著者
薮田 ひかる 甘利 幸子 デイビッド キルコイン
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、隕石中の始原的希ガス" Qガス"の担体とされる正体不明の炭素化合物" phase Q"を同定するための新たな戦略として、適切な化学・物理的分離法を施しQガスを濃集させた隕石中の炭素質物質を、走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用い分析した。その結果、Qガスに富む炭素成分はsp^3炭素に富む分子構造を有することが明らかとなった。
著者
坂田 霞 薮田 ひかる 池原 実 近藤 忠
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

地球誕生後まもなく形成し今日に至り広く分布する海洋地殻は,地球最古の生態系が存在する環境として着目されていると同時に,初期地球,また地球外惑星における生命存在可能性についての示唆を与える(Edwards et al. 2012).海洋地殻では,海底下を循環する海水と岩石との反応で溶出した様々な元素を栄養源とする微生物が存在すると考えられ(Edwards et al. 2005),そのような岩石-水プロセスが観察できる,貧栄養,低温(10-15℃),速い海水循環が特徴的な北大西洋中央海嶺西翼部North Pondでの地下生命圏探査を行った。本研究では,玄武岩掘削試料中の微生物活動の記録を明らかにする目的で有機物の検出と炭素同位体分析を試みた。
著者
薮田 ひかる
出版者
生命の起原および進化学会
雑誌
Viva Origino (ISSN:09104003)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.20-43, 2008 (Released:2022-01-18)
参考文献数
128

This review (in Japanese) highlights the results on the Stardust mission organics preliminary examination of the returned Comet 81P/Wild 2 particles, based on the Science article published in December 15, 2006. The recent developments of studies on organics in chondritic meteorites and/or interstellar dust particles using modern instruments are also described for seeking relations of organic characteristics among the three extraterrestrial samples. In addition, potential chemistry for which cometary and meteoritic organics were responsible as a source of exogenous delivery to the early Earth is discussed.
著者
黒澤 耕介 小松 吾郎 薮田 ひかる 森脇 涼太 岡本 尚也 佐久間 博 松井 孝典
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.140-148, 2021 (Released:2022-02-10)
参考文献数
29

In this article we first review the roles of hypervelocity impacts in volatile partitioning on planetary surfaces and thermodynamics of shock vaporization/devolatilization of geologic materials. Impact experiment in an open system is essential to accurately estimate the shock pressure required for incipient vaporization/devolatilization, and we introduce a newly-developed open system experimental technique applied to two-stage light gas guns. This experimental apparatus allows us to measure impact-generated gases with a mass spectrometer at the same geometry of natural impacts with a limited risk of chemical contamination from the gun operation. The threshold pressures of vaporization/devolatilization for halite and gypsum were measured to be 18-31 GPa and <11 GPa, respectively. The new open system method is expected to serve as a powerful tool to explore the nature of shock vaporization/devolatilization of geologic materials.
著者
薮田 ひかる アレクサンダー コーネル フォーグル マリリン キルコイン デイビッド コーディ ジョージ
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.169, 2010

未分類C2コンドライトのWIS91600隕石は、その反射スペクトルがD- 又はT-タイプ小惑星のものに似ていることや、鉱物学的特徴がTagish LakeおよびCIコンドライトに似ていること 、その一方で熱変成を受けた証拠を有すること が報告されており、その起源や進化について共通の見解が得られていない。そこで本研究では、WIS91600 隕石が経験したプロセスに関する情報を引き出すために、WIS91600隕石中の有機物の同位体・構造分析を行い、それらの結果を他の隕石有機物の特徴と比較した。その結果、WIS91600 隕石の有機物は、種々の分類に属するコンドライトの有機物とは異なる独自の化学特徴を持っていることが明らかとなった。各分析から得られた知見を総合すると、WIS91600 隕石は、Tagish Lake 隕石が経験したものに似た水質変成を受けた後、500℃より低い"穏やかな"衝撃熱変成を受けた可能性が示された。
著者
加登 大輝 薮田 ひかる
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.65, 2018

<p>小惑星リュウグウの表層作用を解明するために、母天体熱変成を受けた炭素質CMコンドライト隕石の物質組成を理解することは重要である。本研究では、加熱脱水作用が記録されるJbilet Winselwan 隕石中の脂肪族炭化水素と多環式芳香族炭化水素(PAHs)をガスクロマトグラフ質量分析計により分析し、それらの分子組成の特徴を始原的なMurray CM隕石のものと比較した。 Jbilet Winselwan隕石中の<i>n-</i>アルカン、PAHsの総濃度は、Murray隕石中のものよりそれぞれ40倍、1000倍低かった。Jbilet Winselwan隕石では短鎖<i>n-</i>アルカン(C<sub>13</sub>-C<sub>18</sub>)の割合が高く、また低分子のPAHsが検出されなかった。さらにアルキルPAHsの異性体比が両隕石の間で類似の値を示した。以上より、Jbilet Winselwan母天体は比較的穏やかな熱変成を経験したと推測される。</p>
著者
石原 吉明 渡邊 誠一郎 田中 智 山口 智宏 三浦 昭 山本 幸生 平田 成 諸田 智克 坂谷 尚哉 北里 宏平 松本 晃治 薮田 ひかる はやぶさ2LSS データ解析検討チーム はやぶさ2LSS データ作成チーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.139-143, 2017

<p>「はやぶさ2」は,C 型小惑星リュウグウ(Ryugu)にランデブーし,母船からのリモートセンシング観測及び小型着陸機によるその場観測を行うとともに,最大3 回の表面物質サンプリングを行うこととなっている.サンプリング地点には,リュウグウそのものや母天体,さらには太陽系形成時の惑星集積過程と物質進化について,最大の情報を得られる場所を選定する必要があるが,選定のために必要となる情報はランデブー後取得されるリモートセンシング観測の結果を待たねばならない.そのため,限られた時間の中で小惑星の特徴を把握し,安全性と科学価値の評価(Landing Site Selection, LSS)を行う手順を確立しておくことは必須である.本稿では,はやぶさ2 プロジェクトが来年に迫ったLSS 本番に向けて実施したLSS 訓練について概説する.</p>
著者
緒方 雄一朗 薮田 ひかる 中嶋 悟 奥平 恭子 森脇 太郎 池本 夕佳 長谷川 直 田端 誠 横堀 伸一 今井 栄一 橋本 博文 三田 肇 小林 憲正 矢野 創 山下 雅道 山岸 明彦 たんぽぽ ワーキンググループ
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.175-175, 2011

始原小天体有機物は、太陽系および生命原材料物質の起源と進化を理解するための重要な情報を記録している。「たんぽぽ計画」では、大気圏突入時の熱変成や地上での汚染を受けていない宇宙塵を、国際宇宙ステーション上に超低密度シリカエアロゲルを設置して回収を試みる予定である。しかし、この方法では、宇宙塵のエアロゲルへの衝突により変成する可能性を考慮する必要がある。そこで本研究では、宇宙科学研究所・スペースプラズマ実験施設の二段式高速ガス銃を用いて、隕石微粒子の高速衝突模擬実験を行い、マーチソン隕石微粒子をシリカエアロゲルに撃ち込んだものを取り出し、2枚のアルミ板にはさみハンドプレスして圧着された隕石微粒子を、片方のアルミ板に載せた状態で、赤外顕微分光装置と顕微ラマン分光装置で測定を行った。また、SPring-8, BL43IRの高輝度赤外顕微分光装置IFS120HRでイメージング測定を行い、衝突前後の隕石有機物の分子構造の変化を見出すことを目的とした。
著者
関根 康人 高野 淑識 矢野 創 船瀬 龍 高井 研 石原 盛男 渋谷 岳造 橘 省吾 倉本 圭 薮田 ひかる 木村 淳 古川 善博
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.229-238, 2012-09-25

エンセラダスの南極付近から噴出するプリュームの発見は,氷衛星の内部海の海水や海中の揮発性成分や固体成分の直接サンプリングの可能性を示した大きなブレイクスルーであるといえる.これまでカッシーニ探査によって,プリューム物質は岩石成分と相互作用する液体の内部海に由来していることが明らかになったが,サンプリング時の相対速度が大きいこと,質量分析装置の分解能が低いことなどの問題があり,内部海の化学組成や温度条件,海の存続時間など,生命存在の可能性を制約できる情報は乏しい.本論文では,エンセラダス・プリューム物質の高精度その場質量分析とサンプルリターンによる詳細な物質分析を行うことで,内部海の化学組成の解明,初期太陽系物質進化の制約,そして生命存在可能性を探ることを目的とする探査計画を提案する.本提案は,"宇宙に生命は存在するのか"という根源的な問いに対して,理・工学の様々な分野での次世代を担う若手研究者が惑星探査に参入し結集する点が画期的であり,我が国の科学・技術界全体に対しても極めて大きな波及効果をもつ.