著者
佐々木 巌 赤柴 恒人 堀江 孝至
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.57-65, 1992-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者の両心機能を, 安静時, 運動負荷時に, RIアンジオグラフィーで検討した. COPD群16名, 対照群8名を対象に, Tc-99mで生体内赤血球標識し, マルチゲート法で記録した. 運動負荷は臥位エルゴメータによる多段階漸増法で, 心室容積測定は standard voxel count 法によった. その結果, COPD群では両心室とも収縮能障害の存在が示唆され, また, 右心カテーテルを施行した12症例において, 左心機能低下と高炭酸ガス血症との関連性が示唆された. 安静時の全肺血管抵抗指数および平均肺動脈圧と, RI法による安静時右室収縮末期容積指数との間に, 各々γ=0.769 (p<0.01), γ=0.631 (p<0.05) の正相関を認めた. 一方, 運動負荷時の一回拍出量は, 16例中10例で増加が見られず, その半数例で, 運動中の両心室拡張末期容積が減少しており, COPD群では肺過膨張などの機械的影響が, 心循環動態に悪影響を及ぼしている可能性が示唆された.
著者
須金 紀雄 辻野 一郎 山崎 哲男 高橋 典明 赤柴 恒人 澤田 海彦 堀江 孝至
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.307-313, 2003-08-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
18

目的. cyclosporin Aの溶媒として用いられているCremophor ELのetoposide (VP-16) の抗腫瘍効果増強についてヒト肺癌細胞株を用いて検討した. 方法. 細胞生存率の測定には, ヒト肺腺癌細胞株 (PC-14), ヒト類上皮癌細胞株 (KB), ヒト肺小細胞癌細胞株 (H69) に対してgrowth inhibition assayを行った. さらに, PC-14に対してはinvitro clonogenic assayも行った. 各細胞系における抗腫瘍剤の細胞内蓄積量の差を [3H] VP-16を用いて比較検討した. MDR1 (multidrug resistance) 遺伝子の発現に関するmRNAの測定には, 定量的PCR法を用いた. 結果. PC-14において, in vitro clonogenic assayでCremophorELの濃度が250μg/mlの条件下ではVP-16単剤に対して100倍以上の殺細胞効果増強が認められた. VP-16の細胞内蓄積量はPC-14, A549 (ヒト肺腺癌細胞株) において有意な増加が認められた. また, MDR遺伝子のmRNAの増幅はPC-14, A549において認められなかった. 結論. Cremophor ELは肺腺癌細胞におけるVP-16の殺細胞効果を増強し, これはVP-16の細胞内蓄積量の増加が原因と考えられた. そしてこの現象は, MDR遺伝子の発現に関連したものではないと考えられた.
著者
河村 雅明 竹内 仁 八田 善弘 相磯 きすみ 堀越 昶 大島 年照 堀江 孝至
出版者
The Japanese Society of Hematology
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.206-211, 1995-03-30
被引用文献数
2 1

症例は47歳の女性。貧血と末梢血へのリンパ芽球の出現を指摘され,1988年10月当科に入院した。ALL (L2)と診断され,JALSGのALL-87プロトコルが開始された。治療開始10日目に39.6°Cの発熱がみられ,緑膿菌による敗血症とそれに伴うエンドトキシンショックを合併したが,抗生剤の併用により軽快した。白血球の回復に伴い,胸部X線写真で左上肺野に浸潤影が出現し,陰影は急速に拡大するとともに,三日月状空気透亮像(air crescent)を伴う空洞形成を呈した。経気管支鏡的に起因菌の検索とAMPH-Bの注入を行ったところ,菌は証明されなかったが空洞は軽快した。完全寛解後,腰痛が出現し,腰椎X線写真で,腰椎椎体の壁不整および椎間腔の狭小化を認めた。腰椎椎弓切除術および病巣〓爬術を施行し,病巣部よりアスペルギルスの1コロニーが培養された。AMPH-Bの静脈内投与で腰痛は軽快し,その後の化学療法は支障なく行えた。AMPH-Bは本症例の治療に有用と考えられた。