著者
有田 博之 山本 真由美 友正 達美 大黒 俊哉
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.225, pp.381-388, 2003-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

今日のわが国における農地政策は, 短期的には農産物の構造的過剰を抱えながらも, 長期的な食料需給の不安定性に対応しなければならないという基本的困難がある.これに対する解決策として, 筆者等は農地をいつでも利用可能な状態で粗放的管理する方法を提案している.日論では農地の利用可能性を耕作放棄田の復田という視点から経済的に評価するため, 放棄年数と復田コストの変化の関係を事例調査に基づいてモデル化した.調査は, 積雪地帯である新潟県東頸城郡大島村で行った, この結果, 数年間放置した後に復田するより, 耕作放棄後初期, すなわち毎年の軽微な作業によって農地を維持管理し続ける方が, 経済的に効果的であることを明らかにすると共に, これに基づく農地資源の保全策を提案した.
著者
服部 紘依 木村 圭一 Undarmaa Jamsran 大黒 俊哉
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.157-160, 2023-08-31 (Released:2023-10-12)
参考文献数
19

草原の劣化が進む乾燥地では,播種による緑化効率を高めるための種子コーティング技術の開発が進められているが,その適用には対象地の環境や用途に合わせた手法の適正化が必要である。本研究では北東アジアの荒廃草原における緑化候補植物として注目されているイネ科一年草Chloris virgata Swartz を想定した種子コーティング手法の開発を試みた。結合剤としてヒドロキシエチルセルロースを,充填剤として珪藻土を用いたコーティング手法を検討し,凝集種子数が3種子以上,粒径2.0~4.0 mmのペレットを安定的に作成する作業手順の妥当性を確認した。また,活性炭や尿素等の混合が発芽・伸長の増加に効果的であることを示した。
著者
中澤 菜穂子 神山 千穂 齊藤 修 大黒 俊哉 武内 和彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.II_141-II_150, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
43
被引用文献数
3 4

天然のキノコ・山菜は特用林産物として古くから利用され,その採取活動は様々な生態系サービスと関係している.これらの林産物は市場を介さない自家消費が多く,これまで定量的な価値評価はあまり行われてこなかった.本研究は,石川県七尾市の釶打地区を対象地に聞き取り調査を実施し,採取活動の実態を定量的に明らかにすることで,それらの経済的,文化的価値の評価を試みた.市場価格から金銭換算した結果,天然のキノコ・山菜による供給サービスは比較的高い経済的価値を有していることがわかった.また,文化的サービスの観点からは,採取活動は,その贈答や食文化の継承を通して,地区内外の交流を深めるという社会的意義を担っていること,採取行動と加工処理の過程においても,経験や技術に裏付けられた文化的な価値を有することが示された.
著者
山内 彩加 土屋 一彬 大黒 俊哉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.338-342, 2016-03-04 (Released:2022-06-08)
参考文献数
9

都市部のムクドリの集団ねぐらは、糞害や騒音などの多様な社会問題を起こしており、これまでの追い払いなどの一時的・局所的な対策ではその解決に到っていない。本研究は、東京都区部のムクドリの集団塒と周辺土地利用の関係を明らかにすることで、長期的・広域的な対策のための生態学的な観点からの基礎的知見を得ることを目的とした。その結果、集団ねぐらは2ha以上の大規模緑地から200m-300m程度の範囲に存在し、実際に就塒前にそうした大規模緑地を利用していることが明らかになった。また、集団ねぐらは、開放的な場所の木立か、駅前など高層建築物に囲まれた場所のいずれかに存在する傾向がみられた。
著者
大黒 俊哉 松尾 和人 根本 正之
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.245-256, 1996-04-25
被引用文献数
34

Successional patterns of vegetation on abandoned paddy fields and their levee slopes were analyzed in mountainous regions of central Japan. The samples were classified into two types, the Miscanthus sinensis type and Phragmites australis type, at the first division level of TWINSPAN, based on the dominant species regardless of location or fallow duration. The M. sinensis type occurred at dry sites on convex slopes and the P. australis type at wet sites on concave slopes. M. sinensis and P. australis have dominated paddy field stands for 20 years. Both the clump size and litter accumulation of M. sinensis increased with fallow duration, and this litter effect would be one of the important factors related to the long-term dominance of M. sinensis. During 20 years of fallow in the M. sinensis type, however, woody species invaded the gaps among the M. sinensis clumps. As individuals of M. sinensis become clumped and form heterogeneous spatial patterns including gaps, seeds dispersed from the levee slope vegetation and surrounding forests and /or buried seeds may establish themselves. On levee slopes, most stands were of the M. sinensis type, and dominated by woody species except in those that had lain fallow for three years. These results suggest that the succession of abandoned paddy fields in the surveyed regions is affected by soil moisture conditions related to micro-landform, litter accumulation, the growth form of dominant species and the levee slope vegetation as a seed source.
著者
松尾 和人 川島 茂人 杜 明遠 斎藤 修 松井 正春 大津 和久 大黒 俊哉 松村 雄 三田村 強
出版者
農業環境技術研究所
雑誌
農業環境技術研究所報告 (ISSN:09119450)
巻号頁・発行日
no.21, pp.41-73, 2002-03 (Released:2011-12-19)

Bt遺伝子組換えトウモロコシンは,1995年に米国で初めて商業用に登録された。その後,このBt遺伝子組換えトウモロコシは標的害虫であるアワノメイガなどに対して抵抗性を有するために,防除経費の削減,収量の増加,品質の向上など生産面での有利性があるために,米国を中心に年を追って作付け面積が拡大した。一方,わが国では遺伝子組換え作物の加工用および栽培用の種子輸入に当たって,食品としての安全性は厚生労働省が,飼料としての安全性および環境への安全性は農林水産省の確認が必要である。農林水産省による環境に対する安全性の確認は,隔離圃場において組換え作物の栽培・繁殖特性,越冬可能性,雑草化の可能性,近縁種との交雑可能性等について調査した結果に基づいて行われている。ところで,1999年に米国コーネル大学のLoseyら(1999)が,Bt遺伝子組換えトウモロコシの花粉が非標的昆虫のオオカバマダラの幼虫に悪影響をもたらす可能性があるという報告を行い,新しい環境影響として世界中に衝撃を与えた。しかし,彼らの報告は,幼虫に与えた花粉量や野外における葉上の花粉堆積の実態等について触れていなかったために,環境影響の有無や程度は不明であり,今後解明すべき課題として残された。日本においても,そのような観点から遺伝子組換え作物の環境影響評価を行う必要があるため,緊急にBt遺伝子組換えトウモロコシの環境影響評価に関する調査研究に取り組むこととなった。本研究では,Bt遺伝子組換えトウモロコシの花粉の飛散によるチョウなど鱗翅目昆虫に及ぼす影響を知るために,1)トウモロコシ圃場から飛散する花粉の実態調査とトウモロコシ圃場からの距離ごとの落下花粉密度の推定,2)幼虫が摂食して影響を受けるBt花粉の密度,3)Bt花粉中のBtトキシン含有量,4)環境変化に対して脆弱であると考えられる鱗翅目昆虫の希少種について,栽培圃場周辺に生息する可能性,Bt遺伝子組換えトウモロコシの開花時期と幼虫生育期との重なり,採餌行動など,総合的な知見に基づいてリスク評価を行い,同時に,花粉飛散に伴う生態系への影響評価のための各種手法を開発した。