著者
佐原 直日 北原 信介 松永 貴志 小林 誠一郎 藤井 知紀 大野 伸広
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.1530-1534, 2022 (Released:2022-12-08)
参考文献数
15

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はしばしば微小血管における血栓形成を助長し重要臓器を障害する。今回COVID-19に後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を合併した症例を報告する。症例は全身性エリテマトーデスの既往のある44歳男性。COVID-19を発症時に溶血性貧血と著明な血小板減少を認めた。ADAMTS13活性が測定感度以下でADAMTS13 inhibitorを検出したため後天性TTPと診断した。失語,見当識障害,せん妄などの動揺性精神神経症状が出現したが血漿交換,prednisolone, rituximabを投与し改善した。COVID-19にTTPを合併した報告は少なく本邦では本症例が初めてとなる。TTPは稀ではあるがCOVID-19の重要な合併症の一つで速やかに診断し早期に治療を開始することが重要と考えられた。
著者
萩原 信介
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.11-20, 1992-03

固着生活を営む植物も種子散布時には様々な方法で動きを持つ。中でも翼を持ち空をグライダーのように滑空するアルソミトラマクロカルパの種子は特異であり, 生物学のみならず様々な方面での教育的価値が高いと思われる。この種子の構造を計測し, それに基ずいて発泡スチロールの薄片を用いて実物と用様の飛翔する模型が作られた。
著者
萩原 信介
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-17, 1983-03

マツ林床下におけるシュロの実生を用いて約3年間にわたる月別乾物生長, 死亡要因を調べ, 同時に林内照度, sunfecks, 気温の季節変化を測定しシュロの生長との対応を試みた。また前報(萩原, 1980a, b)の被陰格子内の生育との比較を行った。以下次のことが明らかになった。1. 林内の相対照度は夏季0.1%と低く, 4月下旬が最も高く2.5%となった。2. Sunfecksの割合は夏季2.3%と低く, 4月下旬が最も高く9.0%であった。3. 林外に比較し最低気温は冬で2.5℃高く, 最高気温は夏で2.5℃低かった。4. 実生の死亡要因としては胚軸伸長期の乾燥死が5%, 秋の落葉・落枝に被覆された死亡が3年間で18%, 1年目の冬の乾燥死によるものが15%, 虫害や競争によるものが4%であり照度不足が直接の原因と考えられる死亡は認められなかった。5. 乾物生長はきわめて遅く3年間で320mgと種子重の350mgまで達しなかった。6. 生長は年間を通し直線的で明瞭な生長休止期は認められなかった。7. 被陰格子内の実生との比較では2%照度区とほぼ等しい生長をしていることが明らかとなり, sunfecksの効果と秋から春の照度の上昇が生長の促進また生活の維持に大きく寄与していると考えられた。8. 1年目の実生の冬期の乾燥害は分布北限地域では, シュロの定着に大きな障害となっていることが予想された。
著者
山本 聡 辻 博治 原 信介 田川 泰 綾部 公懿 劉 中誠 澤田 貴裕 白藤 智之 田村 和貴 岸本 晃司 新宮 浩 赤嶺 晋治 岡 忠之
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.493-496, 1997
参考文献数
5
被引用文献数
4

鈍的外傷による頸部気管完全断裂の2手術例を経験した。症例1は21歳, 男性。バイク乗車中転倒, チェーンにて頸部受傷。第1と第2気管軟骨間において完全断裂, 両側反回神経と食道の合併損傷も認めた。症例2は55歳, 男性。ショベルカーのアーム部にて前胸部, 頸部を受傷。第1と第2気管軟骨間において完全断裂, 両側反回神経と頸髄の損傷を認めた。両症例とも気管損傷に対しては気管端々吻合術を施行した。鈍的外傷による気管完全断裂症例は受傷早期の気道確保を確実に行えば, 比較的救命率の良い外傷であると考えられた。また, このような症例では気管のみではなく他臓器の合併損傷の可能性もあることが示唆され, 術中術後の充分な検索が必要と思われた。
著者
濱尾 章二 宮下 友美 萩原 信介 森 貴久
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.139-147, 2010-10-20 (Released:2010-11-08)
参考文献数
28
被引用文献数
1 7

東京都心の隔離された緑地である国立科学博物館附属自然教育園において,冬季に捕獲した鳥の糞に含まれる種子を分析した.また,種子を排泄した鳥種の口角幅と採食されていた果実の直径を計測し,比較した.8種の鳥の糞から9種の植物種子が見出された.特に,ヒヨドリHypsipetes amaurotis,ツグミTurdus naumanni,メジロZosterops japonicusが93%の種子を排泄していた.これら3種は生息個体数も多かったことから,重要な種子散布者になっていると考えられた.種子は1種を除き,調査地内に見られる植物のものであったことから,調査地内外での種子の移動は少ないものと考えられた.鳥は口角幅より小さな果実を採食している場合もあれば,大きな果実を採食している場合もあった.ルリビタキ Tarsiger cyanurus,メジロ,アオジEmberiza spodocephalaでは,口角幅の最大値よりも果実直径の最小値の方が大きなイイギリIdesia polycarpaを採食していた.口角幅を超える大きさの果実を採食していたのは,結実期を過ぎていたことや都市緑地であることから,果実の選択が制約を受けていたためである可能性がある.