著者
太田 寛志 佐治 斉 中谷 広正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.1129-1139, 1999-07-25
被引用文献数
32

顔面筋に基づく顔構成要素モデルを用いた表情の認識手法を提案し, 表情の時間的変化の認識について述べる. 顔モデルは, 眉・目・口それぞれの顔構成要素の可変モデルからなる. 各モデルは数個の制御点と顔面筋の収縮方向のベクトルで構成される. 制御点の移動方向は顔面筋が収縮する方向と一致しているため, モデルの変形は実際の顔構成要素と同じ変形規則をもつ, 顔動画像にモデルをマッチングさせることで, 顔構成要素の動きの追跡ができ, 顔面筋の収縮度が求められる. 得られた収縮度を要素とする表情パターンと, あらかじめ決定されている表情標準パターンとを比較することで各表情の表出度が得られる. 表情表出度は, 顔に表れている表情のめいりょうさを示しており, 値の大小から表情を識別する. また, 表情表出度の時間的変移から表情の発生・持続・終了を検出できる.
著者
坂上 伸生 渡邊 眞紀子 太田 寛行 藤嶽 暢英
出版者
日本ペドロジー学会
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.24-32, 2004-06-30 (Released:2018-06-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Sclerotium grain is the resting body of ectomycorrhizal fungi found in forest soils. A melanic-spherical shape in approximately 1-2mm diameter characterizes the external feature of the grain, and a hollow structure with honeycomb transverse wall appears inside the grain. In our previous studies, we reported a high aluminum concentration inside sclerotium grains and suggested the close relationship between the status of active aluminum and the distribution of these grains in Andosols (Watanabe et al., 2001; 2002). Here we examined the chemical properties focused on active aluminum and carbon in several nonallophanic Andosols under forest vegetation for further discussions on the regulating factor of the distribution of the sclerotium grains. In each studied soil profile, the mean weight of sclerotium grain (mg grain^<-1>) had a tendency to increase with the content of exchangeable aluminum, content of total organic carbon and nitrogen, carbon content of humic acid extracted from soils. The ratio of Alp to total organic C(Al_p/T-C) showed a strong negative correlation between the mean weight sclerotium grains regardless of profiles. The bonding ratio of carbon and aluminum in soils was assumed to be one of the factor influencing the development of sclerotium grains.
著者
佐藤 嘉則 成澤 才彦 西澤 智康 小松崎 将一 太田 寛行
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.49-54, 2011-04-01 (Released:2017-05-31)
参考文献数
22
被引用文献数
2

近年,糸状菌の細胞内部に内生する細菌の検出例が報告されている。例えば,Rhizopus属菌の菌糸内部に分布する内生細菌は,これまでRhizopus属菌が生成すると考えられていたリゾキシンを生成することが明らかとなった。このような背景から今後,糸状菌を扱う研究全般において内生細菌の検出が重要な試験項目のひとつになると考えられる。本稿では,糸状菌細胞内生細菌の検出方法として,グラム陰性細菌の細胞壁成分のひとつであるエンドトキシンの定量による内生細菌の検出法,細菌16S rRNA遺伝子を標的としたPCR法による内生細菌の検出,蛍光顕微鏡および透過電子顕微鏡を用いて,菌糸内に分布する内生細菌を直接観察する方法について,筆者らの手法を中心に既往研究を加えて解説した。本稿で紹介した検出方法は透過電子顕微鏡観察を除いて,比較的簡易であることから,糸状菌の細胞内生細菌の分布調査に広く活用されることが期待される。糸状菌細胞内生細菌および共生体(共存体)の土壌における生態学的役割については今後の研究課題である。
著者
和田 耕治 太田 寛 阪口 洋子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.259-265, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
26

目的 新型インフルエンザ A(H1N1)2009が海外で発生した初期に,わが国では停留措置が行われた。停留は,国民の安全•健康を守るための措置である一方,個人の行動を数日間にわたって制限することになるため,人権を最大限尊重して最小限の人を対象に行うべきである。本研究では,今後新たに発生した新型インフルエンザの流行初期において最適な停留措置を行うための意思決定のあり方について検討を行った。方法 インフルエンザの感染性や航空機などの公共交通機関での感染の事例,停留の有効性などに関する文献と新型インフルエンザ A(H1N1)2009の流行の初期において停留措置に関わった者へのインタビューから得られた知見をもとに検討を行った。結果 停留の意思決定をする際には,停留の必要性の検討,対象者を最低限にするための対応,対象者の人権確保,代替策について検討を行う必要がある。 必要性の検討では,新型インフルエンザが停留の対象とすべき公衆衛生上の脅威であるか,停留を行うことによって国内での流行のはじまりを遅らせることができる時期であるか,停留措置を緩和するまたは解除するなどの意思決定の場,を検討する。 停留対象者を最小限にするための対応については,感染者に曝露する人を出さないためにもインフルエンザ様症状のある者が航空機に搭乗しないよう国民への呼びかけ,対象者の選定が感染者との曝露に応じた決め方になっているかを検討する。 停留が必要と判断された際の対象者の人権確保については,停留期間が最短であるか,対象者の人権(個人情報,施設での快適性)は守られているか,対象者のメンタルヘルスや,慢性疾患などの治療への対応が確保できているか,外国人を停留する場合の各国言語を勘案した十分な説明ができているかを検討する。また,停留代替策の検討として自宅待機などの選択肢を検討する。結論 停留措置の意思決定は,流行の初期において判断が求められるため病原性などの情報は限られている。また,停留の意思決定を行うためのエビデンスは現段階で十分には得られていない。そのようななかで考慮すべき点を多面的に検討し,最適な停留措置を意思決定することが求められる。
著者
成澤 才彦 太田 寛行 佐藤 嘉則
出版者
茨城大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

多くの分類群を含む菌株を供試して,内生バクテリアの存在を確認したところ,接合菌類からPCR増幅を確認できた.検出されたバクテリアは, M. elongataより検出されている内生バクテリアの近縁種であった.Veronaeopsis simplex 3菌株を供試して,内生バクテリアの検出および系統解析を行った. DNA抽出を行い PCR増幅を行った. その後,クローンライブラリー解析に供し,内生バクテリアの同定を行った.解析の結果,V. simplex 3菌株から共通してRhizobium属細菌が検出され,これらが宿主植物の生育に関わっていることが推察された.
著者
藤村 玲子 佐藤 嘉則 難波 謙二 太田 寛行
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.211-218, 2011-07-30
参考文献数
29
被引用文献数
2

森林をはじめとする植物-土壌生態系では、光合成による一次生産と微生物による有機物分解のバランスが成り立ち、豊かな生物相が維持されている。しかし、火山噴火というイベントはこの生態系を壊してリセットしてしまう。新たに生じた火山灰などの火山砕屑物や溶岩に住み始める生物は、肉眼では見えない微生物である。本稿では、三宅島2000年噴火火山灰堆積物に住みつく微生物について、2003年から6年間にわたって調査してきた結果を紹介する。まず、調査初年時に採取した火山灰堆積物の細菌密度の測定結果では、すでに1gあたり10^8の高いレベルに達していた。直接試料から抽出したDNAの16SリボソーマルRNA遺伝子を解析した結果は、Leptospirillum ferroxidansやAcidithiobacillus ferrooxidansといった独立栄養性の鉄酸化細菌が優占する細菌群集構造を示した。供試火山灰堆積物にはCO_2吸収活性があり、十分に高いニトロゲナーゼ活性も検出されており、これらの活性は鉄酸化細菌に由来することが推察された。2009年の調査においても、三宅島雄山上部の火山灰堆積物は酸性状態に維持され、鉄酸化細菌の優占が続き、化学合成無機独立栄養代謝が中心の微生物生態系であることが示唆された。以上の結果をもとに、火山灰堆積物に形成される微生物生態系のエネルギー代謝と初成土壌への有機・無機物質の蓄積について推察する。
著者
三村 信男 江守 正多 安原 一哉 小峯 秀雄 横木 裕宗 桑原 祐史 林 陽生 中川 光弘 太田 寛行 ANCHA Srinivasan 原沢 英夫 高橋 高橋 大野 栄治 伊藤 哲司 信岡 尚道 村上 哲
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

気候変動への影響が大きいアジア・太平洋の途上国における適応力の形成について多面的に研究した.ベトナム、タイ、南太平洋の島嶼国では海岸侵食が共通の問題であり、その対策には土地利用対策と合わせた技術的対策が必要である.また、インドネシア、中国(内蒙古、雲南省など)の食料生産では、地域固有の自然資源を生かした持続可能な農業経営・農村改革が必要である.また、本研究を通して各国の研究者との国際的ネットワークが形成されたのも成果である.