著者
栗田 剛 大場 正昭
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.2-2, 2008

本研究では,大気の安定度と地表面の熱的条件を系統的に制御できる温度成層風洞を用いて,都市接地境界層の熱的乱流特性を把握する目的で,大気不安定時の接地境界層流れにおいて乱流フラックスや平均風速・平均温度の鉛直プロフィルを測定し,実測データと比較検討したので報告する。実験から次の知見が得られた。(1)水平方向熱フラックスuθと鉛直方向熱フラックスwθは正負が逆の波形を示した。(2)温度変動のパワースペクトル密度はu成分とほぼ同じ分布を示し,温度変動はu成分の変動に大きく影響された。(3)平均風速と平均温度の鉛直分布を、大気安定度を考慮したDyerらの普遍関数を用いて対数近似し、運動量粗度長と熱粗度長を算出した。(4)Case3とCase4の熱粗度長と運動量粗度長の比KB-1はBrutseartの実験回帰式に近い数値を示した(5)運動量フラックスと熱フラックスから乱流相関係数比を算出し、Z/Zδ>0.3で熱の運動量に対する相対的な輸送効率が高いことが示唆された。
著者
森上 伸也 大場 正昭
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集 第23回 風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
pp.85, 2014 (Released:2015-03-10)

伝統的に、日本の住宅では自然通風が夏季および中間期における室内環境の改善に有効な手段であると考えられてきた。前報では、通風環境における人体の皮膚温と発汗蒸発特性を把握するために、通風型人工気候室を用いて、気流の変動周波数を変えて被験者実験を行い、正弦波形で変動する気流の変動周波数が皮膚温と発汗量特性および人体熱損失量に与える影響について検討した。 本報では、前報と同様に正弦波形で変動する気流環境における被験者実験を行い、変動する気流が人体の皮膚温と耳内温度および発汗の変動特性に与える影響について検討した。実験結果から、人体の皮膚温、耳内温度および発汗量と風速の変動周波数との間に相関性があることがわかった。
著者
大場 正昭
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

2年間にわたる科学研究費助成を受けて、カメラの較正、風洞実験による通風模型の換気回数測定、及び実物建屋での換気回数測定を実施し,ビデオ画像を用いた画像輝度値減衰法による新しい室内換気回数の測定法を開発した。実験、実測を通じて得られた主な結果は次のとおりである。(1)放送用ビデオカメラでは、ペデスタルを調整することにより画像信号と視感反射率の間に良い線形性を形成できた。また、画像信号値は対象面照度に比例し、レンズの絞りに反比例した。ガンマー係数は0.57〜0.74であった。8mmビデオカメラはペデスタル機能を有しなかったので、低い視感反射率で画像信号値と視感反射率との線形性が低下した。ガンマー係数は0.69〜1.25であった。(2)実験使用したトレーサーの粒径は、スモークミスト、発煙筒煙、オンジナミストの順に大きくなり、発煙筒煙の粉塵平均粒径は0.5μm〜0.6μmで、平均粒径の経時変化は小さかった。(3)風洞実験の照明用レーザシート光は、レーザビーム光に比べて多重散乱による光量の再生寄与が大きく、画像信号の光路減衰は小さかった。2次元通風模型では、光の散乱減衰が換気回数の測定精度に及ぼす影響は小さかった。トレーサとしてオンジナミストを用いた場合、画像信号最大値はレーザ光出力のべき乗に比例し、0.5Watt以上のレーザ光出力が得られれば、換気回数の測定精度に及ぼすレーザ光出力の影響は小さかった。軒高風速2.5m/s以下の範囲内で、画像輝度値減衰法の測定精度をガス濃度減衰法と比較した。その結果、画像輝度値減衰法はガス濃度減衰法と比べて誤差9%の測定精度で換気回数を測定できた。(4)実物建屋での測定では、多換気時において放送用ビデオカメラのペデスタルレベルを調整し、可視化トレーサーとして白色発煙筒を用いた場合、デジタル粉塵計の換気回数値と比べて、ビデオ画像計測は測定誤差12%の精度を得た。少換気時においては、カメラの絞りを調整して多重散乱の影響を制御した。その結果、照度6001x、ペデスタルレベル5.75、絞り2.4において、ビデオ画像計測は測定誤差7%の精度を得た。可視化トレーサーとしてスモークミストを用いた場合、信号レベルは白色発煙筒における画像信号値に比べてやや小さくなったが、SF6のガス濃度減衰法と比較して誤差6%で換気回数を測定できた。8mビデオカメラは、多換気時において、絞り2.4、照度6001x、焦点距離3.3mの条件で、粉塵濃度減衰法とほぼ同じ精度で換気回数を測定できた。以上のことから提案した画像輝度値減衰法の有効性を確認できた。
著者
安中 哲夫 大場 正昭 飯野 秋成 飯野 由香利 下地 恒英 小寺 定典
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.49, pp.225-228, 2006-07-09

本研究では、通風、空調風および扇風機風下における2人の被験者の温熱環境評価の特性を明らかにするとともに、新標準有効温度SET^*を通風などの非定常な環境下で使用するための修正指針を示すことを目的とする。温熱環境評価を検討した結果、以下の知見を得た。1)通風時における各温熱環境評価の変化範囲は広く変化回数も多いのに対して、空調風と扇風機風の場合には、評価尺度の変化範囲はほぼ変わらず変化回数も1回以下である。2)平均風速が各温熱環境評価に及ぼす影響は大きく、空調風時の温冷感は通風よりも涼しい側の評価を示す。平均風速0.5m/s未満と以上で快適感と気流感が大きく異なり、風速が速いほど快適側や気流を感じる側評価になる。空調風と扇風機風の風向が変動する場合には、不快側評価や気流を感じない側評価を示す傾向がある。3)平均風速が0.5m/s以上の通風における気流環境でのSET^*は修正する必要性があることや、SET^*が温冷感や快適感の変化と良く対応していないことを明らかにした。
著者
大場 正昭 倉渕 隆 飯野 秋成 後藤 伴延 飯野 由香利
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、ウインド・クオリティに基づいて適度な室内温熱環境を形成実現するために、平成18年度と19年度に風洞実験、実測及びマクロモデル解析を行い、以下の研究成果を得た。1.通風局所相似モデルと換気マクロモデルの連成プログラムの開発:換気回路網計算の換気マクロモデルにおいて、流入開口及び流出開口に通風局所相似モデルを適用した連成プログラムを開発した。流量係数を一定としたオリフィスモデルに比べて通風量の予測精度が向上した。2.自然通風の気流特性の解析:通風は不規則に変動し風速も比較的速く、0.1Hz以下の低周波成分や低波数の割合が多い気流であった。一方、空調風は通風と比較して規則的で低風速であり、0.1Hz以上の周波数領域におけるパワースペクトルの割合が多いことから比較的小さい渦が多い気流である。風向が変動すると、規則性が顕著になりエアコンのスイングの周期に相当する0.01〜0.1Hzの周波数領域のパワースペクトルの割合が卓越して多くなった。3.通風時の温熱環境評価の特性:風速0.5m/s未満の通風時における温冷感や快適感は、空調時よりやや暑い側や不快側に評価され、気流感も空調時より感じない側の評価になっており、空調時の乾湿感には多少乾燥側の評価が見られた。風速0.5m/s以上の通風時では空調時よりも快適側に評価された。4.熱赤外動画像処理による通風時の人体表面熱収支の可視化:通風環境下および空調環境下におけるサーマルマネキンと被験者の部位別の表面温度変動の特徴を熱赤外動画像解析により示した。特に赤外線放射カメラによる30Hz熱赤外動画像と超音波風速計による20Hzの気流変動との関係を解析する方法を提示した。
著者
大場 正昭 伊藤 一秀 小林 信行 倉渕 隆 菊池 世欧啓 菊地 世欧啓
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、様々な風向時における建物内外の乱流構造について風洞実験と数値シミュレーションにより検討し、局所相似モデルを提案し検証するとともに、開口部到達全圧の推定方法を提案した。得られた知見は次のとおりである。(1)アプローチフローが建物開口部に正対する条件では、建物前面下部に形成される循環流と開口部直上面を下降する気流との相互作用により、下向きの運動量輸送が開口部直前で増大し、流入気流が開口部を急激に下降しながら室内に流入した。開口部の圧力損失係数は流入角と風向角に依存した。(2)建物内外の乱流構造の把握を自的とした風向正面の場合の通風気流に関する乱流モデルの予測精度検証を行った。LKモデル,LK改モデルは、標準k-εモデルでは困難である建物前面下部の大きな循環と流入気流の下降をある程度再現し,流入乱流エネルギーの過大評価を緩和できた。LESモデルは通風量,風速ベクトル,乱流エネルギー,風圧係数等の統計量に関して風洞実験結果とよく対応し,k-εモデルに対し大きな改善が見られた。(3)開口部の流管形状解析から、開口部付近の短い区間での加減速の影響により,この区間の流管形状に大きな変化が生じていることが明らかになった。(4)様々な風向における通風時の乱流構造の把握において,風向角変化に伴う圧力変化について考察し,風向45゜まで全圧が概ね一定,以後低下する原因は風上コーナーでの気流の剥離に伴う乱流エネルギー生産でことが判った。(5)通風の局所相似性の仮定に基づく通風量予測モデルを提案し,妨害気流の横風成分が強い通風気流に対して.局所相似モデルは風向角に依らず一意的に開口部の流入特性を表現できることを示した。(6)壁面近傍の動圧測定値を風圧に加算して、開口部到達全圧を簡便に推定する方法を提案した。今回のケースでは開口部長辺の1/4程度壁面から離れた地点の動圧を用いることが適当であり,全圧の簡易測定結果は直接測定結果とよく対応した。
著者
大場 正昭
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

今年度は、多孔性構造を利用したゲスト分子および機能性分子ユニット間の相互作用と電子状態の制御を目的として、多孔性錯体材料{Fe(pz)[Pt(CN)_4]G}(1;pz=pyrazine,G=guest molecule)を基軸化合物として研究を推進した。昨年度までに、化合物1をヨウ素蒸気に曝すと、ヨウ素がPt(II)に酸化的に付加したヨウ素付加体が得られ、ヨウ素含有量によりスピン転移温度を300-400Kの間で連続的に変化させることに成功した。今年度は、機能性分子ユニットであるピラー配位子pzの運動とスピン状態の相関を検討した。中性子準弾性散乱および固体^2H NMRスペクトルより、10^<-13>-10^<-3>sのタイムスケールでpzの回転運動の温度変化を追跡した結果、pzは高スピン状態の細孔中で4-fold jump motionをしているが、低スピン状態になると骨格構造とpz間の立体反発により、その回転速度が3桁以上遅くなることを確認した。このpzの回転による回転エントロピーがゲスト吸着によるスピン状態変換に寄与することも、理論的に説明された。また、Fe(II)をCo(II)に変えた類縁体{Co(pz)[Pt(CN)_4]G}では、Co(II)周りの対称性変化に伴って光吸収が変化し、特にアルコール類に対して特異的な応答が観測された。さらに、ピラー配位子をCholest-5-en-3-yl-4-pyridinecarboxylateに変えて疎水場を導入した化合物では、ハロゲン化アルキルに対して特異的に応答することを見出した。機能性分子ユニットを合理的に集積して相互作用空間を作り上げることで、ゲスト分子によるスピン状態の変換に成功し、詳細な構造解析と理論計算からその機構を解明した。これらの結果を基に、機能性分子ユニットを変換することで、より特異的なゲスト応答性の発現にも成功した。
著者
飯野 秋成 大場 正昭 飯野 由香利 安中 哲夫 下地 恒英 小寺 定典
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.49, pp.221-224, 2006-07-09

2005年の夏季に実験棟内で2人の被験者に、通風(平均風速0.5m/s未満と以上)、空調風(風向一定と変動)および扇風機風(風向一定と変動)の気流下において、温冷感、快適感および気流感に関して評価してもらった。本研究の目的は、これらの気流下における温熱環境評価の特性を明らかにすることである。本報では、これらの気流性状の特性について検討し、以下の知見を得た。1)通風は不規則に変動し風速も比較的速く、低周波成分が多く大きな渦が多い。2)空調風は規則的で低風速であり、高周波成分が多く、比較的小さい渦が多い。3)扇風機風は0.1〜1Hz周波数領域のパワースペクトルを最も多く含む気流で、3種類の気流の中で最も小さい渦を多く含む。風向が変動すると、エアコンや扇風機のスイングの周期に相当する周波数領域のパワースペクトルの割合が卓越する。
著者
畑田 豊彦 高梨 隆雄 石川 和夫 吉田 広行 大場 正昭 木下 照弘 近藤 邦雄 鈴木 英佐
出版者
東京工芸大学
雑誌
東京工芸大学工学部紀要 (ISSN:03876055)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.63-73, 1992-01-31

The great development of computers and their rconnected terminals is producing the development of image technology and also the easy operation by networks for users. Given assistance of the special fiscal 1988 and 1989 budgets in the Faculty of Engineering, Tokyo Institute of Polytechnics, this project started in cooperation with the laboratories interested in the application of the image information. In order to fulfill graphic functions and image processor simultaneously by one system, which will be the most powerful research tool in the near future, IRIS 4D/50GT graphic computer and NEXUS image processor were purchased and connected with VME BUS so that a part of the multi-functional system was completed. As several analysis about the information of the three-dimensional image were conducted using the system, the abstract is reported.
著者
臼杵 直樹 大場 正昭 大川 尚士
出版者
九州大学理学部極低温実験室
雑誌
九州大学極低温実験室だより (ISSN:13460161)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2-7, 2001-06

シアン橋架け二元金属化合物[Ni(dimen)_2]_2[Fe(CN)_6](BPDS)_{0.5}・4H_2O (1)(dmen=1,1-dimethylethylendiamin; BPDS=4,4'-biphenyldisulfonate ion)は一次元鎖状構造で低温においてメタ磁性を示す。脱水処理で得られる[Ni(dmen)_2][Fe(CN)_6](BPDS)_0.5 (1a)は二次元シート構造を持ち、T_c=10.7 K 以下で強磁性を示した。1aは空気中で吸湿して2水和物[Ni(dmen)_2]_2[Fe(CN)_6](BPDS)_{0.5}・2H_2O(1b)を与え、これは1と同様にメタ磁性を示した。1aと1bは吸湿/脱水処理で相互変換され、これに伴って強磁性とメタ磁性を可逆的に変換できる。A cyanide-bridged bimetallic compound [Ni(dmen)_2]_2[Fe(CN)_6](BPDS)_{0.5}・4H_2O (1)(dmen=1,1-dimethylethylenediamine; BPDS=4,4'-biphenyldisulfonate ion)has a 1-D structure extended by Fe-CN-Ni linkages and shows metamagnetic nature at low temperature. Dehydration of 1 affords anhydrous [Ni(dmen)_2]_2[Fe(CN)_6](BPDS)_{0.5} (1a) that has a 2-D sheet structure and shows ferromagnetic ordering below T_c = 10.7 K . On hydration of 1a in open air, the dihydrate [Ni(dmen)_2]_2[Fe(CN)_6](BPDS)_{0.5}・2H_2O (1b) is obtained that shows metamagnetic nature like 1. 1a and 1b can be interconverted by hydration and dehydration with reversible change in magnetic nature between ferromagnetism and metamagnetism.