著者
小山 健一郎 稲永 俊介 安浦 寛人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.19, pp.53-56, 2007-03-04
被引用文献数
5

近年,価値を表すデジタルデータをICチップに保存するストアバリュー型電子マネー[11と呼ばれる電子マネーシステムが注目されている.これまでに提案された電子マネーシステムの安定性に関する手法は,ほとんどが暗号技術や耐タンパー技術といったセキュリティ技術に基づいている[3]・では,仮にこれらのセキュリティー技術が破られたとすると,電子マネーシステムは即座に破綻してしまうのだろうか.そこで,本稿では電子マネーシステムの「セキュリティ技術やプロトコルとは独立した」安定性について検証するそのために,まず貨幣の集合論的なモデルを構築し,そのモデルに金銭の流通操作を加えた貨幣システムモデルを提案する.さらに 貨幣システムモデルを電子マネーに適用し,紙幣型マネーシステムモデルと残高型マネーシステムモデルという2つの価値保存形式の異なる電子マネーシステムモデルを提案する.最後に,紙幣型システムと残高型システムにおける「偽価値量」の検知可能性について考察する.ここで 「偽価値量」とは電子マネーシステム内に正規に追加されたものではない価値量のことをいい,現金通貨での偽札や偽硬貨に相当するものである.本稿では,残高型における三者間の偽価値量の譲渡操作ののちに,この偽価値量が検知できなくなってしまうことを示した.Many attentions have recently been paid to the so-called value-storing type of electronic money. Since any money operating system requires extremely high stability, information security technologies such as Cryptography and tamper resistance have been developed for maintenance of the stability of the system. But, what happens if those securities are attacked and broken? In this paper, we study the stability of electronic money systems which is independent of the security technologies and the protocols used. In so doing, we firstly develop a set-theory-based model for general money systems, and extend it to a general money system model by adding to the set-theory-based model some operations for circulation of money. Then, we propose a model for electronic money systems modifying the above general money system model. In particular, two different types of electronic money system, a note-type money system model and a balance-type money system model, are proposed in this paper. Lastly, we study possibilities of detecting a "fake value" that has been circulated in the note-type and balance-type money system models. Here, a "fake value" applies to a value which was not issued by the originator (or issuer) of the system, and thus it corresponds to a counterfeit of cash currencies. As a key feature of this work, we show that a fake value becomes impossible to be detected after it is transferred between at least three users.
著者
松原 渉 稲永 俊介 篠原 歩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.443, pp.9-16, 2009-02-23

平衡直線的プログラム(Balanced Straight line program,BSLP)は単元集合を生成する文脈自由文法とみなすことができ,そこで生成される文字列の長さNは,変数の個数nに対して指数的に長くなりうる.そのため,BSLPによって圧縮表現された文字列に対してnの多項式時間で効率よく処理を行うには,陽に展開することなく処理を行うことが必要不可欠となる.本研究では,BSLPとして表現された文字列の非反復性判定をO(max(n^2,nlog^2N))時間,O(n^2)領域で解くアルゴリズムを示す.
著者
竹田 正幸 定兼 邦彦 坂本 比呂志 瀧本 英二 坂内 英夫 稲永 俊介 喜田 拓也 畑埜 晃平 井 智弘 中島 祐人 成澤 和志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

爆縮とは工学用語で,爆発の圧力が;外側ではなく内側へ集中する現象をいい,通常では得難い物理現象を発生させるために利用される.本研究では,膨れ上がるデータを爆発的に凝縮することにより,(i) データ量削減, (ii) データ処理の高速化,(iii) 知識獲得の三つを達成する基盤技術の確立を目指し,これを情報爆縮 (information implosion) と名付けた.情報爆縮基盤技術の確立のために,(A)高速データストリーム圧縮アルゴリズム,(B)圧縮データ上の高速データ処理アルゴリズム,(C)大規模データ解析アルゴリズムという3つの研究項目をおいて研究開発を行い多くの成果を得た.
著者
安浦 寛人 佐藤 寿倫 松永 裕介 井上 創造 池田 大輔 石田 浩二 馬場 謙介 吉村 正義 ウッディン モハマッド・メスバ 稲永 俊介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

社会に不可欠になっている「価値」や「信用」を搭載するLSIについて、ディペンダビリティの定義と評価尺度を提案し、その阻害要因の明確化と要因間の関係の解明を行った。また、LSIのディペンダビリティを向上させる対策を提案し、ディペンダブルLSIの設計フローを提示した。独自技術によるICカードを大学の学生証・職員証として発行し、設計から運用まで一貫してディペンダビリティの一万人規模の社会実験を行える環境を実現した。
著者
竹田 正幸 篠原 歩 坂内 英夫 瀧本 英二 坂本 比呂志 畑埜 晃平 稲永 俊介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,圧縮データ処理に基づいて軽量XMLデータベース管理システム(DBMS)のための基盤技術を確立することを目標とし,主として以下の成果を得た.(1) 高速で軽量なオンライン文法圧縮アルゴリズムの開発. (2) 圧縮データ上で動作するq-グラム頻度計算アルゴリズムの開発. (3) 高速XMLデータストリームフィルタリング技術の開発. この他,DBMSの備えるべき知的データ処理機能として,パターンの効率的な枚挙,分類,オンライン予測等に関する研究を行い,多くの成果を得ている.
著者
稲永 俊介 船本 崇 竹田 正幸 篠原 歩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.622, pp.29-36, 2004-01-22

文字列の文法に基づく圧縮とは,与えられたテキストを生成する文法を構築することによってデータのサイズを縮小する圧縮法である.この中で長さ優先置換法とは,テキスト中の部分文字列のうち,重複なく複数回現れている最長のものを生成規則として別の一文字に置換していくものである.本論文では,文字列に対する索引構造の一つである接尾辞木に対して極めて技巧的な構造の更新を行うことにより,この長さ優先置換を線形時間で行うアルゴリズムを提案する.
著者
成澤 和志 稲永 俊介 坂内 英夫 竹田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.24, pp.63-70, 2007-04-19
被引用文献数
1

本論文では,Blumerらによって提案された同値関係による同値類を計算する問題を考える.Blumerらはコンパクト有向無閉路文字列グラフ(CDAWG)と呼ばれる索引構造を定義するために同値類を利用した.同値類は本質的に等しく出現する冗長な部分文字列を集めた集合であるため,テキスト解析において有用である.本論文では,接尾辞配列を用いて同値類を計算するアルゴリズムを提案する.提案アルゴリズムでは,接尾辞木および接尾辞リンク木の巡回を模倣するため接尾辞配列の他に2つの補助配列を使用するが,これら以外のデータ構造を必要としない.このアルゴリズムは入力文字列に対して,線形時間および線形領域で動作する.本論文では,提案アルゴリズムと接尾辞木およびコンパクト有向無閉路文字列を用いたアルゴリズムとの計算時間・計算領域を計算機実験によって比較する.