著者
只木 良也 沖野 外輝夫 青木 淳一 斎藤 隆史 萩原 秋男
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

1.名古屋市内やその周辺の二次林について、リターフォールの季節変化、構成樹種の葉緑素の充実と成長、フェノロジー、現存量などの調査。その生産力が、貧立地にもかかわらず予想外に大きいことを確認した。名古屋市近郊里山の具体的な保全利用計画立案に参画した。(只木)2.都市樹林地で、その活動による土壌気相中のCO_2濃度の垂直分布を調べ、樹林地の環境保全効果の実態を解明した。また、外気のCO_2濃度に応じた樹木のガス交換能力、すなわち光合成、呼吸、体内蓄積(成長)などの挙動を実験的に検討し、樹木や森林の存在と空中水分の関係についても実測した。(萩原)3.都市域と里山で、鳥類の種構成、個体数の相対出現頻度および両地区の類似度を比較した。都市域の鳥類相の大部分は、里山の鳥類相に起源を持ち、都市鳥類化は、里山→農村域→都市域の順に生じたと考えられる。これを確認するためには、さらに農村域の鳥類相を調査する必要がある。(斎藤)4.都市域およびその周辺域の緑地において、豊かな自然を維持するために土壌表層の管理が重要であるが、千葉・神奈川・東京の3都県下の緑地における65地点において「自然の豊かさ」の評価を行った。その結果、評価点は自然樹林地で高く、次いで人工林や竹林、草地では評価点は低かった。(青木)5.ヨシ原実験圃場での生物群集の変遷と水質の変化について追跡調査。植物相のみならず、実験圃場に飛来する昆虫類の季節的変化も観測した。諏訪湖湖畔の再自然化計画の立案にも参画。ヨシ原実験圃場その他の研究成果を生かして、湖内に生育する水生生物の視点からの造成計画を進めた。(沖野)6.過去3年間の研究成果を踏まえて、人工集中域の自然や緑地の望ましい姿を討議し、各人の研究成果とともに研究成果報告書(「人間地球系重点領域研究B008-EK23-18」)を刊行した。(全員)
著者
只木 良也 沖野 外輝夫 青木 淳一 斎藤 隆史 萩原 秋男
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

1.都市内やその周辺に残された樹林地の構造を調査し、その形成過程を推定した。とくに上層落葉樹・下層常緑広葉樹の複層林型の上層(コナラ)樹高15m、年間純生産量13t/haの林分で、土壌生成の源となる落葉量とその元素含有量の季節変化の追跡を行った。(只木)2.都市樹林地で、その活動によるCO_2の収支を通じた環境保全効果の実態を解明する目的で、土壌気相中のCO_2濃度の垂直分布を調べた。土壌気相中のCO_2濃度は、土壌表面からの深さが増すにつれて増加するが、増加率は土壌が深いほど低下した。季節によるCO_2濃度は、夏季に高く、冬季に低かった。(荻原)3.都市周辺の森林や畑地の開発と都市鳥類の関係を神奈川県下で調査した、1970-1990年の資料を解析し、周辺の森林と畑地の激減に応じて、都市緑地繁殖鳥類の種数は漸増した。都市周辺の生活場所が消滅した場合、たとえ好適ではないにしても都市緑地が二次的な生活場所を提供している。(斎藤)4.都市の公園や緑地の同じクスノキを高木層にもつ林地でも、低木層の有無、落葉層の有無が生息可能な土壌動物の種類と量に大きな影響を与えることがわかった。とくに落葉の除去は影響が大きい。また、低木層・落葉層ともに存在として、高木クスノキよりもスダジイの方が豊かな動物層を維持できることも判明した。(青木)5.ヨシ原実験圃場造成の初期には、ヨシ活着等の不揃いからパイオニア的な植物が侵入した。春の発芽時期にはまずガマが伸長した。水中では原生動物11種、ワムシ類22種、甲殻類8種が観察され、水質との関係では、実験水路でSSやT-CODが減少したが、溶存のs-CODは逆にやや増加する傾向を示した。水質浄化を目的とする水生植物群の造成、管理に際しての若干の示唆が得られている。(沖野)
著者
只木 良也 香川 照雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.7-13, 1968-01-25
被引用文献数
3

落葉枝量の季節変化を, 密生した若いコジイ林で3年間, ヒノキ壮齢林およびテーダマツの若い造林地で2年間調べた。受け取り面積0.5m^2のリタートラップを林内に設置して, その中に落ち込む落葉枝を, コジイ林の1年目は半月ごとに, その他では1月ごとに集め, 絶乾重を測定した。コジイ林では年間落葉量の1/3以上が4〜5月に落ちるのに対して, ヒノキ林やテーダマツ林での落葉のピークは秋である。しかし, 落葉量は台風時にはかなり多くなる。枝や球果の落下は, 年間を通じて不規則に起こるが, 台風や強風の時に大量に落下し, 落葉よりもこれらの影響をうけやすい。年間落葉量は, 台風が襲った年に平年より多くなり, その翌年には逆に少なくなる。コジイ林の年間落葉量と立木密度との間には年ごとにY-D効果が認められた。年間落葉量を冬期の林分葉量と比較すると, コジイ林では年間落葉量は林分葉量の40〜50%にあたり, ヒノキ林では30%, テーダマツ林では100%となる。これらから, 林分葉量の季節変化と, 葉の年齢構成を模式的に表わしてみた。