著者
鈴木 美保 五十嵐 彰 大沼 克彦 門脇 誠二 国武 貞克 砂田 佳弘 西秋 良宏 御堂島 正 山田 哲 吉田 政行
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.471-484, 2002-12-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
36

本論では,剥片の製作痕跡から石器製作時に使用されたハンマー素材を推定する方法を,実験考古学的手法によって考察した.硬質の石,軟質の石,鹿角,木の4素材のハンマーを用いて,実験的に製作した剥片痕跡の諸属性を検討した結果,ハンマー素材の差は剥片の剥離開始部分の属性に特徴的に現れることが判明した.そして,それらの諸属性を組み合わせることで,各素材と相関性の高い5類型に区分をすることができた.また,各素材と剥離対象物である黒曜石のビッカース硬さ測定した結果,その類型区分はハンマー素材と剥離対象物とのビッカース硬さの関係に相関していることも明らかになった.さらに,南関東地方の後期旧石器時代の2遺跡出土の剥片群に対してハンマーの推定を試みたところ,いずれも軟質の石によって製作されたものである可能性が高いことがわかった.
著者
赤司 千恵 門脇 誠二 キリエフ ファルハド 西秋 良宏
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.59-70, 2020 (Released:2022-07-11)

ヨモギ属(Artemisia spp.)は民族誌において非常に重要なハーブであり,消化器系や呼吸器系の疾患,婦人病,感染症などに広く使われ,その薬効成分は成分分析でも確認されている。しかし,過去の社会にとってのヨモギ属の重要性を示す証拠は,これまで非常に限られていた。西アジアの出土植物データベースでも,ヨモギ属が人為的に採集されていたことを示す事例は1 例のみである。しかし例外的に南コーカサスでは,ヨモギ属の炭化種実が多数出土する遺跡が,狭い地域のなかに集中している。中石器(前7 千年紀)から新石器時代(前6 千年紀)にかけての3 遺跡で,その一つであるギョイテペ遺跡での検出状況は,ヨモギ属が防虫/抗菌剤として用いられたことを示した。ヨモギ属の殺虫・防虫効果は科学的にも証明されており,民族誌でも防虫剤として使われる。遺跡全体から高い頻度で出土することから,ヨモギ属は防虫剤としてだけでなく日常的にさまざまな用途に使われていたと思われる。ヨモギ属の多用は,先史時代のアゼルバイジャン西部の地域性を示す文化要素の一つと言える。
著者
佐藤 純子 SATO Junko 西川 輝昭 NISHIKAWA Teruaki 西田 佐知子 NISHIDA Sachiko 門脇 誠二 KADOWAKI Seiji
出版者
名古屋大学博物館
雑誌
名古屋大学博物館報告 (ISSN:13468286)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.169-184, 2010-12-25

Chīmā (Chinese paper charm) and Chīchen (Hell bank note) are pictures engraved on woods and printed on simple plain papers. Most of them are made to wish the people’s good fortune, and they act as an important mediator between Chinese gods and the people in folklore belief. This review presents a list of the Chinese paper charm and the hell bank note collections, which consist of 590 specimens donated mainly by Mr. Hiroshi Asami and Mr. Saburo Ito to the Nagoya University Museum since 2004.
著者
門脇 誠二 西秋 良宏 キリエフ ファルハド マハール リサ ポルティヨ マルタ
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

西アジア北端のコーカサス地方における農業発生のプロセスを明らかにするために、アゼルバイジャン共和国の初期農村遺跡(ギョイテペとハッジ・エラムハンル、約7,500-8,000年前)を発掘調査し、この地域に世界最古の農業が普及したタイミングやプロセスについて研究を行った。具体的には、穀物管理に関わる道具(穀物の収穫・加工具)や貯蔵庫の発達過程を調べると共に、初期家畜ヤギの骨からDNAを増幅し、系統解析を行った。その結果、南コーカサスへの農業普及は約8,000年前に急速に始まり、農業先進地であるメソポタミア(肥沃な三日月地帯)の北部から穀物管理具の影響や家畜ヤギの運搬が生じていた可能性を指摘した。
著者
西秋 良宏 門脇 誠二 加藤 博文 佐野 勝宏 小野 昭 大沼 克彦 松本 直子
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

主として二つの成果があった。一つは、最新の考古学的知見を収集・整理して新人がアフリカを出てユーラシアに拡散した年代や経緯、そしてネアンデルタール人と置き換わっていった過程をできるかぎり詳細に跡づけたことである。もう一つの成果は、脳機能の違いに基づく学習能力差が両者の交替劇につながったのではないかという「学習仮説」を考古学的観点から検証したことである。従来、強調されてきた生得的な能力差だけでなく、歴史的に形成された社会環境の違いが、学習行動ひいては適応能力に大きく作用していた可能性を指摘した。