著者
鈴木 美保 五十嵐 彰 大沼 克彦 門脇 誠二 国武 貞克 砂田 佳弘 西秋 良宏 御堂島 正 山田 哲 吉田 政行
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.471-484, 2002-12-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
36

本論では,剥片の製作痕跡から石器製作時に使用されたハンマー素材を推定する方法を,実験考古学的手法によって考察した.硬質の石,軟質の石,鹿角,木の4素材のハンマーを用いて,実験的に製作した剥片痕跡の諸属性を検討した結果,ハンマー素材の差は剥片の剥離開始部分の属性に特徴的に現れることが判明した.そして,それらの諸属性を組み合わせることで,各素材と相関性の高い5類型に区分をすることができた.また,各素材と剥離対象物である黒曜石のビッカース硬さ測定した結果,その類型区分はハンマー素材と剥離対象物とのビッカース硬さの関係に相関していることも明らかになった.さらに,南関東地方の後期旧石器時代の2遺跡出土の剥片群に対してハンマーの推定を試みたところ,いずれも軟質の石によって製作されたものである可能性が高いことがわかった.
著者
大沼 克彦 久米 正吾 濱田 英作 岡田 保良 宮田 佳樹 川又 正智 佐藤 宏之 早川 裕弌
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

4年にわたるキルギス現地調査と国内関連研究は、キルギスにおける紀元前12000年から1500年(中石器時代から後期青銅器時代)にかけた遊牧社会形成の実体の解明に向けて大きく前進した。発掘をおこなったすべての遺跡において、中石器層から青銅器時代層のあいだには1万年ほどの空白があり、連続性がないことは、中央アジアの遊牧社会の形成に関する、西方からの遊牧民移住、在地農牧民の専従遊牧民化という2つのシナリオのうちの前者がより妥当であることを提起する重要な成果である。今後は調査・研究をキルギス周辺地域に拡大し、中央アジア全体という巨視的観点で遊牧社会形成の経緯と地理的多様性を探求していく。
著者
西秋 良宏 門脇 誠二 加藤 博文 佐野 勝宏 小野 昭 大沼 克彦 松本 直子
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

主として二つの成果があった。一つは、最新の考古学的知見を収集・整理して新人がアフリカを出てユーラシアに拡散した年代や経緯、そしてネアンデルタール人と置き換わっていった過程をできるかぎり詳細に跡づけたことである。もう一つの成果は、脳機能の違いに基づく学習能力差が両者の交替劇につながったのではないかという「学習仮説」を考古学的観点から検証したことである。従来、強調されてきた生得的な能力差だけでなく、歴史的に形成された社会環境の違いが、学習行動ひいては適応能力に大きく作用していた可能性を指摘した。