著者
後藤 駿一 斎藤 恭一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.15-22, 2016-01-15 (Released:2016-01-22)
参考文献数
9
被引用文献数
3 1

汚染海水から放射性ストロンチウムを除去するのは次の2点から難度が高い。(1) 海水にもともと約8 g/m3溶けている非放射性ストロンチウムに,原発事故で生じた極微量の放射性ストロンチウムが追加されて溶けている。(2) 海水にはストロンチウムと同族のマグネシウム,カルシウムが,それぞれモル濃度で600, 100倍の濃度で溶けている。したがって,放射性ストロンチウムにとっては,非放射性ストロンチウム,マグネシウム,カルシウムが吸着材への競合物質である。本稿では,ストロンチウム除去用の吸着繊維の作製法や性能について解説する。
著者
須郷 高信 斎藤 恭一
出版者
日本膜学会
雑誌
(ISSN:03851036)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.272-282, 1988-09-01 (Released:2011-03-04)
参考文献数
72
被引用文献数
5 2

Many methods of recovery of uranium from seawater have been suggested : coprecipitation, adsorption, ion flotation, solvent extraction, and others. Of these, only the adsorption method using a suitable solid adsorbent seems to be feasible with regard to economic and envirom ental impacts. Extensive investigations of adsorbents have been carried out. Among the various organic resins, chelating resins containing amidoxime groups have been selected. A novel amidoxime-group-containing adsorbent of hollow-fiber form was prepared by radiation-induced graft polymerization of acrylonitrile onto a polyethylene hollow fiber, followed by chemical conversion of the produced cyano group to an amidoxime group. The fixed-bed adsorption column, 30 cm in length and charged with the bundle of amidoxime hollow-fibers, was found to adsorb uranium from seawater at a sufficiently high rate : 0.66 mg uranium per g of adsorbent in 25 days.
著者
堀 隆博 斎藤 恭一 古崎 新太郎 須郷 高信 岡本 次郎
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.795-800, 1987-11-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
17
被引用文献数
6 8

放射線グラフト重合法によってアミドオキシム型キレート樹脂を合成し, 海水中におけるウランと樹脂との吸着平衡関係を調べた.短時間で平衡に到達させるため, アミドオキシム基量を1kg基材あたり0.105 mol以下に制御した.アミドオキシム基量が0.064 mol/kg-BP以下の樹脂では, 海水中でのウラン吸着が飽和に達していた.グラフト鎖上で隣接した二個のアミドオキシム基が, ウラニルイオン一個を捕捉し, 単独のアミドオキシム基はウラン吸着に寄与しないと考えた.隣接アミドオキシム基とウラニルイオンの錯形成の反応式から, Langmuir型吸着平衡式を導き, 吸着平衡の実験結果を整理した.全アミドオキシム基量0.105 mol/kg-BPの樹脂について, 隣接アミドオキシム基量は, そのうち0.39%という結果を得た.
著者
後藤 聖太 斎藤 恭一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.7-14, 2016-01-15 (Released:2016-01-22)
参考文献数
11

東京電力福島第一原子力発電所の1~4号機取水口前の海水エリアに,原子炉建屋などから漏出した汚染水の一部が流れ込んで16万トンの海水が汚染されている。この汚染海水の処理には,吸着材をそのまま投入・浸漬後に回収する方式が「簡便,確実,そして安全」で有効である。港湾内汚染水から放射性セシウムやストロンチウムを除去するために,組み紐に成型した吸着繊維がその海水エリアに試験投入・浸漬されている。本稿では,セシウム除去用の吸着繊維の作製法や性能について解説する。
著者
斎藤 恭一
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.211-222, 2014-05-25 (Released:2014-05-23)
参考文献数
32
被引用文献数
3 2

対象イオンや分子の高速での除去や回収のために,放射線グラフト重合法とその後の化学反応によって,無機化合物,酵素,および抽出試薬を市販の6-ナイロン繊維に担持した.小さな径の繊維担体は液との大きな外部接触面積をもつ.さらに,機能化された繊維は実用現場に応じてフィルターや組みひもといったさまざまな形状に成型できる.まず,フェロシアン化物イオンを吸着させたアニオン交換繊維を塩化コバルト溶液に浸漬することによって沈殿生成をさせて,不溶性フェロシアン化コバルト担持繊維を作製した.6-ナイロン繊維に接ぎ木した高分子鎖に担持させた不溶性フェロシアン化コバルトは海水中でセシウムイオンを特異的に捕捉した.同様に,カチオン交換繊維にチタン酸ナトリウムを担持させて海水中のストロンチウムイオンを選択的に捕捉した.つぎに,ウレアーゼをアニオン交換グラフト鎖に固定し,その後,ウレアーゼ間をトランスグルタミナーゼを使って架橋した.このウレアーゼ固定繊維は水中の尿素を高速で定量的に加水分解した.さらに,酸性抽出試薬HDEHPを6-ナイロン繊維に接ぎ木した疎水性高分子鎖に担持した.HDEHP担持繊維へのジスプロシウムおよびネオジムの分配係数が,n-ドデカンへの分配係数によく一致することを示した.
著者
金 慶子 萩原 京平 梅野 太輔 斎藤 恭一 須郷 高信
出版者
日本膜学会
雑誌
(ISSN:03851036)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.233-238, 2009-07-01
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

An immobilized metal affinity porous membrane of a hollow-fiber form was applied to the purification of geneticallyengineered histidine (His)–tagged fusion protein. An iminodiacetate (IDA)group (–N(CH2COOH)2)was introducedinto the poly–glycidyl methacrylate chain grafted onto a polyethylene-made porous hollow–fiber membrane.Subsequently, nickel ions were bound to the IDA group before the permeation of a His–tagged green fluorescent pro-tein (GFP)solution through the porous membrane. The resultant immobilized nickel affinity porous membrane(immobilized Ni membrane)had a ligand density of 0.36 mol/kg and a phosphate buffer flux of 0.4 m/h at a perme-ation pressure of 0.1 MPa and 298 K. His–tagged GFP adsorbed to the immobilized Ni membrane was eluted by per-meating a 0.5 M imidazole solution through the porous membrane. From an SDS–PAGE analysis, the purity of theprotein was found to be improved from 35 to 97%.
著者
斎藤 恭一 小島 隆 浅井 志保
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.233-242, 2017

不溶性フェロシアン化コバルト及びチタン酸ナトリウムは,放射性核種を含む汚染水から,それぞれセシウムイオン及びストロンチウムイオンを特異的に捕捉する.これらの無機化合物の沈殿を,放射線グラフト重合法によって市販の6-ナイロン繊維に接ぎ木した高分子鎖内で析出させた.それらの沈殿が多点の静電相互作用に基づいてグラフト鎖に巻き絡まるという担持構造が示唆された.作製された不溶性フェロシアン化コバルトあるいはチタン酸ナトリウム担持繊維は,従来の粒子状吸着材,例えば,ゼオライトやSrTreat(チタン酸ナトリウム担持樹脂)比べて,吸着速度は大きかった.市販の粒子状吸着材と比較して無機化合物重量あたりの吸着容量は大きかった.
著者
斎藤 恭一 浅井 志保
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究代表者は、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水の処理に適した吸着材の形態として繊維に着目した。市販のナイロン繊維を出発材料にして放射線グラフト重合法を適用し、極低濃度の放射性セシウムやストロンチウムを除去するために、無機化合物(それぞれ、フェロシアン化コバルトとチタン酸ナトリウム)を担持して繊維を開発してきた。この吸着繊維の性能が認められ、現時点で、サブドレンから汲み上げた汚染水や港湾内汚染水の処理の現場への適用や試験に至っている。