著者
堀江 俊治 田嶋 公人 松本 健次郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.8, pp.1003-1009, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
2

Capsaicin is a constituent of chili pepper, and induces the burning sensation on the tongue. The site of action for capsaicin has been discovered as transient receptor potential vanilloid receptor subtype 1 (TRPV1) that resides on the membranes of pain- and heat-sensing primary afferent nerves. The immunohistochemical study on the stomach revealed that nerve fibers expressing TRPV1 exist along gastric glands in the mucosa, around blood vessels in the submucosa, in the myenteric plexus, and in the smooth muscle layers. High numbers of TRPV1-immunoreactive axons were observed in the rectum and distal colon. Therefore, capsaicin stimulates TRPV1 not only on the tongue but also in the gut. In this review, the mechanism of gastrointestinal mucosal defense enhanced by capsaicin was summarized. TRPV1 plays a protective role in gastrointestinal mucosal defensive mechanism. Hypersensitivity of afferent fibers occurs during gastrointestinal inflammation. Abnormalities of primary afferent nerve fibers are strongly associated with the visceral hypersensitive state in inflammatory bowel disease (IBD). The alteration of TRPV1 channels in mucosa contributes to the visceral hypersensitivity in colitis model mice. TRPV1-expressing neurons in the gut are thought to be extrinsic sensory afferent neurons that operate to maintain gastrointestinal functions under physiological and inflammatory states.
著者
坂井 進一郎 PANG Peter K STOCKIGT Joa PONGLUX Dhav TONGROCH Pav 北島 満里子 堀江 俊治 高山 廣光 矢野 眞吾 渡辺 裕司 渡辺 和夫 相見 則郎 KTPANG Peter JOACHIM Stoc DHAVADEE Pon PAVICH Tongr JOACHIM Sto PETER KT Pa DHAVADEE Po PAVICH Tong PETER KT Pan 池上 文雄
出版者
千葉大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

アカネ科植物ミトラガイナ・スペシオ-サ(Mitragyna speciosa)葉部は、タイ国内では"Kratom"、マレーシア国内では"Biak Biak"と呼ばれる伝承民間薬であり、麻薬様作用:中枢神経抑制効果(阿片様作用)と中枢神経興奮効果(コカイン様作用)及び止瀉作用が知られていた。本植物に含まれる有効成分に焦点を当てて、日本、タイ、ドイツ、カナダの研究者がそれぞれの専門領域の研究分野で協力することにより、化学と薬理の両面からの究明研究を行なった。化学面では、タイ産植物葉部の詳細な成分検索を行ない、主塩基Mitragynineと共に新化合物を含む数種の微量塩基を単離構造決定した。更に、主塩基Mitragynineの集約的ルートによる不斉全合成法を開拓することができた。また、Mitragynineの菌代謝産物として報告されたプソイドインドキシル体やMitragynineオキシインドールも化学変換により合成し、これらの立体化学を明らかにすると共に、薬理活性評価用検体として供した。更に、マレーシア産Mitragyna speciosa葉部のアルカロイドについても化学的研究を行い、新規化合物の単離と共にピリドン型ミトラガイナアルカロイドの基本骨格合成を達成することができた。一方、薬理面での成果としては以下の点があげられる。主成分Mitragynineの中枢作用について検討を行い、Mitragynineに強力な鎮痛作用を見い出した。さらに末梢作用として、平滑筋収縮抑制作用を見い出した。輸精管標本を用いた検討から、末梢作用の作用機序としてMitragynineが神経の節後線維に作用し、神経伝達物質の放出を抑制することが考えられた。神経由来細胞を用い、パッチクランプ、蛍光色素法などを駆使して解析した結果、Mitragynineの神経伝達物質遊離抑制作用には神経のT型およびL型Caチャネル遮断作用が関与していると推定した。また、モルモット回腸標本に用いた検討から、Mitragynineはオピオイド作用も有していることが判明した。その効力はMorphineの1/6であった。Mitragynineの微生物代謝物Pseudoindoxyl体にもオピオイド作用が認められ、その効力はMorphineの約20倍強力であった。そこで、これらの化合物についてオピオイド受容体結合実験を行い、両アルカロイドは特にμ受容体に親和性が高いことを見い出した。これらのMitragynineの末梢作用はその鎮痛作用機序に関連していると考えられる。Mitragynineの構造に類似する釣藤鈎アルカロイドおよび母核のIndoloqunolitidine誘導体を用いて、オピオイド作用の構造活性相関的検討を行った。該結果、Mitragynineの9位メトキシル基が作用発現に必須であることが明らかとなった。また、そのメトキシル基と4位の窒素の位置関係が効力を左右していると推察した。また、Mitragynineの中枢作用に関する研究で以下の成果を得た。脳内5-HT2A受容体作動薬をマウスに投与すると"首振り行動"が発現する。本行動に対するMitragynineの影響を検討した結果、Mitragynineは用量依存的な抑制効果を示した。Mitragynineの抑制作用はNoradrenaline枯渇薬及び5-HT枯渇薬の影響を受けず,α2受容体拮抗薬で解除されたことから、Mitragynineがシナプス後膜α2受容体刺激作用または5-HT2A受容体遮断作用を有することが示唆された。Mitragynineをマウスに腹腔内あるいは脳室内投与(i.c.v.)すると顕著な鎮痛作用が認められた。i.c.v.投与したMitragynineの鎮痛作用はオピオイド拮抗薬Naloxone(i.c.v.),α2受容体拮抗薬および5-HT受容体拮抗薬(i.c.v.,orくも膜下腔内投与)で抑制された。従って1)Mitragynine自身が脳内で作用して鎮痛作用を発現しうること,および2)この鎮痛作用に上位オピオイド受容体及び下降性モノアミン神経系が関与することが推察された。この様に、ミトラガイナアルカロイドに種々の特異的かつ有効な薬理活性が見出された。これらアルカロイドは今後、医薬品の開発、薬理作用機序の観点から興味深い素材と考えられる。上記研究と平行して、タイ産Uncaria,Nauclea,Hunteria、及びVemonia属植物の化学的検索及び薬理学的評価も実施した。
著者
堀江 俊治
出版者
城西国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

申請者は「炎症性腸疾患モデル動物の結腸粘膜における知覚過敏性には、熱感を感受するTRPV1チャネル発現神経線維の数の増大が関与している」ことを明らかにした。当該研究では、機能性消化管疾患である過敏性腸症候群および非びらん性胃食道逆流症のモデル動物を作製し、その消化管組織において、TRPV1チャネルおよびTRPM8チャネル発現神経の数が増加しているか、その増加に関連して知覚過敏反応が亢進しているかどうかを明らかにしていく。さらに、その知覚過敏にマスト細胞や好酸球の関与を検討する。この研究成果によって、微細炎症を抑える薬物は機能性消化管疾患の知覚過敏を改善するという新たな治療法を提案できる。
著者
高山 廣光 堀江 俊治 渡辺 和夫 相見 則郎
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

タイ国・マレーシアでモルヒネ代用薬として用いられてきたアカネ科植物のMitragyna sepeciosa葉部に含有されるアルカロイドの詳細な検索を実施し、特に、マレーシア産植物からは数種の新規インドールアルカロイド類を単離し、それらの化学構造をスペクトル解析法と合成化学的手法により決定することができた。一方、主塩基であるMitragynineの薬効解析の結果、本化合物はオピオイド系を介した鎮痛作用を発現することを見いだした。この知見を受けて、Mitragynineをリード化合物として、30を越える各種誘導体を合成し、これらの薬理活性評価の結果を基に、詳細に構造活性相関の検討を行った。中でも、Mitragynineの酸化誘導体であるMitragynine pseudoindoxyl及び7-Hydroxymitragynineはモルヒネよりも高いオピオイド受容体親和性を示すことを見い出した。さらに現段階ではこれら鎮痛性インドールアルカロイドはモルヒネ同様オピオイドμ受容体に選択的に作用していることがわかった。これらの知見を受けて、生体内での活性が最も強い7-Hydroxymitragynineを用いオピオイド受容体結合モデルを提唱した。更に、マウスを用いたin vivoの鎮痛試験において7-Hydroxymitragynineは皮下、経口投与でモルヒネをはるかに凌ぐ活性が確認された。特に経口投与での差は顕著であり、その有用性が大いに期待できる。これらの研究成果から、コリナンテ骨格を有するミトラガイナ属アルカロイド誘導体がオピオイドレセプターのサブタイプ選択的作動薬創製のための先導化合物として高いポテンシャルを有していることが示唆された。