- 著者
-
大場 博幸
安形 輝
池内 淳
大谷 康晴
- 出版者
- 日本図書館情報学会
- 雑誌
- 日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.2, pp.83-100, 2016 (Released:2016-11-11)
- 参考文献数
- 23
公立図書館における中立・公平な所蔵について検討した。2014 年から2015 年にかけて日本国内で論議された「集団的自衛権」を主題とする91 点の書籍の所蔵について調べた。書籍を賛否に従ってグループ分けしたところ,需要においては賛成本が勝っていたが,否定本のほうが4倍弱多く所蔵されていた。一点当たりの所蔵数においては否定本が1.2 倍程度有利に所蔵されていた。所蔵に影響する他の要因も含めて重回帰分析をしたところ,出版社の信用(特に岩波書店刊行書籍),需要,書籍の質などの要因とともに,否定本であることも有意な要因であった。続いて,賛否の所蔵数の比を基準に図書館設置自治体をグループ化し,所蔵規模別に検討した。結果,所蔵規模が大きくなるほど中立的となり,小さくなれば賛否どちらかに偏ること,特に否定本に偏るケースが多いことが明らかになった。否定本のみ所蔵する自治体は全体の1/4 強存在した。