- 著者
-
斎藤 恭一
- 出版者
- 公益社団法人 高分子学会
- 雑誌
- 高分子論文集 (ISSN:03862186)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.5, pp.211-222, 2014-05-25 (Released:2014-05-23)
- 参考文献数
- 32
- 被引用文献数
-
3
2
対象イオンや分子の高速での除去や回収のために,放射線グラフト重合法とその後の化学反応によって,無機化合物,酵素,および抽出試薬を市販の6-ナイロン繊維に担持した.小さな径の繊維担体は液との大きな外部接触面積をもつ.さらに,機能化された繊維は実用現場に応じてフィルターや組みひもといったさまざまな形状に成型できる.まず,フェロシアン化物イオンを吸着させたアニオン交換繊維を塩化コバルト溶液に浸漬することによって沈殿生成をさせて,不溶性フェロシアン化コバルト担持繊維を作製した.6-ナイロン繊維に接ぎ木した高分子鎖に担持させた不溶性フェロシアン化コバルトは海水中でセシウムイオンを特異的に捕捉した.同様に,カチオン交換繊維にチタン酸ナトリウムを担持させて海水中のストロンチウムイオンを選択的に捕捉した.つぎに,ウレアーゼをアニオン交換グラフト鎖に固定し,その後,ウレアーゼ間をトランスグルタミナーゼを使って架橋した.このウレアーゼ固定繊維は水中の尿素を高速で定量的に加水分解した.さらに,酸性抽出試薬HDEHPを6-ナイロン繊維に接ぎ木した疎水性高分子鎖に担持した.HDEHP担持繊維へのジスプロシウムおよびネオジムの分配係数が,n-ドデカンへの分配係数によく一致することを示した.