著者
秦 正樹
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.45-55, 2016 (Released:2019-12-01)
参考文献数
34

本稿は,18・19歳の新有権者における政治関心の形成メカニズムについて,サーベイ実験を通じて明らかにした。若者の政治行動に関する先行研究では,主として政治的社会化理論を背景に議論される。しかし先行研究では,初期社会化と後期社会化の効果を独立に検証するがゆえに,各社会化の相互の影響については明らかにされていない。そこで本稿では,初期社会化が含意する政治規範の伝播と,後期社会化における政治利益の追及に関するシナリオを用意し,それぞれの情報が,新有権者(若年層)と既存有権者(年長層)に与える影響を明らかにすべくサーベイ実験を行った。実験結果より,新有権者は政治規範にのみ,逆に既存有権者は政治利益にのみ反応して政治関心を高める傾向が示された。以上の分析結果より,新有権者は利害に関わらず,政治システムそのものの在り方に関心を向ける傾向にあることが示唆された。
著者
坂本 治也 秦 正樹 梶原 晶
出版者
関西大学法学研究所
雑誌
ノモス = Nomos (ISSN:09172599)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-20, 2019-06

本研究は、2017-18年度関西大学若手研究者育成経費において、研究課題「NPO・市民活動への参加意識の実証研究 : サーベイ実験による因果効果の検証 」として研究費を受け、その成果を公表するものである。
著者
坂本 治也 秦 正樹 梶原 晶
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2_303-2_327, 2020 (Released:2021-12-15)
参考文献数
38

1990年代末以降、日本では特定非営利活動法人 (NPO法人) や一般社団法人などの新たに創設された法人格を有する (広義の) NPOが多数誕生した。組織レベルでみた場合、NPOの活動は明らかに活性化している。にもかかわらず、一般の人々のNPOへの参加は依然としてまったく広まっていない。 なぜ多くの日本人はNPOへの参加を今なお忌避しているのであろうか。どのような要因が参加忌避を引き起こす原因となっているのであろうか。どうすればNPOへの参加をより増やしていくことができるのだろうか。 これらの点を探索的に解明するために、本稿では筆者らが独自に実施したオンライン・サーベイのデータを用いて、コンジョイント実験 (conjoint experiment) を通じてNPOへの参加の規定要因の解明を試みた。 分析の結果、デモなどの政府への抗議活動を行うこと、多額の寄付を集めること、自民党寄りないし立憲民主党寄りの組織であることは、参加忌避に大きな影響を与える要因であることが明らかとなった。つまり、NPOの 「政治性」 やNPOの 「金銭重視」 姿勢が参加忌避をもたらす主要な原因になっていることが本稿の分析から示唆される。
著者
善教 将大 秦 正樹
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1_159-1_180, 2017 (Released:2020-07-01)
参考文献数
35

本稿の目的は, 政治意識調査における 「わからない (「DK」)」 の発生メカニズムを, サーベイ実験により明らかにすることである。先行研究ではDKの規定要因として政治関心や政治知識の欠如が指摘されてきたが, 本稿は回答者に情報を与えることがかえってDK率の増加に繋がる場合もあるという仮説を提示し, この仮説の妥当性を実験的手法により検証する。全国の有権者を対象とするサーベイ実験の結果は次の3点にまとめられる。第1に政策のメリットやデメリットの情報の提示はDK率を有意に低下させる。第2に, しかし政党の政策位置に関する情報の提示はDK率の低下にほとんど寄与しない。第3に政党を拒否する層に対しては, 政党情報の提示は逆にDK率を有意に高める場合がある。これらの知見は, 日本では政党が意見表明の際の手がかりとしてはほとんど機能していないという, 有権者の中での 「政党の機能不全」 を示唆するものである。
著者
秦 正樹
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.1_166-1_188, 2022 (Released:2023-06-16)
参考文献数
38

本稿は、ドラマにおける架空の政治劇の偶発的な視聴が、実際の政治空間に対する不信感に対して、なぜ・どの程度投影されるのかについて、ドラマ「半沢直樹」(第2クール)をテーマとしたサーベイ実験を通じて検証した。従来、テレビが有する政治的効果に関する研究は、政治報道など「政治性がある」ことを前提としたコンテンツを中心に検討が進められてきた。しかしこのような研究では、選択的接触などの問題があって、テレビ→政治的態度の明確な因果効果の検証はなされてこなかった。そこで本稿では、極めて高い視聴率を誇る「半沢直樹」において偶然に接触した政治家像が、現実の政治的空間にも影響を与えうるとの仮説を立てて、その検証を行った。実験結果より、「半沢直樹」で描かれる「悪い政治家」への接触は、現実の政治世界における政治家への不信感をも喚起していること、ただし政治的無関心層では、逆に「半沢直樹」の視聴が政治家への信頼感を高める効果を有することが明らかになった。
著者
秦 正樹
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.45-55, 2016

本稿は,18・19歳の新有権者における政治関心の形成メカニズムについて,サーベイ実験を通じて明らかにした。若者の政治行動に関する先行研究では,主として政治的社会化理論を背景に議論される。しかし先行研究では,初期社会化と後期社会化の効果を独立に検証するがゆえに,各社会化の相互の影響については明らかにされていない。そこで本稿では,初期社会化が含意する政治規範の伝播と,後期社会化における政治利益の追及に関するシナリオを用意し,それぞれの情報が,新有権者(若年層)と既存有権者(年長層)に与える影響を明らかにすべくサーベイ実験を行った。実験結果より,新有権者は政治規範にのみ,逆に既存有権者は政治利益にのみ反応して政治関心を高める傾向が示された。以上の分析結果より,新有権者は利害に関わらず,政治システムそのものの在り方に関心を向ける傾向にあることが示唆された。
著者
秦 正樹
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.2_168-2_189, 2022 (Released:2023-12-15)
参考文献数
31

本稿は、軍事的脅威の高まりが、とくに日本の改憲世論に与える影響について、とりわけ2017年頃から発生した北朝鮮によるミサイル発射を事例にサーベイ実験を通じて検証した。先行研究では、軍事的脅威が高まると政府の支持が短期的に高まる「旗下集結効果」をめぐって理論的・実証的に様々な観点から検証されてきたが、軍事的脅威が個別具体的な争点態度に与える影響についてはさほど検討されてこなかった。そこで本稿では、緊急事態に際して政府から示されることとなった「Jアラート」を利用して、このような危機的メッセージを与える実験と、憲法改正に対する態度を測定するリスト実験を融合させることで、軍事的脅威と改憲態度の関連を明らかにした。また、ミサイル発射直後と、その半年後の二回に分けて同じ実験をすることで、その効果の安定性についても検討した。実験結果より、「どちらかといえば護憲」の態度を持つ人では、Jアラートの刺激を受けると改憲派に寝返る傾向にあることが明らかとなった。
著者
坂本 治也 秦 正樹 梶原 晶
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2_303-2_327, 2020

<p>1990年代末以降、日本では特定非営利活動法人 (NPO法人) や一般社団法人などの新たに創設された法人格を有する (広義の) NPOが多数誕生した。組織レベルでみた場合、NPOの活動は明らかに活性化している。にもかかわらず、一般の人々のNPOへの参加は依然としてまったく広まっていない。</p><p> なぜ多くの日本人はNPOへの参加を今なお忌避しているのであろうか。どのような要因が参加忌避を引き起こす原因となっているのであろうか。どうすればNPOへの参加をより増やしていくことができるのだろうか。</p><p> これらの点を探索的に解明するために、本稿では筆者らが独自に実施したオンライン・サーベイのデータを用いて、コンジョイント実験 (conjoint experiment) を通じてNPOへの参加の規定要因の解明を試みた。</p><p> 分析の結果、デモなどの政府への抗議活動を行うこと、多額の寄付を集めること、自民党寄りないし立憲民主党寄りの組織であることは、参加忌避に大きな影響を与える要因であることが明らかとなった。つまり、NPOの 「政治性」 やNPOの 「金銭重視」 姿勢が参加忌避をもたらす主要な原因になっていることが本稿の分析から示唆される。</p>