著者
善教 将大 坂本 治也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.74-89, 2013 (Released:2017-12-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本稿の目的は,日本維新の会への支持態度の特徴ならびにその背景にある有権者の論理を明らかにすることである。先行研究では,維新あるいは橋下への支持は,有権者の政治的・社会的疎外意識に基づく熱狂的なものであることが述べられてきた。これに対して本稿では有権者が抱く橋下イメージの違いという観点から,維新が支持される理由を説明する。実証分析の結果,明らかとなったのは次の3点である。第1に維新は多くの有権者に支持されているが,その支持強度は弱い。第2に政治的・社会的疎外意識等と維新支持に関連があるとはいえない。第3に橋下をリーダーシップの高い人物だと認識する人は維新を弱く支持し,保守的な人物だと認識する人は強く支持する傾向にある。つまり維新への支持が弱い理由は,彼のリーダーシップへの評価が弱い支持にしか結びつかないという点に求められる,というのが本稿の結論である。
著者
善教 将大 秦 正樹
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1_159-1_180, 2017 (Released:2020-07-01)
参考文献数
35

本稿の目的は, 政治意識調査における 「わからない (「DK」)」 の発生メカニズムを, サーベイ実験により明らかにすることである。先行研究ではDKの規定要因として政治関心や政治知識の欠如が指摘されてきたが, 本稿は回答者に情報を与えることがかえってDK率の増加に繋がる場合もあるという仮説を提示し, この仮説の妥当性を実験的手法により検証する。全国の有権者を対象とするサーベイ実験の結果は次の3点にまとめられる。第1に政策のメリットやデメリットの情報の提示はDK率を有意に低下させる。第2に, しかし政党の政策位置に関する情報の提示はDK率の低下にほとんど寄与しない。第3に政党を拒否する層に対しては, 政党情報の提示は逆にDK率を有意に高める場合がある。これらの知見は, 日本では政党が意見表明の際の手がかりとしてはほとんど機能していないという, 有権者の中での 「政党の機能不全」 を示唆するものである。
著者
善教 将大
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_163-2_184, 2016 (Released:2019-12-10)
参考文献数
47

本稿の目的は, 政党支持の規定性, 具体的には長期的党派性の投票行動に対する影響を検証することである。政党支持の規定性は, これまで多くの研究者が議論してきた安定性とは対照的に, ほとんどその妥当性に関する検証作業が行われていない。本稿では実験的手法を用いて, 行動意欲とは異なる長期的党派性は, 政党ラベルや候補者要因が投票行動に与える効果をどの程度条件付けるのかを分析することで, 政党支持の規定性の検証を試みる。大阪市および近畿圏在住の有権者を対象とするサーベイ実験の結果, 長期的党派性は政党ラベルの因果効果を常に高めるわけではないことが明らかとなった。この知見は, 政党支持は規定的であるという通説的見解に疑義を投げかけるものであると同時に, 有権者における政党支持の 「揺らぎ」 を示唆するものでもある。
著者
善教 将大 坂本 治也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.74-89, 2013

本稿の目的は,日本維新の会への支持態度の特徴ならびにその背景にある有権者の論理を明らかにすることである。先行研究では,維新あるいは橋下への支持は,有権者の政治的・社会的疎外意識に基づく熱狂的なものであることが述べられてきた。これに対して本稿では有権者が抱く橋下イメージの違いという観点から,維新が支持される理由を説明する。実証分析の結果,明らかとなったのは次の3点である。第1に維新は多くの有権者に支持されているが,その支持強度は弱い。第2に政治的・社会的疎外意識等と維新支持に関連があるとはいえない。第3に橋下をリーダーシップの高い人物だと認識する人は維新を弱く支持し,保守的な人物だと認識する人は強く支持する傾向にある。つまり維新への支持が弱い理由は,彼のリーダーシップへの評価が弱い支持にしか結びつかないという点に求められる,というのが本稿の結論である。
著者
善教 将大 坂本 治也
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.96-107, 2017-11-30 (Released:2019-06-08)
参考文献数
35
被引用文献数
3

本稿の目的は,何が寄付行動を促進する要因なのかを,全国の有権者を対象とするサーベイ実験を通じて明らかにすることである。先行研究は寄付行動の規定要因に関する重要な知見を蓄積してきたが,他方でデモグラフィーなど個人的特性との関連性への傾斜や推定結果に存在する内生性や欠落変数バイアスへの対処が不十分といった問題を抱える。さらにこれらの問題を解決可能な実験的手法に基づく既往研究にも,代表性の低いデータを用いている点など課題が山積している。本稿では,これら先行研究の問題を解決可能な実験的手法を用いて,寄付行動の規定要因を分析する。具体的には,全国の有権者を対象とする無作為化要因実験(randomized factorial survey experiment; RFSE)によって,寄付の有無と寄付金額に何が影響を与えるのかを明らかにする。実験の結果明らかになった知見は次の2点である。第1に寄付を募る際,他者の1人あたりの寄付金額表示額が少なく,寄付金を管理運営費にあてる割合が小さく,物的・金銭的インセンティブを付加した返礼をしない方が,寄付確率が高くなる。第2に寄付を募る主体がNPO法人以外であり,寄付金を管理運営費にあてる割合が小さく,控除対象にできる方が,寄付金額が高くなる。これら本稿の知見は,先行研究に疑義を呈しうるものであると同時に,実際の政策展開にもいかすことが可能なものである。
著者
善教 将大 坂本 治也
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.96-107, 2017

<p>本稿の目的は,何が寄付行動を促進する要因なのかを,全国の有権者を対象とするサーベイ実験を通じて明らかにすることである。先行研究は寄付行動の規定要因に関する重要な知見を蓄積してきたが,他方でデモグラフィーなど個人的特性との関連性への傾斜や推定結果に存在する内生性や欠落変数バイアスへの対処が不十分といった問題を抱える。さらにこれらの問題を解決可能な実験的手法に基づく既往研究にも,代表性の低いデータを用いている点など課題が山積している。本稿では,これら先行研究の問題を解決可能な実験的手法を用いて,寄付行動の規定要因を分析する。具体的には,全国の有権者を対象とする無作為化要因実験(randomized factorial survey experiment; RFSE)によって,寄付の有無と寄付金額に何が影響を与えるのかを明らかにする。実験の結果明らかになった知見は次の2点である。第1に寄付を募る際,他者の1人あたりの寄付金額表示額が少なく,寄付金を管理運営費にあてる割合が小さく,物的・金銭的インセンティブを付加した返礼をしない方が,寄付確率が高くなる。第2に寄付を募る主体がNPO法人以外であり,寄付金を管理運営費にあてる割合が小さく,控除対象にできる方が,寄付金額が高くなる。これら本稿の知見は,先行研究に疑義を呈しうるものであると同時に,実際の政策展開にもいかすことが可能なものである。</p>
著者
善教 将大
出版者
公共選択学会
雑誌
公共選択 (ISSN:21872953)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.76, pp.105-124, 2021 (Released:2023-03-29)
参考文献数
28

This paper examines the effect of Osaka citizens’ preference for the integration of Osaka city and prefecture government on their support for Hirofumi Yoshimura, a governor of Osaka prefecture. Many scholars point out that TV media have a strong influence on citizen attitudes, and Yoshimura’s high approval ratings are caused by the media effect. However, this paper argues that Osaka citizens’ preference for the integration of Osaka city and prefecture governments directly and indirectly result in Yoshimura’s consistent popularity. First, this preference indirectly affects the approval of Yoshimura via partisanship in local politics. Second, this preference also directly affects the approval for Yoshimura, because of the strategy of Osaka-Ishin-no-Kai, which aims to solve the problem of dual administration in Osaka. The results of the empirical analyses show that Yoshimura’s high approval ratings stem not only from perceptions of his political leadership abilities, but also from public support for the integration of Osaka city and prefecture governments.
著者
善教 将大
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_163-2_184, 2016

<p>本稿の目的は, 政党支持の規定性, 具体的には長期的党派性の投票行動に対する影響を検証することである。政党支持の規定性は, これまで多くの研究者が議論してきた安定性とは対照的に, ほとんどその妥当性に関する検証作業が行われていない。本稿では実験的手法を用いて, 行動意欲とは異なる長期的党派性は, 政党ラベルや候補者要因が投票行動に与える効果をどの程度条件付けるのかを分析することで, 政党支持の規定性の検証を試みる。大阪市および近畿圏在住の有権者を対象とするサーベイ実験の結果, 長期的党派性は政党ラベルの因果効果を常に高めるわけではないことが明らかとなった。この知見は, 政党支持は規定的であるという通説的見解に疑義を投げかけるものであると同時に, 有権者における政党支持の 「揺らぎ」 を示唆するものでもある。</p>
著者
善教 将大 宋 財泫
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、維新の会に対する有権者の意識や行動を、実証的に明らかにすることである。維新はなぜ、大阪において多くの有権者に支持されているのか。この問いに対して本研究は、政党ラベルとしての「維新ラベル」を、維新がうまく機能させたことが重要であることを明らかにした。では、そのような現状であったにもかかわらず、なぜ特別区設置住民投票で大阪市民は、都構想を否決したのか。この問いに対する解答として本研究が提示したのは有権者の批判的志向性の強さであり、これが住民投票で賛成への投票を「踏み止まらせた」ことを、本研究では明らかにした。