著者
加藤 輝之 栗原 和夫 瀬古 弘 斉藤 和雄 郷田 治稔
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.719-735, 1998-10-25
被引用文献数
6

10km分解能気象研究所非静力学メソスケールモデル(MRI-NHM)が予想した降雨の精度検証を1996年梅雨期について行った。精度検証結果については気象庁の10km分解能静力学領域スペクトルモデル(RSM)の結果とも比較した。MRI-NHMには雲水、雨水を直接予報する暖かい雨タイプの降水スキームを用い、RSMでは2つの対流のパラメタリゼーションスキームを大規模凝結とともに用いている。MRI-NHMは1時間降水量1mm程度の小雨を僅かに過小に予測した一方、降水強度の最大値20mm以上の強雨の面積を相当に過大評価した。統計的なスコアを取ったところ、1時間降水量10mm以上の強雨についてはMRI-NHMの方がRSMより正確に予測していた。ただし、5mm以下の雨についてはMRI-NHMはRSM程成績は良くなかった。MRI-NHMは1時間降水量20mm以上の雨のほぼ半数を予想することができた。降水は九州北部より南部の方が精度良く予想されていた。このことは九州北部と南部とで強雨形成のメカニズムが異なるためだと考えられる。
著者
福田 眞作 下山 克 坂本 十一 菅原 和夫 棟方 昭博 中路 重之
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

食物繊維が人の消化吸収機能に及ぼす影響を以下のように検討した。(1)まず、小腸液灌流法を用いて回腸末端部の小腸液の食物繊維(難消化性澱扮とペクチン)含有量を測定し経口摂取したそれと比較した。(2)大腸内の発酵によるカロリー摂取状況を評価するために食物繊維(難消化性澱粉、ペクチン、セルロース、ラクツロース)摂取後の呼気ガス(水素とメタン)を測定した。(3)^<13>Cにより標識された中性脂肪をペクチンとともに摂取させ、呼気中の^<13>CO_2と^<12>CO_2を測定してペクチンの中性脂肪吸収に及ぼす影響を評価した。本研究で得られた主要な結果を列挙すると以下のようになる.1.内視鏡的逆行性腸管挿管法を用いた小腸液灌流法による食物繊維の回収実験で,食物繊維の一種である難消化性澱粉の回収率は平均値±標準偏差値で345±9.7%であった。これは難消化性澱粉の食物繊維としての価値が平均でわずか34.5%しかないことを示唆した。また個体差が非常に大きく約20%の幅がみられた。2.同様方法で同じく食物繊維の一種であるペクチンの回収実験を行ったところ,平均値±標準偏差値は88.4±10.5%であった。以上よりペクチンは難消化性澱粉に比較し,食物繊維としての価値はほぼ90%と高かった。しかし,難消化性澱粉と同様に20%以上の個体差がみられた.以上より食物繊維はその種類によって真の食物繊維としての価値は大きく異なり,また個人差が大きいことが明らかになった。このことは食物繊維の真の値がin vivo系で明らかにされるべきであることを示唆し,また個人によって異なる消化吸収システムが食物繊維の真の値に大きく影響するものと考えられた.3.食物繊維の大腸内における発酵パターンにはいくつか存在することが明らかになった。この相違は腸内細菌叢の種類と量、食物繊維の小腸通過時間・通過率及び食物繊維の種類に依存していると考えられた。4.短時間における食物繊維の脂肪の消化吸収に及ぼす影響は,想定されているほど大きくないことが明らかになった。食物繊維は1971年のバーキットの繊維仮説の提唱以来注目を浴びてきた。しかし,それは根拠のない健康ブームに乗っかった側面もあった。近年,食物繊維の種類分け,測定法が厳密化し,食物織維と健康に関する研究そのものも,より厳密化してきた。したがって,食物繊維の厳密な評価による,さらなる説得力のある研究が始まりつつある.本研究は食物繊維の評価を科学的に厳密に追及したものであり,今後のより成熟した食物繊維の研究に資するところ大であると信じる。
著者
楊 中〓 菅原 和夫 伊藤 厳 丸山 純孝 福永 和男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.102-108, 1987-07-31

待機利用条件下におけるオーチャードグラスの種子登熟歩合と自然落下率の変化および春の刈取りが種子生産に及ぼす影響を検討するため,帯広と川渡において実験を行った.主要な結果は以下のとおりである.1)出穂開始の約70日後に約50%の種子が自然落下し,この時点ではすでに種子の大部分が発芽能力を有していた.したがって,利用の待機期間をこの時期までとしれば,確実に自然落下種子量を確保することができるものと考えられる.2)5月28日から6月10日(出穂開始日)までに帯広で行った刈取り実験では,早い時期の低刈りおよびやや遅い時期の高刈り処理によって,出穂茎の形成がある程度促進され,出穂1週間前までの刈取り処理のほとんどが種子の生産に大きな影響を及ぼさないことが認められた.しかし,出穂の3日前以降の刈取り処理におけるオーチャードグラスの出穂率,種子の千粒重および発芽率は著しく低下した.3)オーチャードグラスの春の刈取りによる地上部除去量と幼穂の被害率との間にS字曲線を示す関係が認められた.地上部除去量が40cm以上になると,幼穂の被害率が急激に増加した.したがって,春の利用量がこれ以下であれば,種子生産に及ぼす影響がほとんどないものと考えられる.4)帯広と川渡のいずれにおいても出穂の10日前までの刈取り処理では,オーチャードグラスの出穂に及ぼす被害はほとんど認められなかった.以上の結果から,オーチャードグラスの春における利用は,適切であれば,種子生産に及ぼす影響がほとんどないことが明らかになった.自然下種による植生回復を効率よく行うための種子量を確保するためには,出穂の10日前から70日後までの休牧期間が必要である.
著者
栗原 和夫 加藤 輝之
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.631-636, 1997-09-30
被引用文献数
5