- 著者
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増田 周子
- 出版者
- 関西大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2015-04-01
2017年度は①インパール作戦と火野葦平、②河童伝説と火野葦平文学について研究をすすめた。以下、今年度の研究状況について具体的に記す。①インパール作戦と火野葦平に関しては、2017年9月にルーマニア・ブカレストで開催された国際シンポジウムで、火野のインパール作戦『従軍手帖』の詳細と、作品『青春と泥濘』について基調講演を行った。その後討議をし、活発な意見交換をすることができた。この国際シンポジウムでは、ローマ大学在職の、戦争文学研究者とお会いすることができ、交流を深め、知見が広がった。大変よい機会を得たと考えられる。また、『火野葦平インパール作戦従軍記』(2017年、集英社)の「解説」「解題」「年譜」を担当し、火野のインパール作戦についての全貌を知ることができた。そのうえで、関西大学東西学術研究所で開催された研究例会で、インパール作戦時に、動員された現地の原住民を描いた「異民族」という作品と、火野のインパール作戦『従軍手帖』との関連や、作品のテーマに関する研究発表をおこなった。②河童伝説と火野葦平文学については、主に、北九州市門司区に言い伝えられた河童伝説である海御前伝説と火野文学との関係について研究をすすめた。平家方が壇ノ浦で入水自殺をはかった後、実在する平教経の妻は、北九州市門司区大積海岸に流れ着き、河童となって大積天疫神社に祀られ、海御前と呼ばれた。これが、海御前伝説である。火野はこの伝説をもとに、河童小説「白い旗」、「海御前」などを描いている。2017年度はこの二作について、詳細に研究を行った。大積天疫神社、大積海岸などを訪れ、海御前の碑を探索しフィールドワークをすることができた。以上、火野葦平の文学について、多様な観点で研究を推進でき充実していた。