性サイトカインが大量かつ持続的に産生される.これにより滑膜細胞の増殖,破骨細胞の活性化,軟骨細胞の破壊が起こり,関節組織が破壊される.またサイトカインがサイトカイン産生を誘導し,炎症の慢性化を引き起こす.
著者
榛沢 和彦 林 純一 大橋 さとみ 本多 忠幸 遠藤 祐 坂井 邦彦 井口 清太郎 中山 秀章 田中 純太 成田 一衛 下条 文武 鈴木 和夫 斉藤 六温 土田 桂蔵 北島 勲
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.14-20, 2006-01-10
被引用文献数
4

新潟中越地震の車中泊では地震による心的ストレス,窮屈な下肢屈曲姿勢,そして脱水により下肢深部静脈に血栓が発生しエコノミークラス症候群(肺塞栓症)が多発した.10/31,11/3,11/7には厚生連佐久総合病院の診療チームと計69名(男性4名)にポータブルエコーで,11/15から12/20までは厚生連魚沼病院に通常のエコー装置を設置しマスコミを通じて呼びかけ82名(男性13名)に下肢静脈エコー検査施行した.2005/2/28から3/31まで再度魚沼病院で検査した方を対象に再度下肢静脈エコーを行った.10/31-11/7に検査した69名中車中泊経験者は60名で,8名にヒラメ静脈浮遊血栓(そのうち1名はCTで肺塞栓症を認めた),14名に壁在血栓を認め,血栓陽性例は全員車中3泊以上であった.11/15-12/20の検査では車中泊は66名(6名は30日以上連泊),そのうち60名が下肢の疼痛や腫脹を訴えヒラメ静脈の充満血栓1名,9名で壁在血栓を含めた血栓を認め,血栓陽性例は全員震災直後から車中4泊以上であった.血栓陽性率は震災後からの経過時間とともに低下し12/20では10%であったが2/28から3/31の診療結果では新たな血栓も認め血栓陽性率は21.9%と上昇を認めた.11/7までの下肢静脈エコーにおける車中泊者のヒラメ筋最大静脈径は8.8±2.5mm(車中泊経験の無いヒラメ筋最大静脈径7.1±2.0mm)より有意に大(n=55,p<0.05),また血栓を認めた被災者のヒラメ静脈最大径10.0±2.6mmで血栓の無い被災者(7.5±4.4mm)より有意に大であった(n=67,p<0.0001).本診療調査により大災害時における車中泊は急性期に肺・静脈血栓塞栓症を起こすだけでなく,静脈の損傷により慢性期に反復性の血栓を生じて血栓後症候群になる危険性も大であることが示唆された.
著者
北島 勲 仁井見 英樹 畠山 登
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

炎症反応の中核を成す転写因子NF-κB活性化状態を病院検査室で利用できる高感度・迅速な計測方法を開発する。本研究は液相における物質のブラウン運動を計測する一分子蛍光相関法を基盤にした応用開発である。救急医療での迅速な対応が要求される全身炎症反応症候群(SIRS)病態に関わるNF-κB活性化状態の迅速検査法を確立することでSIRSの予後予測と早期対策が期待できる。