著者
上澤 美鈴 加我 宏之 下村 泰彦 増田 昇
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.263-268, 2009

本研究では,小学校校庭の土運動場と芝生運動場におけるビデオ撮影調査を通じて,休み時間の児童の行動を捉え,校庭の芝生化が児童のあそびの種類や身体動作に与える影響を探った。結果,校庭の芝生化によって児童のあそびの種類が多様化し、あそびに含まれる身体動作も活性化していることが明らかとなった。特に,芝生運動場では,面積規模に関わらず,「あたる」や「押す・押さえる」などの児童同士が接触る動作や「座る」,「寝転ぶ」や「転ぶ・転がる」などの地面に接する動作が誘発されていることが明らかとなり,芝生の校庭は児童の身体能力の向上や健康に効果を発揮しているものと考えられる。
著者
渡邊 学 榎原 友樹 肱岡 靖明 大場 真 戸川 卓哉 エストケ ロナルド カネーロ 永井 克治
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.61-66, 2018

気候変動による影響を最小限に抑えるには,リスクを科学的に捉え,個々の要素に対して適切な対策を行うことが求められる。気候変動による影響のリスクを構成する主要な要素として外力・暴露とともに脆弱性があるとされる。外力・暴露については研究が進む一方,脆弱性については,その指標化や評価が困難であると捉えられてきた。本研究では,まず脆弱性の概念や脆弱性指標の特性について既往研究を基にレビューし整理を図った。その後,脆弱性指標を特定するスキームを開発し提案を行った。本スキームは適応策立案への貢献が期待できる。
著者
咸 光珉 孫 鏞勳 三谷 徹 章 俊華
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.393-398, 2012

本研究は韓国の宮殿「昌徳宮」庭園を対象とし,建物にかけられている扁額の意味を分析し,庭園空間の特徴を明らかにすることを目的とした。その結果,扁額の意味は周辺景観(自然物,自然現象,動・植物,季節的要素,眺望)と当時の思想(徳・仁・孝,天人合一,神仙)に関連しており,また扁額の分布によって政治的,思想的,修養的,複合的イメージが強い空間の4 タイプのエリアが得られた。以上より,扁額と共に庭園空間を理解することは,韓国伝統庭園の奥深さを更に深め,空間の特徴をより明確にさせることがわかった。
著者
楊 若琛 劉 書昊 趙 建曄 武田 史朗 章 俊華
出版者
Center for Environmental Information Science
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
pp.150-155, 2022-11-30 (Released:2022-12-05)
参考文献数
14

本研究では、世界遺産の首里城を例として、Web スクレイピングによる日本語、中国語及び英語の旅行口コミを収集し、テキストマイニングを通して、国内外の観光客の首里城に対する認識、観光動機と着目点を明らかにした。その結果、観光客は日中文化を表す首里城に高い満足度を持っていることが分かった。しかし、数年間続けている修復工事による国内観光客は消極的な気持ちを抱いていた。日本人が首里城のスポットをよく知っており、観光方法の選択、観光時期と認識も多様であった。中華圏の人は建築物の配置や文物などに興味を持ち、観光インフラの整備状況を重視していた。英語圏の人は主観的な感想もったり、高い場所から景色を見たりする傾向が強い。
著者
金 柔美 田中 勝也 松岡 俊二
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.189-194, 2012

本研究では国際環境レジームの有効性を分析するために,長距離越境大気汚染条約(LRTAP)の 4 議定書(ヘルシンキ,ソフィア,オスロ,ジュネーブ議定書)を事例とした定量的な評価をおこなった。 分析では1979 年のジュネーブ条約に参加した50 ヵ国を対象とし,手法にはdifference-in-differences (DID)モデルに傾向スコアマッチングを組み合わせた最新のインパクト評価モデルを用いた。分析の結果,ソフィア議定書では批准による環境質の改善が有意に認められたが,その他の3 議定書については有効性が確認されなかった。これらから,レジームの有効性を評価するには各国の異質性や汚染物質の特性,汚染物質の削減以外への効果などについて考察することが必要であると考えられる。
著者
皮 玲 中根 周歩
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.219-224, 2012

屋上を竹炭埋設した軽量・薄層土壌システムで、最上階(8 階)のべランダを同じく鉢で緑化し、温度、熱流を、またベランダに面する部屋の室温を非緑化階(4 階)とも、通年測定した。 緑化した屋上土壌中ではほぼ熱の流出入が遮断され、温度の日変化は僅かであった。緑化したベランダでは夏季の日中の温度上昇を最高8℃、冬季の夜間の冷却を3~4℃抑制した。その結果、部屋の温度は夏季日中で2~3℃、冬季の夜間は2℃緩和された。春と秋季は緑化がベランダや部屋の日中温度の上昇を抑制した。電力消費量を、エアコン使用の少ない5 月を基準として、両階の各月の比率をもとに、その較差を求めたところ、緑化による節電は年間量で約15%となった。
著者
左近 高志 遠藤 祥多
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.257-262, 2009

本研究は,日産スタジアムで行われているリユースカップ制度の環境教育に対する効果の有無,及びその効果の程度を探ることを目的としたものである。そのために,日産スタジアム近隣の小・中学校各一校,計900名以上の児童・生徒を対象にアンケート調査を行った。その結果、リユースカップを10回利用すれば,男子の場合は約5%,女子の場合は約17%,男女差を考慮しない場合では約6%環境配慮行動をとる確率が高くなる傾向があることが分かった。
著者
平田 富士男
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.35, 2002

ガーデニングの普及とともに淡路島のように自然に恵まれた地域でも、外国から輸入された園芸種が多用されるようになってきた。真に自然と共生する社会を実現していくためには、何でもいいから花や緑を植栽すればいいのではなく、その地域に自生する植物の有効利用を考える視点が重要である。そこで島民へのアンケートを通じて、自生植物等の利用に関する意識を調査したところ、園芸種の多用は、その植物の好き嫌いやコストの問題ではなく、むしろ増殖しやすいかどうか、が大きな理由であることがわかった。また、自生植物に関する認識も高く、特に、ユリ、スイセンの利用に対する意識が高いことがわかった。これらの自生種は今後園芸利用の対象として有望だが、住民が容易に育成、増殖できるような技術開発が重要であることも把握された。
著者
久保田 泉
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.243-246, 2013

気候変動影響への適応策に関する国際制度設計において,途上国への資金供与問題が注目されている。本研究では,適応関連資金配分の優先順位づけをいかに行うかについての示唆を得るため,京都議定書下の適応基金と「気候変動影響への対応力強化のためのパイロット・プログラム」(PPCR)の運用状況を,対象国/プロジェクトの選定に着目して比較検討した。その結果,適応基金の被支援プロジェクトのホスト国は,脆弱国への支援が謳われているにもかかわらず,各種指標で脆弱国リストの上位に入っていない国が多いことがわかった。今後の適応関連資金メカニズムには,脆弱性に着目したPPCR 類似の資金配分方法を確保することが重要である。
著者
上條 哲也
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.303-308, 2014

環境アセスメント報告書の質に対する住民協議段階の回数,代替案数と評価項目数の有効性を分析した。報告書の質はリー・コリー一括評価手法を用いて評価した。分析の結果,評価項目数が多くなると質の改善が認められた。考察の結果,良い質の報告書を作成する上で,住民協議段階の回数は2,代替案数は5,評価項目数は9 以上が妥当であることが示唆された。最後に,住民協議を行い幅広い影響を対象とした代替案検討の有効性を指摘した。
著者
上條 哲也
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.295-300, 2013

環境アセスメントの代替案検討手法として、主成分分析の有効性の検証を進めることが課題であった。5事例研究を対象に、階層分析法(AHP)と加重総和法及び主成分分析の総合評価結果を比較した。その結果、代替案と評価基準及び評点が適正に設定されれば、AHP や加重総和法と主成分分析結果が一致し、最適案選定理由の明瞭さ、恣意性の低さ、比較検討結果の検証、手法の簡易さの点で主成分分析の有効性が示唆された。最後に、主成分分析の特徴は、代替案の得失をわかりやすく説明できることであり、利害関係者の参加を通じてより良い意思決定が期待されることを指摘した。
著者
久保 暁子 山本 清龍 中村 和彦 下村 彰男
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.33, pp.181-186, 2019

<p>本研究では,ストレス軽減のためデジタル機器から一定期間離れる取り組みであるデジタルデトックスの基盤的な研究を企図して,①回答者の属性とデジタル機器の使用状況,デジタル機器の依存性を把握し,それらの関係性を明らかにすること,②平日・休日の過ごし方,デジタルデトックスへの意向を把握し,デジタルデトックスの可能性を考察すること,の2点を目的とした。その結果,約半数の学生がデジタル機器を4時間以上使用し,一部の学生は機器の使用によって学生生活に問題を抱えていた。学生の意向をふまえれば,日常の機器使用制限や自然豊かな場所への外出はデジタルデトックスに有効と考えられた。</p>
著者
大出 亜矢子 土光 智子 陳 文波
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.339-344, 2015

<tt>本研究はインドネシアスラウェシ島山岳地トラジャ地域農村において実施した生業項目に関する半構造型インタビュー調査とそのネットワーク分析から</tt>,<tt>過去</tt>40 <tt>年間の生業構造変化について分析する。各時期における生業項目の地域内の位置づけについてネットワーク中心性指標によって算出し</tt>,<tt>それぞれの時系列変化をとらえた。固有ベクトル中心性指標の時系列変化過程の</tt>t<tt>検定の結果から</tt>, 1979-1980, 1999-2000, 2009-2010<tt>の</tt>3<tt>時期に有意な変化が検出され</tt>,<tt>近年の多生業化傾向が示された。トレンド変化点との重複から道路や水利造成等の土地改変との関係性が示された。</tt>
著者
吉田 有里 上甫木 昭春 田原 直樹 澤木 昌典
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.31, 2002

本研究は、道路拡幅や区画整理などにより寺社や民家の敷地内から道路上にはみ出して位置することになった路傍樹についてその現状を把握し、継承のあり方を考察することを目的とした。調査対象木は大阪市内に現存する23本とし、現地調査とヒアリング調査により路傍樹の現状を把握すると共に、3箇所の路傍樹を選定して、周辺住民に対するアンケート調査を行った。その結果、路傍樹に対する認知度は高く、好評価を得ており保全意識も高いが、管理への参加意向が低いことが問題であることが明らかとなった。また、対象木をよく知っている人ほど保全意識、管理への参加意向が高く、路傍樹に対する認知度を高めることが重要であると考えられた。
著者
吉留 大樹 石井 靖彦 小野田 弘士
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.34, pp.252-257, 2020

<p><tt>国内の戸建住宅における省エネ基準は,設計時の外皮性能および一次エネルギー消費量のみで評価されるため,施工技術や断熱施工精度による影響の実態が明らかになっていない。そこで,本研究ではあるモデルハウスにおける温湿度・HEMS データの実測評価および標準住宅モデルにおける熱収支シミュレーションの分析により,施工技術や断熱施工精度の影響を定量的に評価した。その結果,現行基準やトップランナーの住宅では施工技術や断熱施工精度の影響が大きく,除霜期においてはその熱損失が6 割以上を占めることが示された。</tt></p>
著者
谷川 智穂 中塚 雅也
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.34, pp.127-132, 2020

<p>日本の農山村地域においては,人口流出などによる高齢化や担い手不足による地域経済力の低下や空き家の増加などの問題が顕著に生じている。一方で田園回帰と言われるように,若者を中心とした農山村地域への関心の高まりが指摘され,過疎と呼ばれる地域への移住や起業の動きも少なからず発生している。本研究では,移住者による起業の立地条件を,周辺人口および交通アクセス性の面から分析し,一般的に起業に有利でない場所でも起業が発生していることを明らかにし,そういった場所における起業促進の可能性を指摘した。 </p>
著者
山田 浩之 河崎 昇司 矢沢 正士
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.495-500, 2004

本研究は、水生生物の多様度・現存量および水質に着目して、アイガモ農法が採用されている水田の現状を把握し、さらに、慣行農法が採用されている水田との比較によって、アイガモ農法が水田の生物相や水質に及ぼす影響について検討した。その結果、水質に関しては、アイガモの移動に伴う水田土壌の巻上げや攪拌による懸濁物質やリンの増加、糞尿によるアンモニア態窒素の増加とその硝化による硝酸態窒素の増加が生じるという特徴があった。いっぽう、生物相に関しては、アイガモ農法水田で生物相の種数および固体数が低下する傾向があり、水田生態系を構成する生物相の多様度や現存量の低下が懸念された。
著者
小田 僚子 橋北 太樹 菅原 広史 清野 直子 稲垣 厚至
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.37-42, 2016

<p><tt>首都圏では局地的大雨が多発し都市水害が深刻化しており,その発生場所や時間,降雨の規模などを予測し災害を最小限にすることが望まれている。本研究では,東京湾周辺の沿岸部</tt>4 <tt>地点に屋外ネットワークカメラを設置し,都心および東京湾上の大気場を常時観測するシステムを構築した。ステレオ観測により,都心で発生した積乱雲の成長初期段階から発生場所と発達高度を定量的に評価できることを示した。また,夏季における雲の流れ場から,雲の存在高度が</tt>2 <tt>層となっている状況は約</tt>35<tt>%あった。下層の雲の動きは衛星画像から捉えることは困難である一方,降雨の発生には下層の大気の流れを把握することが重要であることを指摘した。</tt></p>
著者
和田 有朗 品川 崇
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.179-184, 2018

食品ロスに関する個人の内的要因と食材を捨てない行動との関連を調査した。また,食品ロス対策の評価シートを用いて,消費者の意識に変化が生じるのかを調査した。その結果,食材を捨てない行動と無駄にしない調理技術の間には,やや強い関連が認められた。評価シート実施後に変化した意識項目の結果からは,まずは家庭でできる食品ロス削減案の提案と一人一人が容易に取り組めそうな行動から行っていくことが必要だと考えられる。