著者
北里 宏平 安部 正真 三戸 洋之
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.114, 2004

65803 Didymos はPHAの軌道グループに属する近地球型小惑星で, 比較的探査機が到達しやすく次期小天体探査計画の候補となり得る天体である. 我々は東京大学木曽観測所の30-cm望遠鏡 (K.3T) を用いて, この小惑星の15晩のライトカーブを取得した. Didymos のライトカーブには, 周期約2.26時間のダブルピークの連続周期カーブと周期約11.90時間の減光カーブが複合しており, 主星の周りに衛星が存在することを示唆している. これらの周期と主星と衛星の直径比より, 衛星の軌道を真円と仮定して二体問題で概算すると, この小惑星のバルク密度について約2.0 g/cm<sup>3</sup> という値が得られた.
著者
石原 吉明 渡邊 誠一郎 田中 智 山口 智宏 三浦 昭 山本 幸生 平田 成 諸田 智克 坂谷 尚哉 北里 宏平 松本 晃治 薮田 ひかる はやぶさ2LSS データ解析検討チーム はやぶさ2LSS データ作成チーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.139-143, 2017

<p>「はやぶさ2」は,C 型小惑星リュウグウ(Ryugu)にランデブーし,母船からのリモートセンシング観測及び小型着陸機によるその場観測を行うとともに,最大3 回の表面物質サンプリングを行うこととなっている.サンプリング地点には,リュウグウそのものや母天体,さらには太陽系形成時の惑星集積過程と物質進化について,最大の情報を得られる場所を選定する必要があるが,選定のために必要となる情報はランデブー後取得されるリモートセンシング観測の結果を待たねばならない.そのため,限られた時間の中で小惑星の特徴を把握し,安全性と科学価値の評価(Landing Site Selection, LSS)を行う手順を確立しておくことは必須である.本稿では,はやぶさ2 プロジェクトが来年に迫ったLSS 本番に向けて実施したLSS 訓練について概説する.</p>
著者
北里 宏平 はやぶさ2 NIRS3チーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.288-292, 2014

はやぶさ2に搭載する近赤外分光計(NIRS3)は,水酸基や水分子の赤外吸収が見られる3μm帯の反射スペクトルを測るリモートセンシング機器である.我々はNIRS3を使って,近地球C型小惑星1999JU_3の近接観測を行い,その表面の含水鉱物分布の特徴を明らかにする.近年,C型小惑星の内部に氷の存在を示唆する観測結果が報告されており,地球の海洋形成におけるC型小惑星の寄与が従来の想定よりも大きくなる可能性が出てきた.内部氷の存在を検証するには水質変成が起きたときの水の挙動を理解することが必要であり,NIRS3では衝突装置が作り出す人工クレーターの観測から加熱脱水や宇宙風化による二次的な変成の影響を識別し,母天体上で起きた水質変成の情報を抽出することをめざす.
著者
北里 宏平
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度は当初の計画通りの成果をだすことができたが,最終的な成果を投稿論文にまとめるところまでは至らなかった.残った課題については今後取り組む予定である.本研究では,「はやぶさ」探査機に搭載した近赤外線分光器の観測データを用いて小惑星イトカワの宇宙風化作用を明らかにし,小惑星の形成進化についての知見を深めることが目的である.宇宙風化作用は,月や小惑星のように大気の存在しない天体表面下において微小阻石の衝突や太陽風照射の影響から光学的性質が変化する現象であり,その度合いは物質が表面に露出していた時間を示す指標となる.この効果は近赤外線波長域の反射スペクトルで顕著に変化が見られ,定量的に測ることができる.前年度では,スペクトルデータのマッピング処理に必要となる小惑星表面の光散乱特性を表す測光関数を導出し,それらの結果を投稿論文にして出版した.本年度では,得られた測光関数を用いてスペクトルデータを一定の観測幾何条件に補正し,天体表面のグローバルなスペクトルマップのデータベースを作成した.その結果,鉱物組成の不均質性はみられなかったが,宇宙風化作用の度合いや表面物質の粒子サイズに起因すると考えられるアルベドおよびスペクトルスロープの地域差が検出された.この結果は,小惑星の形成進化過程を考える上で非常に重要な情報を秘めた可能性があり,今後様々な理論的・実験的研究によってより詳細な議論が進められると考えられる.