著者
曽我 昌史 山野井 貴浩 土屋 一彬 赤坂 宗光
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

急速な都市化や生活様式の変化に伴い、我々が自然と接する頻度は減少の一途を辿っている。こうした現代社会に蔓延する「自然離れ」は「経験の絶滅」と呼ばれ、保全生態学や公衆衛生など複数の学術分野で重要な問題として認識されつつある。本研究では、経験の絶滅の実態(発生・伝播プロセスや人と環境保全に与える負の影響)を全国規模で把握するとともに、将来求められる緩和策を提案することを目標とする。
著者
山内 彩加 土屋 一彬 大黒 俊哉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.338-342, 2016-03-04 (Released:2022-06-08)
参考文献数
9

都市部のムクドリの集団ねぐらは、糞害や騒音などの多様な社会問題を起こしており、これまでの追い払いなどの一時的・局所的な対策ではその解決に到っていない。本研究は、東京都区部のムクドリの集団塒と周辺土地利用の関係を明らかにすることで、長期的・広域的な対策のための生態学的な観点からの基礎的知見を得ることを目的とした。その結果、集団ねぐらは2ha以上の大規模緑地から200m-300m程度の範囲に存在し、実際に就塒前にそうした大規模緑地を利用していることが明らかになった。また、集団ねぐらは、開放的な場所の木立か、駅前など高層建築物に囲まれた場所のいずれかに存在する傾向がみられた。
著者
土屋 一彬 斎藤 昌幸 弘中 豊
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.179-192, 2013-07-30 (Released:2017-04-28)
参考文献数
150

都市生態学は、人間活動が優占する都市生態系のふるまいの解明にとりくむ研究分野である。近年、国際的に進行している都市人口の増加と、それにともなうさまざまな環境問題の拡大を背景に、都市生態学への注目が高まっている。とくに都市生態学には、生物相保全や生態系サービス向上へ向けたとりくみの科学的基盤となることが期待されている。本稿では、日本国内における研究者のさらなる都市生態学への参入と議論の深化のきっかけとなることを企図し、国際的な都市生態学研究の進展状況と今後の主要な研究課題について、主に1)都市において環境問題の解決に生態学が果たす意義、2)都市に特徴的な生態学的パターンとプロセスおよび3)社会経済的要因の影響の3点から論述した。都市において環境問題の解決に生態学が果たす意義を取り扱った研究は、生物相保全を通じた環境教育への貢献や、都市生態系が提供する生態系サービスのうちの調整サービスおよび文化サービス、そして負の生態系サービスの評価を多くとりあげていた。都市生態系の特徴の解明にとりくんだ研究についてみると、都市から農村にかけての環境傾度に沿った種群ごとの個体数の変化や、都市に適応しやすい生物とそうではない生物の比較といった、生態学的なパターンについての知見が多くみられた。一方で、そうした生態学的なパターンをもたらすプロセスについては、十分に研究が進んでいなかった。都市生態系を規定する社会経済的要因を取り扱った研究については、社会経済的要因も含めた都市生態系の概念的なモデルの追求や、生態系の状態に影響が強い社会経済的要因の特定にとりくんだ研究が多くみられた。他方で、生態系の状態と管理などの具体的な人間の行為との関係や、その背後にある制度などの間接的な社会経済的要因との関係については、十分に明らかにされていない状況であった。今後の都市生態学には、都市生態系の構成要素や社会経済要素が相互にどう関係しているか、すなわち都市における社会生態プロセスに対して、さらに理解を深めていくことが求められよう。その実現のためには、生態学者が中心となった都市の生態学的プロセスの解明や、社会科学者と協働することによる分野横断的な研究アプローチの開発が鍵となろう。
著者
土屋 一彬
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、生物多様性保全と生態系サービス維持向上のための課題である私有緑地の管理放棄問題の解決に向けて、社会的な観点から(1)緑地管理をとりまく多様な主体の間での地域生態知識の共有・継承プロセスの解明、そして経済的な観点から(2) 緑地管理のためのPESの実効性評価の2つの具体的課題に取り組んだ。その結果、(1)保全活動年数の増加は参加者の知識や経験を増加させる一方で、保全団体活動の継続性に対する問題も同時に発生していること、(2) PESを活用した管理促進策は、財源が確保されるだけでは十分ではなく、管理継続のための主体間の間での連携体制構築が重要になることが示された。
著者
土屋 一彬 斎藤 昌幸 弘中 豊
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.179-192, 2013-07-30

都市生態学は、人間活動が優占する都市生態系のふるまいの解明にとりくむ研究分野である。近年、国際的に進行している都市人口の増加と、それにともなうさまざまな環境問題の拡大を背景に、都市生態学への注目が高まっている。とくに都市生態学には、生物相保全や生態系サービス向上へ向けたとりくみの科学的基盤となることが期待されている。本稿では、日本国内における研究者のさらなる都市生態学への参入と議論の深化のきっかけとなることを企図し、国際的な都市生態学研究の進展状況と今後の主要な研究課題について、主に1)都市において環境問題の解決に生態学が果たす意義、2)都市に特徴的な生態学的パターンとプロセスおよび3)社会経済的要因の影響の3点から論述した。都市において環境問題の解決に生態学が果たす意義を取り扱った研究は、生物相保全を通じた環境教育への貢献や、都市生態系が提供する生態系サービスのうちの調整サービスおよび文化サービス、そして負の生態系サービスの評価を多くとりあげていた。都市生態系の特徴の解明にとりくんだ研究についてみると、都市から農村にかけての環境傾度に沿った種群ごとの個体数の変化や、都市に適応しやすい生物とそうではない生物の比較といった、生態学的なパターンについての知見が多くみられた。一方で、そうした生態学的なパターンをもたらすプロセスについては、十分に研究が進んでいなかった。都市生態系を規定する社会経済的要因を取り扱った研究については、社会経済的要因も含めた都市生態系の概念的なモデルの追求や、生態系の状態に影響が強い社会経済的要因の特定にとりくんだ研究が多くみられた。他方で、生態系の状態と管理などの具体的な人間の行為との関係や、その背後にある制度などの間接的な社会経済的要因との関係については、十分に明らかにされていない状況であった。今後の都市生態学には、都市生態系の構成要素や社会経済要素が相互にどう関係しているか、すなわち都市における社会生態プロセスに対して、さらに理解を深めていくことが求められよう。その実現のためには、生態学者が中心となった都市の生態学的プロセスの解明や、社会科学者と協働することによる分野横断的な研究アプローチの開発が鍵となろう。