著者
奥 健太郎
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_120-2_143, 2016 (Released:2019-12-10)
参考文献数
9

近年, 筆者は自民党政権の政策決定手続きの特徴とされる 「事前審査制」 の通説を修正する説, すなわち事前審査制が自民党結党直後の1955年から始まったとする見解を発表した。このことを前提とすると, 自民党政務調査会は, 結党直後から事前審査の中心機関として, 与党内部ならびに政府与党間を調整する役割を果たしていたと考えられる。そこで本稿は, 1956年の健康保険法改正問題を事例として, 当時の政調会が果たした役割を分析した。 結論としては, 結党直後の政調会が平時であれば政策調整機関として, 政府与党間, 与党内部で政策を具体的に調整する機能を持っていたこと, その一方で事態が政局化すると政調会の果たす役割は限定的であったことが明らかになった。
著者
奥 健太郎
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.2_156-2_180, 2012 (Released:2016-02-24)

How do politicians achieve the profit of interest groups? This research is a case study analyzing the political process during which the Medical Diet Members (representatives who spoke for the interest of doctors) have succeeded in emasculating the law that provided the separation of medical practice and drug dispensation. The three viewpoints of the analysis are the following:   First, how did Kato Ryogoro (Liberal Party), who was the mediator of the Medical Diet Members, bring the Liberal party measures closer to the JMA? Secondly, what kinds of pressures or adjustments were observed between the JMA and the Medical Diet Members during the process of the emasculation of the law? Thirdly, how did the Medical Diet Members managed to form a majority including non - partisans in order to emasculate the law?
著者
奥 健太郎
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.226-259,267, 2006 (Released:2010-04-30)

The Green Breeze Society (Ryokuhukai), formed by the Councilors without affiliation to any particular political party, was the largest faction in the House of Councilors at the time of its establishment. However, it gradually declined to the point at which, after a second election, the majority of Councilors had affiliated with political parties. The existing literature regarding this gradual change focuses on the process of the demise of the Green Breeze Society. This paper, in contrast, pays particular attention to the Liberal Party's (Jiyuto) role in promoting affiliation by the Councilors with the Party. Specifically, this paper sheds light on a vote-gathering base and discusses why the Liberal Party won the second election in a nation-wide constituency.This paper concludes by identifying the following two reasons of the Liberal Party's advance. First, the Liberal Party was able to recruit candidates from among those who had national support bases, such as senior bureaucrats and CEOs, and to mobilize broad supporter bases. Second, the Party enabled its prefectural branches to support their local candidates and translated such local support to an election result at the national level.
著者
奥 健太郎
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.67-82, 2010 (Released:2017-03-31)
被引用文献数
1

参議院全国区選挙は,利益団体が代表者を送り込むべく競争した場であったことは広く知られている。この全国区選挙ではいくつかの利益団体が脱落していくが,本稿で取り上げる日本遺族会は議席を確保し続けることができた。本稿では遺族会が勝ち残った理由,とりわけ戦没者遺族が年々減少する中で,なぜそれが可能だったのかを考察した。 遺族会が勝ち残ることができた最大の要因は,遺族会が公務扶助料受給者の期待を集め,それに応えたからである。特に1960年代以降,戦没者の妻が遺族会の集票のために熱心に活動した。妻には遺児を育てあげる責任があり,子育てが終わった後は物価上昇の中で高齢化し,生活に不安を抱えていたためである。第二は遺族会が,戦没者の兄弟や子も取り込んだことである。彼らに年金の受給権はなかったが,慰霊活動やそれにかかわる 「利益」が,遺族会と彼らを結び付けたのである。
著者
奥 健太郎
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究 (ISSN:21890552)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-22, 2020 (Released:2020-03-25)
参考文献数
48

近年の日本では、日本の自民党政権では政策決定が内閣と与党に「二元化」されているのに対し、イギリスでは内閣に「一元化」されているとの見方が広く受容されている。本稿はこのような典型的なイギリス理解に修正を加えることを目的としたものである。そのために本稿が光を当てるのがイギリスの二大政党に設置された党内委員会である。本稿は第一に党内委員会が設置された歴史的経緯を検証し、第二に保守党と労働党の党内委員会の影響力に差が生じた要因を考察した。第三に保守党の農業委員会を事例として、党内委員会の影響力とその機能を明らかにした。本稿は、以上のイギリス政治の検証を通じ、イギリスの政策決定が内閣に「一元化」されていると表現することは、ミスリーディングであることを指摘した。また保守党と労働党の党内委員会の比較からは、日本の自民党政権における事前審査制の形成に、首相(党首)の持つ資源の少なさが影響していることが示唆された。
著者
奥 健太郎 河野 康子 武田 知己 黒澤 良 矢野 信幸 相原 耕作 村井 哲也 岡崎 加奈子
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は自民党政権の意思決定システムの形成過程に関する共同研究である。研究成果の特に重要なものとしては、事前審査制の歴史的考察がある。従来、自民党政権の事前審査制は1962年の赤城書簡を嚆矢とし、それ以後次第に慣習化されたと考えられてきた。しかしながら、我々の共同研究の結果、以下の点が明らかになった。第一にその淵源は桂園時代に遡ることができ、戦時体制下ですら与党審査が重要な意味を持っていたこと、第二に、事前審査制は自民党結党直後から今日に近い形で始まり、赤城書簡によって事前審査制が完成したことである。
著者
奥 健太郎
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.33-46, 2018 (Released:2021-07-16)

1955年自民党政権は事前審査制という新しいルールを導入した。自民党はいつ頃,どのようにして,この新しいルールに適応したのだろうか。本稿は『衆議院公報』の会議情報を数量的に分析することにより,その適応の時期が1959年であったことを明らかにした。このことは1959年から閣法の事前審査が円滑に進むようになったことから裏づけられた。また事前審査を円滑にした要素として,第一に政調会が1958年の「政策先議」以来,予算編成過程に深く関与するようになったこと,第二に1950年代後半,政調会の部会が増員されるとともに,周辺会議体や下位会議体が大量増設され,政調会の政策決定への参加の機会が拡大されたことを指摘した。
著者
奥 健太郎
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-22, 2020

<p>近年の日本では、日本の自民党政権では政策決定が内閣と与党に「二元化」されているのに対し、イギリスでは内閣に「一元化」されているとの見方が広く受容されている。本稿はこのような典型的なイギリス理解に修正を加えることを目的としたものである。</p><p>そのために本稿が光を当てるのがイギリスの二大政党に設置された党内委員会である。本稿は第一に党内委員会が設置された歴史的経緯を検証し、第二に保守党と労働党の党内委員会の影響力に差が生じた要因を考察した。第三に保守党の農業委員会を事例として、党内委員会の影響力とその機能を明らかにした。本稿は、以上のイギリス政治の検証を通じ、イギリスの政策決定が内閣に「一元化」されていると表現することは、ミスリーディングであることを指摘した。また保守党と労働党の党内委員会の比較からは、日本の自民党政権における事前審査制の形成に、首相(党首)の持つ資源の少なさが影響していることが示唆された。</p>
著者
奥 健太郎
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.47-81, 2014-01

一 はじめに二 自由党時代の政府提出法案と政調会三 自民党結党と事前審査のルール化四 自民党結党直後の事前審査 : 一九五六~一九五八年五 事前審査制の定着と赤城書簡 : 一九五九~一九六六年六 おわりに論説